■座談会前半(前回)の記事はこちら⇒男子中の先生が本音をぶつけ合う座談会~男子中をつなぐ特集・第1弾
男子校ならではの情操教育・性教育
思春期・反抗期の真っ只中となる中高6年間を「男子だけの環境」で過ごすことを心配されるお母さまに耳よりな各校の情操教育・性教育について、熱い議論が交わされました。
日大豊山 田中先生:
この1、2年、保護者の皆さまからジェンダー(性差)に対するとらえ方について質問をいただくことがあります。女子校ではキャリア教育などを通じて、ジェンダー観を育むことがかねてより行われてきたと思いますが、男子校での育み方はまた違っているのかとも思います。身近な異性を頼ることを意識せずに、そのままの成長を遂げることは、生涯にわたる共学人生の中では決して良いものではありません。女子校・男子校に共通して言えるのは、一定の期間は“異性に頼らず”すべてを自らが行うことにより、日頃欠如している異性への畏敬への気持ちを表すきっかけになると思います。例えば、お母さまに「ありがとう」の言葉を言えたり、素直に感情を伝えるといった日常の行動につながっていきます。私たち教員は、異性がいない環境でも数多くの行事を通じて自立した活動をさせることをジェンダー教育の一環と捉えており、男子校でも人間性を成長させる貴重な機会はたくさんあるはずです。
芝 池之上先生:
女子校との協働でジェンダーについてオンライン上で学ぶ機会があり、本校の生徒たちが30名ほど参加するのですが、ジェンダーを超えた新しい形の性教育につながると期待しています。実際に女子校のほうがこういった授業は発展しているので、他校の良い点を積極的に取り入れることは生徒の成長にもなるでしょう。
桐朋 河村先生:
本校も桐朋学園全体では女子部を擁しているので、家庭科での男女討論会などを通してジェンダーを理解する機会を設けています。テレビや報道などから社会問題のひとつとして、生徒たちはすでにジェンダーの根底にある問題を認識していますが、自らの言動に反映するにはまだ足りない点があるようです。現状のままで大学生になり女性と対話をしたら「ヤバい」という自覚ですね。別学に通うのであれば意識せずに過ごしてしまいがちですが、男子校の生徒ならではの精神的な成長を促すように気をつけています。
聖学院 清水先生:
キリスト教の宗教行事から始まったとされる「母の日」は、自分がどのように生まれてきたのかを知り、親に感謝することを学びます。教育理念の中に他者と同様に家族を敬うことも含まれていますから、母や家族について考えることでジェンダーへの認識が自然と深まる結果につながっていると考えています。
足立 相澤先生:
「いのちの授業」で助産師を講師に迎え、性教育を実施しています。出産に苦労した夫婦のエピソードなどを通して、自分がいかに“かけがえのない存在”であるかを理解してもらう内容です。授業後のアンケートには、両親への感謝、特に母親への感謝の気持ちが芽生えたという意見が毎回多数あります。また高校生には、足立区の協力でデートDV(ドメスティックバイオレンス)講座を行い、女性を理解するための紳士教育を実施しています。このような授業や講座がなくとも、男女問わず他者への思いやりを持ち、素敵な社会であってほしいものです。