【城北・巣鴨 学校対談】高校からでも間に合う「超難関大への進学指導」

都心部では以前から、義務教育である中学校までは公立(都立)に通い、高校からは大学進学を見据えて私立を目指すといったプロセスが定着しています。その一方で、高校募集を停止する中高一貫化、かつ男女別学の伝統を取りやめる共学化の流れが止まりません。時代に依存しがちな教育界の変化に左右されることなく高校からの生徒募集を続ける男子校は、これからの時代において希少な教育組織と言えるかもしれません。
数に限りある都内男子校の中でも、医学部医学科や難関国立大を含む進学実績で定評ある2校間の対談から、現代における私立男子校のトレンドを感じ取ってみてください。

高校から才能を開花させる生徒は多数実在する

国が定めた学習指導要領の下で過ごす中学3年間、私立でも公立でも学習内容は平等なはずだと考える方が「少数派」なのは言うまでもありません。実際の教育現場では、ほとんどの教員が常に最新の指導方法をインプットし、生徒本人だけでなく保護者からも求められる学力の向上を実現させるべく、教育自体のレベルアップを図り続けているのが現実です。そうした裏側を知った中学生は、高い進学目標を掲げて私立高の門戸を叩きます。
伝統校として、また進学校として名を馳せる2つの男子校、城北中学校・高等学校(以下、城北)、巣鴨中学校・巣鴨高等学校(以下、巣鴨)それぞれから進学指導の最前線に立つ先生をお呼びして、「男子進学校」の未来について語っていただきました。

中入生と高入生の間に学力差を感じる場面はありますか。

巣鴨 須能先生
高校入試は5科目を課したことで、結果的に高入生の学力レベルが向上しました。また、巣鴨の高入生は勉強も部活動も積極的な生徒が多く、中学からの部活・趣味をそのまま高校でも続けるパターンも少なくありません。
中学から高校初期の先取り授業が始まっているので、高入生が出遅れないように別クラスを編成し、7時限目の授業を設けるほか、小テストや放課後補習を繰り返すことで高1段階から中入生の進度に追いつく体制が確立しています。
こうした勉強と課外活動の両立は昨今ますます評価されつつあり、例えば2024年卒の高入生には筑波大学医学部医学科に推薦合格した生徒もいました。彼もまた委員会や行事に積極的に参加していた姿が印象に残っています。

巣鴨の須能先生
巣鴨の須能先生

城北 坂内先生
大きな学力差を感じることはありません。確かに、中入生は科目により先取り授業を受けていますので、その分、先に理解しているということはあります。しかし、高入生たちは、高校受験という難関を突破してきただけあり、しっかりとした基礎学力を備えているため、本校独自の高入生カリキュラムにも対応できています。特に、英語が得意な高入生が多い印象を受けることが多いと感じます。
中入生は、先に理解を深めている分、自分の得意科目に強みを持ち、目標に向かって地道に努力を重ねている姿がよく見られます。このような高入生と中入生が、高校生活の中で共に学び合い、成長していく姿を見ると、まるで異なる色が混ざり合って新たな色が生まれるような感覚にさえなります。
また、東大や東工大をはじめとした難関国公立大学に合格する生徒もおりますが、彼らの中学時代が公立校であれ私立校であれ、それぞれが持つバックグラウンドは様々です。その多様な経験をもとに、彼らは新しい友人と出会い、互いに刺激し合いながら視野を広げていきます。このような出会いと成長の場が、彼らにとってかけがえのない財産になっていると感じています。

城北の坂内先生
城北の坂内先生

部活動の面では中入生と高入生に違いはありますか。

巣鴨 須能先生
部活動に関して全国レベルの活躍を見せる生徒たちは高入生が多いような気がします。水泳やバスケットボールなど、部活動での活躍はもちろんのこと、本校の部にはないスポーツでの活躍も耳にします。例えば、次世代のトップサーファーが集う「なみのり甲子園」で今夏優勝をした生徒がいて、全校集会で盛大に表彰されました。やりたいことを諦める必要はありません。

巣鴨「冷暖房完備の体育館」
巣鴨「冷暖房完備の体育館」

城北 坂内先生
中入生も高入生もクラブ活動も熱心に取り組んでいます。高入生にとって、高校生活では中学時代以上に自分の興味やこだわりを深めるチャンスがたくさんあります。その中でも、関東大会に出場する水球専門の水泳部や弓道部、自転車競技部、全国大会優勝の少林寺拳法部やアメリカンフットボール部などといった今までなかったであろうクラブ活動への新しい挑戦は、高校生にとって未知の世界を切り拓く大きな扉となることでしょう。これらの部活動では、新しく加わる部員たちを心から歓迎し、互いに支え合いながら成長していける環境が整っています。
また、野球部やサッカー部などは、伝統的に根強い人気を誇り、仲間とともに持ち前の思考力で向上するためのこだわりの練習に熱心に取り組み、熱い試合を繰り広げる場でもあります。多くの選択肢という可能性が用意されている環境があるからこそ、自分自身の個性や興味を最大限に引き出す機会があり、心を燃やせるものが必ず見つかるはずです。

城北の人工芝グラウンド
城北「23区内最大級の人工芝グラウンド」

大学入試の多様化に伴う進学指導の変化

近年の大学入試制度は総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)の幅が大きく広がりましたが、大学入学共通テストを利用して受験生の学力を計る点は変わっていません。とりわけ国公立大の一般選抜では共通テストに加えて2次試験による得点が合否を決めます。

常に変わりゆく大学入試制度にどうやって対応していますか

巣鴨 須能先生
最近は東京大学や東京医科歯科大学といったトップ校に公募推薦で合格する生徒がいるなど、文武両道の巣鴨生は推薦入試にも強い印象があります。とはいえ、巣鴨では一般選抜の点数で勝負する生徒がほとんどです。推薦入試を受けるにしても、まずは確かな学力を身につけ、一般選抜で合格する実力を備えてから公募推薦に挑戦するべきだと生徒に伝えています。
高い目標に向かって努力する生徒のために、学校も万全のサポートをしています。日々の放課後講習、充実した夏季・冬季講習、OBによる受験対策講座、キャンパスツアーなど、受験生の学力とモチベーションを高める体制が整っています。

巣鴨「放課後の教室風景」
巣鴨「放課後の教室風景」

城北 坂内先生

その通りで、総合型選抜や学校推薦型選抜は、高校3年間をしっかり準備することで挑戦する価値が生まれ、その努力が結果に結びつきます。東京大学の推薦入試や京都大学の特色入試に合格した生徒をはじめとして実を結んだ多くのOBたちは、英検や副教科、課外活動やボランティアなど、あらゆる活動に真剣に取り組み、少しずつ努力を積み重ねてきた実力者でした。
そのため、城北では生徒たちの学力向上を支えるために、リニューアルした進学センターを中心に集中できる学習環境を整え、添削や面談、補習や講習会などを行い、さらに課外活動の推奨や情報提供も行っています。また、生徒たちが学校行事やクラブ活動に積極的に参加し、魅力を引き出しながら仲間と充実した時間を過ごせるようサポートをしています。こうした日々の積み重ねが、やがて受験という飛躍できる機会に自信をもって立ち向かうことができる大きな力になります。勉強も学校生活も思いっきり楽しめる生徒が大学の新入試スタイルに合っていると思います。

城北の情報の授業
城北「情報の授業」

巣鴨 須能先生
巣鴨は医学部に強いイメージをお持ちの方も多いかと思います。実際に医師を志す生徒は多く、学校でも小論文や面接の対策まで手助けしています。また、東京医科大学との高大連携協定、東京医科歯科大学との高大連携プログラムなど、大学医学部とも協力しながら生徒の学びを後押ししています。医師として活躍中のOBが大勢おり、しばしば学校行事等で交流する機会があるため、在校生にとって身近なところにロールモデルがいるというのも強みだと思います。ただ漠然と医学部を目指すのではなく、より具体的な仕事内容を理解して医学の道を志してほしいと思っています。
もちろん医学部以外の進路を目指す生徒もたくさんいますし、それぞれの生徒を手厚くサポートする体制が整っています。「生徒が持つ夢を叶えてあげたい」という気持ちで学校が一丸となり、生徒の進路実現を支えていきます。

巣鴨「東京医科大学との高大連携」
巣鴨「東京医科大学との高大連携」

城北 坂内先生
本校も例年、学年の1割弱の生徒が、医学部合格を目指して日々頑張っています。医学部志望者に伝えているのは「人の命を守り、怪我や心を癒すために」という良医としての使命です。医療現場は、厳しさと繊細さを求められる場所であり、そこで活躍するためには、深い思いやりと強い意志が必要です。生徒たちには、日々向上心を持ち続け、努力を惜しまずに取り組む姿勢が不可欠であることを理解してもらっています。
この実現のために、一例ではありますが、順天堂大学との高大連携を通じて、志望者たちにさまざまな経験を提供しています。例えば、最先端の医療施設の見学やワークショップ、研修医や医学生との貴重な交流、実習体験、さらに日本を代表する医師の講演会や交流の機会も設けています。これらの活動を通じて、生徒たちは医師という職業への深いリスペクトと、医師になるという強い覚悟を胸に抱いて、医学部入試に臨んで欲しいと考えています。

城北の順天堂大での実習
城北「順天堂大での高大連携実習」