私立高校無償化、申請手続きの注意点!
申請手続きをしないと助成が受けられない!意外な落とし穴にご注意
国の支援、各自治体の助成を受けるためには、申請の手続きをする必要があります。国の就学支援と各自治体の助成を受ける手続きは、自治体や通っている学校によって異なるので、学校から配布される資料をしっかりと確認しておきましょう。また、申請は自動更新ではありません。入学時の1回のみではなく、毎年申請の手続きをしなければ助成が受けられないので、こちらも注意が必要です。
国の助成
【手続きの流れ】在学校に申請をします。支給方法は、授業料支払い後の還付が主ですが、学校によって異なりますので確認しておきましょう。
【申請時期】1年生は4月と6月頃、2・3年生は6月頃に、在学校を通して申請の手続きを行います。
東京都の助成
【手続きの流れ】東京都私学財団に直接申請をします。助成金は、東京都私学財団から申請者の口座に直接振り込まれます。
【申請時期】6月頃に在学校や財団のwebサイトを通して手続きの案内があります。申請時期は6~7月頃です。
※2020年度の申請期間は、2020年6月19日(金)~2020年7月31日(金)までです。「期間外の申請につきましては、受付できません」とあるので注意が必要です。
(参照元:「令和2年度 東京都私立高等学校等授業料軽減助成金のお知らせ)
神奈川県の助成
【手続きの流れ】在学校に申請をします。各学校で授業料の支給方法・時期が異なるので、在学校への確認となります。
【申請時期】5~6月頃に在学校から、手続きの案内があります。受付締切日までに在学校へ必要な書類を提出します。
千葉県の助成
【手続きの流れ】各学校で異なりますので、在学校への確認となります。
【申請時期】各学校で異なりますので、在学校への確認となります。
埼玉県の助成
【手続きの流れ】申請は在学している学校を通して行います。学校から申請書などの案内が配布されますので、期限までに必要な書類を学校に提出します。
【申請時期】課税証明書が発行される6~7月頃に申請します。
国の支援、各自治体の助成における支給の方法は学校ごとに異なりますが、おおむね相殺される方法(助成の金額と授業料とが相殺され、差額分の授業料が請求される)と、還付する方法(先に授業料を納め、のちに助成金額が振り込まれる)の2通りのようです。
制度を利用する場合でも、申請の時期との兼ね合いから、入学金や授業料は一旦先に納める形になります。特に初年度の1年生は、家計のやりくりを考えておきましょう。申請手続きや支給の方法に関することは、学校から配布される書類や案内をしっかり確認しておくことが大切です。
支援を受けられたとしても、家計のシミュレーションを!
「私立高校の授業料無償化」を理解したところで、受験への影響があったのかどうか、2019年の高校受験と中学受験を振り返ってみましょう。
高校受験においては、東京都が2019年の1月に発表した「平成31年度都内私立高等学校入学応募者状況【一般入試・中間】」によると、2018年の応募人員が50,538人(中間倍率2.39倍)に対し、2019年の応募人員は60,835人(中間倍率2.85倍)と増加しました。
1都3県における中学受験では、6年生人口の増加の影響が大きいとは思いますが、2月1日の受験者数だけを見ても、2018年は37,939人に対し、2019年度は39,683人と増えています。
受験の動向はさまざまな社会的な影響を受けるものですが、「私立高校の授業料無償化」の影響が一部にあったということは確かに言えそうです。
実際の声として、インターエデュが独自に行ったアンケート「東京都の私立高校実質無償化は、私立中高一貫校を選択する理由の一つとなりますか?」では、
・なる 49.5%
・ならない 31.2%
・どちらとも言えない 19.4%
(※2017年1月に実施したものです。)
となりました。
この結果を見ても、中学受験にも私立高校の授業料実質無償化が影響を及ぼしていることがわかります。
専門家はどう捉えているのでしょうか? 森上教育研究所の森上展安先生にうかがいました。
森上先生: 私立高校に入学する生徒は、この制度によって当然増加すると思われますが、大阪府が先行実施したような完全に無料となったわけではないので、中学受験への影響はドラスティックにはならないでしょう。高校受験においては、中位成績層の都立高校と併願される私立高校に受験者数増などの好影響が出るのではないかと予想しています。都立と私立の費用差が少なくなることによって、金額面ではなく、質の面で学校選択をするご家庭が増えるのではないでしょうか。
公立中高一貫校志望で私立校を併願するご家庭においては、受検準備に費用をかけられることを鑑みれば、この程度の支出なら…と考えるご家庭は多いと思われます。都立一貫校の受検生約9,000人弱のうち、不合格者は7,000人程度います。このうち私立併願者は学校によって異なりますが、少なくとも3割程度は併願していると思われます。この併願層が私立中学の進学を選択する可能性が広がることで、併願自体が増加し、ひいては私立中学進学者も増加すると見ています。
ただし、私立中学の一般受験のほうには、今回は私立中学生の保護者負担の軽減措置ではないので、影響は少ないと考えています。影響はあくまで都立適性型の私立併願者に限られるのではないでしょうか。
(※コメントは2017年1月時点のものです。)
学校間でかなりの差がある私立中高一貫校の学費ですが、平均的には6年間で約600万と言われています。東京都の年収910万円以下の世帯が国と都の助成を受けられたとしても、高校での3年間の助成金額合計は、461,000円×3年間=1,383,000円です。確かに、残りの約460万円をやりくりできるかは、各ご家庭のふところ事情によるところが大きいでしょう。
お子さまの選択肢が広がるという意味においてはとても有効な制度ですが、その可能性だけを見るのではなく、しっかりと家計のシミュレーションをした上で検討することが大切です。ぜひ制度をしっかり理解した上で、先々の家計の状態も踏まえながら、よりよい選択ができるように考えてみましょう。