【奨学金最新事情】第2回:奨学金アドバイザーに聞く!知っておくべき給付型奨学金の利用法とは(3ページ目)

「所得連動返還制度」も始まったが債務の消滅はない

エデュ:貸与型奨学金の返還を滞納する人が増えているという問題が取りざたされています。

久米さん:日本学生機構の貸与型奨学金には、利息優遇や猶予制度など返済者の負担軽減のための仕組みがあるものの、実質、学生ローンであることに変わりはありません。特に「予約採用」型は高校生のうちに、つまり“未成年のうちに学校業務として借金の手続が行われている”という見方もあります。

特に働く人の4割が非正規雇用となった今、収入が不安定な中、奨学金の返済が滞る人もいます。借金ですから滞納し続けると、最終的には給料の差し押さえなど、法的措置の手続きがとられることになってしまいます。

「所得連動返還制度」も始まったが債務の消滅はない

日本学生支援機構の保証制度は「機関保証」と「人的保証」を選択できますが、人的保証を選択した場合、滞納の影響は連帯保証人や保証人にまで及びます。最終的に本人が自己破産した場合、連帯保証人も自己破産し、保証人も自己破産することになった例は100人に1人の割合です。

日本学生支援機構には「返還期限猶予」と「減額返還」の2種類の返済猶予制度が設けられています。猶予が認められるとその間の延滞金や利息も免除されるので、奨学金を利用するのであれば理解しておきたい制度です。平成29年4月から奨学生(返還者)の所得に応じて返還月額が決まる「所得連動返還制度」も始まっていますが、これも、返還月額の調整であり、債務の消滅はありません。

エデュ:貸与型奨学金は子どもの借金になってしまうんですね。では、保護者はどのような準備をしておけば良いでしょうか。

久米さん:一番大事なことは、お子さん自身が、なぜ進学するのかをきちんと考えて、保護者に伝えられることです。

高等教育の費用を誰が負担するのかについては、3つの考え方があると言われています。「福祉国家主義」「家族主義」「個人主義」です。
「福祉国家主義」とは、教育は将来の良き納税者を育てるためのものだから税金を使って国家が行うべきとするもの。「家族主義」は子どもの教育は親の責任なのだから親が負担すべきとするもの。そして、近年主流となっている「個人主義」は、教育は自分のためなのだから自分自身で負担すべきというものです。

子どもの教育費は親が負担するという「家族主義」は、実は日本や韓国といった一部の国特有の価値観だと理解しましょう。

保護者が子どもの高等教育の学費を丸ごと負担できる時代ではありません。そのことをきちんと親子で共有するところから始めましょう。その上で、希望を叶えるための資金計画を立てましょう。

奨学金を借り最短で進学するのも一つの方法です。しかし、見方を変えると、数は少ないながら、昼間働いて収入を得ながら通える夜間部もあります。あるいは、いったん社会へ出て働き、資金を貯めてから進学する方法もあります。返還義務のない奨学金を給付する民間団体も増えています。