中学受験での親の関わり方とは?

はじめての中学受験では、第1回、2回、3回と中学受験をする、しないの選択についてお伝えしました。第4回目では、中学受験をしようと考えているご家庭に伝えたい「親の関わり方と心構え」です。第3回目に続きまして、教育専門家の小川大介さんにお話をうかがいました。中学受験真っ最中のご家庭も必読です!

中学受験と高校受験とは親の関わり方が異なる

-中学受験がはじめての方の中には、高校受験と同じと考え、受験は子どもがするものだから、親は学校選びや塾の送り迎えだけをすればいい、勉強は塾に任せれば大丈夫と考えているかもしれません。ところが、中学受験を経験した親御さんから「精神的にきつかった」「こんなに大変だとは思わなかった」という話をよく聞きます。どうしてなのでしょうか。

小川さんは、「一つに高校受験の時期と比べて、親としての経験値もまだ浅く子どもも精神的に自立できていない、それにも関わらず、受験をとりまく大量のタスクが家族に押し寄せられるため」と言います。また、「中学受験で必要な勉強は小学校で習う内容よりもはるかに難しく、膨大な量が求められます。子どもの自然な成長を見たときに、ものごとをまとまった考え、概念として理解でき始めるのは9歳頃と言われています。ですが、中学受験塾では小学4年生はじめから抽象的な概念の学習がいきなりスタートします。これは子どもの成長上かなり不自然。不自然な物を無理やりやらせたら、絶対子どもに無理が生じるんです」とのこと。

-こういった難しい状況の中で行われるのが中学受験。そのため、「中学受験での親の心構え」とは何かを知っておくことはとても大切です。そこで、はじめに中学受験の最中はどんな心境、状況になりがちなのかを、小川先生にうかがいました。

冷静に対応できる人はごく一部

小川先生_01

小川さん:中学受験はやはり親が子どもの面倒を見る場面が多いので、思い通りに子どもを伸ばしてあげられない、塾の成績が上がらないなど、困った事態が毎週のように親に降りかかってきます。そういったことが起きたときに、わが子を大事に思う親御さんほど自分を責めがちです。心理学的にも、自分を責める気持ち、不安感やもどかしさは怒りに変わりやすいのですが、一番近くにいるのが当の子どもです。そのため、わが子を思う気持ちから生まれたはずの怒りが、肝心の子どもに向けて理不尽な攻撃となってしまうという、負の連鎖も起きやすいのです。

こうした事態に冷静に対応できる人はごく一部の人であって、大抵の親御さんにはまず無理です。運良く子どもが塾や勉強とも相性よくできて楽なときもあるかもしれませんが、そうでないとき、やはり親は自分を責めてしまうし、子どもの可能性に対して信じてあげられなくなったりもします。

実際にわたし自身も最近まで受験生の親をやっていたわけですが、受験とは一歩距離をおいて冷静でいようと努めていたうちの奥さんですら、感情の浮き沈みに見舞われ、どうしようもないほどに心が乱れる様子も見てきました。また、わたし自身もひどく心が波立つことがありましたし、そんな自分を自覚して、自分自身の心を観察してきました。中学受験を初めて経験されるご家庭で、子どものことを第一に考えて、冷静に気持ちを保ちながら進めていく受験なんて、とてもじゃないけれど無理な話で、自分自身だけではコントロールできない、何かに持っていかれるような気持ちがあるというのを生々しく体験したのです。

中学受験は親も成長する機会と捉えることで乗り越えられる!

-では、イライラして子どもを叱り、そして自己嫌悪に陥ってしまう。そういった気持ちとどう向き合ったらよいのでしょうか?

親が自分に向き合い、感情を受け入れる

親が自分に向き合い、感情を受け入れる

小川さん:我慢によっては、そこの感情は乗り越えられないということをまず知ることだと思います。起きた感情は消せません。なので、なぜ自分の中にそういったさまざまな、できれば生じさせたくない感情、子どもに対する苛立ち、たとえば、テストを見るたびに焦ったり、まわりのことがやたら気になったり、成績を見たら「いいね」と素直に褒めて終わることができずに、どこか悪いところを見つけてわざわざ文句を言いたくなったり、などと自分が嫌になる感情が一杯出てくるのかということについて、そのメカニズムを学んでいくのです。知識なしに自分の感情をコントロールしたいと思ってもそれは難しくて、なぜその気持ちが出てくるのか?どこから生まれてくるのかということを理解していく必要があるのです。

知識を持つというのを言い換えれば、自分自身を観察して自分を磨くということです。自分と子どもとの関わり合いにおける悩みを解消したり、より良い時間を選んでいくには、結局他力本願では解決しないんです。

自分磨きとはいっても、何かキラキラした自分に頑張って変わろうとすることではなく、今の自分がどんな人を知って、それをそのまま受け止めるということがとても大事です。自分はくよくよしがちだなと思ったら、それはそれでいいんです。くよくよしがちなお母さんだとしたら、それはいろいろ細かいことに気がつくことができる人だということなので、大きな方針はお父さんと子どもで決めて、お母さんは細かいところを漏れのないように手伝うことにすると上手くいきそうだという話にもなる。自分のできることを受け入れて、やっていけばいいんです。