こうした学生の不安や心配を取り除こうという取り組みがさまざまな企業で始まりつつあります。
例えば、貸与型奨学金を受けている社員の奨学金返済を支援する企業や、2019年12月には、奨学金返済を支援する企業の求人に特化した就職マッチングサイトも登場するなど、奨学金受給者を支える取り組みが広がりつつあります。
卒業後の返済に苦慮する受給者
日本学生支援機構の調査によれば、大学に通う学生のうち奨学金を受給する割合は5割弱。ほぼ半数の大学生が、なんらかの奨学金を受給している現状があります。しかし、受給者増加に伴い、卒業後の返済に苦慮する人も。日本学生支援機構の「平成29年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果」によると、同機構で奨学金を受給した人のうち、3ヵ月以上延滞している人数は15万7,000人という報告がされています。中には、自己破産をせざるを得ないケースなど、社会問題としてクローズアップされるようになりました。
一般企業が取り組む若手従業員向けの奨学金返済支援
奨学金は申し込んだ本人が返済します。いわば子どもが返済するものです。
しかし、日本学生支援機構の調査では「延滞が継続している最たる理由」として最も高いものは「本人の低所得」32.0%。続いて「奨学金の延滞額の増加」(13.7%)、「本人の借入金の返済」(9.0%)などとなっています。
日本学生支援機構の貸与型奨学金の場合、災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、返還期限の猶予を願い出ることができます。経済的困難を理由とする場合、給与所得者は年間収入金額が300万円(税込)以下であれば申し出ることが可能ですが、あくまで猶予であって免除されるわけではありません。
そうした中で、奨学金返済支援制度を設け、若手従業員を支援する一般企業が出始めてきました。支援制度を導入した企業の中には、入社説明会の参加者が増加したという企業もあり、卒業後の奨学金の返済を少しでも楽にしたいと思う学生と、優秀な人材を獲得したい企業、双方にとってメリットのある制度といえるでしょう。
企業が行う若手従業員向けの奨学金返済支援制度は、主に、「返済額の一部を手当として支給」「奨学金の返済残高を肩代わりする」の二つのタイプに分かれるようです。そのいくつかの例を見てみましょう。