家族が学校にフィットさせていく努力が必要
小川大介さん:お子さんが気持ちを切り替えられないということは、第一志望以外の学校の合格をもらってから入学までの間に、「(その学校に)通いたい」って気持ちを育ててあげようとしなかったところが大きいんですよね。
入学までの間は気持ちを前向きにできていなかったとしても、入学して1学期、2学期の間に友だちを作ったり、先生の話を聞くことでこの学校での中学生活の意味はどういうところにあるのかな、と自分なりに感じ取ってみたりするうちに子どもの気持ちは変わってきます。
家族としても、学校での様子をお子さんから聞いては嬉しかったことを一緒に喜んだり、がんばりたいことを応援したり、友だちや先生の話題を楽しんだりと、自分たちが学校をより理解して、学校に自分たちをフィットさせていく努力をするというのが、子どもに合う学校にしていく秘訣だと思います。中学入試が終わったこの時期、通う学校のことをもっと知ろう、好きになろうとすることがとても重要です。
中学生活と小学校生活とが大きく異なることの一つとして、学校の魅力を作るのは誰か?という点があります。小学校までは学校の先生や、設備、教育内容などが魅力の大半を占めていたことでしょう。しかし、中学以降の日々の魅力は、子どもたちが作ります。教師の指導力も大事です、学校の設備も大事です、学校の教育方針ももちろん大切なのですが、中学からは一人ひとり意思をはっきりと持った子どもたちが互いに影響しあって成長していくのです。クラブ活動の先輩後輩関係の大きさをイメージしてもらえるとよく分かると思います。
受け身で意欲の低い子が集まってしまえば、いかに先生たちが奮闘してもその学校の学び舎としての魅力は高まってきません。
その逆で、中学受験で不本意なことがあったとしても、気持ちを切り替えてこの学校を楽しむぞと前向きで意欲的な子がクラスに何人かいれば、同級生にもプラスの影響が広がっていくものです。
学校の魅力を高めていく一員としてお子さんを送り出すのだという気持ちも、親御さんには持っていただきたいなと思います。
それと、これは釘を刺す意味で話しますが、中学に入学したあと、子どもは気持ちを切り替えて学校生活を楽しんでいるのに、親の方はいつまで経っても中学受験の失敗感情を引きずっているというケースを毎年目にしますが、これは本当に罪作りなことですから止めましょう。子どもは親の気持ちに敏感ですし、ほとんどの親御さんが思っている以上に親のことを気遣っています。ですから、親が失敗感情を引きずっていると、自分も楽しんではダメなのかなと、自分はやっぱり上手くいかない人なのかな、などと不安になるのです。
お父さんやお母さんこそが早く中学受験を終わらせてくださいって思いますね。
edu’s point
インターエデュ掲示板でも、【5778421】「第一志望なのに喜べない」【5766694】「第一志望不合格から立ち直れません。」といった投稿があり、さまざまな思いがつづられています。新入学に向けて、ぜひ矢野先生、小川先生のアドバイスを一つひとつ噛みしめながら、前を向いて進んでいただきたいと思います。
矢野耕平(やのこうへい)先生
大手進学塾で13年間勤務の後、2007年に中学受験指導スタジオキャンパスを設立し、代表に就任。現在、東京・自由が丘と三田に2教場を構える。また、学童保育施設ABI‐STAで特別顧問を務める。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(ともに文春新書)、『旧名門校vs.新名門校』(SB新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)など。近著に矢野耕平さん・武川晋也 (たけがわ・しんや)さん共著『「早慶MARCHに入れる中学・高校 親が知らない受験の新常識』(朝日新聞出版)
小川大介(おがわだいすけ)先生
教育家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。
京大法を卒業後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。メディア取材も多く、「親も子も幸せになれる はじめての中学受験」(CCCメディアハウス)など著書も多数。