新入試に向けて、やるべきポイントは3つ
続けて、「Part2 変わる入試に向けてやるべきポイント」の講演がスタートしました。
河合塾の考える、変わる入試に向けてやるべきポイントは3つ。
それは、
1 志望学部・大学を明確にする
2 大学入試の情報を収集する
3 「学力の3要素」を伸ばす
1つ目のポイント、志望学部・大学を明確にするためには、逆算スケジュールをもとにしたロードマップを意識する必要があります。
そのためにも、まずはきちんと目標を決めること。「自分がなぜこの大学に行きたいのか?」が明確で、しっかりとした目標を持てている方が勉強にも身が入るからです。
それには、単に難易度から「医学部へ」「法学部へ」というような学部選びではなく、興味から学問を選ぶことが大切で、「数学が苦手だから文系」のような消去法での進路選択はNG。
「このことを学びたいから、この大学のこの学部に行きたい!」という強い動機の方が、困難にあったときにも挫けずに勉強を続けられる力になるのです。
では、どのようにして行きたい学部を検討すれば良いのかというと、受験生自身の「興味」から学問を見つけ、情報収集をすることが大切。比較的時間のある高校1・2年生のうちから、オープンキャンパスなど大学で行われるイベントに参加しましょうということでした。長谷川さんは、「このとき、お子さんに嫌がられてもぜひ一緒に行ってください!」と保護者の方に向けて声を大きくしていました。
2つ目のポイント、大学入試の情報を収集するためには、情報サイトをしっかりと活用すること。河合塾の運営する「新入試Navi」や「Kei-Net」などが紹介されました。
3つ目のポイントは、「学力の3要素」を伸ばす。つまり、「思考力・判断力・表現力」を伸ばしていくということですが、そのためには次のような学習サイクルを意識するとよいということでした。
このサイクルをうまく回すためのオススメの方法の一つが模試を活用すること。学習スケジュールを立てる際にはうまく模試を組み込んでいくようにするとよいでしょう。
講演の最後には、各家庭でできることについてもお話が。環境面のサポートと家族で子どもの学部・大学選択に関わることの重要性についてふれていました。
環境面でのサポートは、まずなんと言っても生活リズムを整えさせること。ついつい夜型になってしまう高校生の生活を改められるのは家族だけです。早く起こしたり、スマートフォンの使い方を改善したりといったことが考えられます。
また、家族での会話も「学力の3要素」を伸ばす格好の材料になるとのことです。高校生にもなるとあまり親子・家族での会話は多くないかもしれませんが、家族で食卓を囲みながら「今日はどんなことがあったの?」と問いかけるだけでも、人に説明する練習になるのです。
日常生活の中で、子どもに自分の考えをまとめさせるような問いを投げかけることができるという話に来場者も大きく頷いていました。
長谷川さんの講演の締めくくりは、「まずは子どもに成功体験をさせましょう」というメッセージでした。まずは小さなことから学習をスタートさせ、そこから成功体験を得ることで、長い受験生生活を乗り越えることができるのです。
新大学入試に関する知識が整理され、また、子どもの大学受験を成功させるために、すぐにでも始められるような具体的な行動のヒントを多く得られる、長谷川さんの講演でした。
河合塾人気講師が伝授した学習方法、「2週間単位での学習計画を」
短い休憩を挟んでの後半は、Part3の河合塾講師による講演です。
「現役合格を勝ち取るために、今すぐやるべきこと」と題して、河合塾の超人気英語講師である森千紘先生の講演が始まりました。
さすがは河合塾の人気講師。ユーモアがふんだんに織りまぜられつつも迫力がある語り口に、会場全体が前のめりになるようでした。
「去年の今ごろ、みんな『入試が変わる』って大騒ぎしていましたよね。でも僕は、『入試は変わりません!』って断言していたんです。結果、どうなりましたか? 時代が僕に追いついてきましたねえ〜!」
冗談交じりながら、核心をついてくるお話です。
森先生曰く、4技能は特別な力ではないとのこと。例えば……と示されたのは、慶應義塾大学の2007年の入試問題。もともと、慶應義塾大学などの難関大学では、「まさに新技能!」というような入試問題が出ていたのです。
森先生のお話は、英語4技能や「使える英語」についても鋭く切り込んでいきます。「例えば皆さん、毎日のように使う言葉だけど、『…をレンジでチンして』って英語で言えますか?」答えは「Please microwave….」となりますが、既存の英語の教科書の中にはなかなか出てくる機会がないので、答えに詰まってしまった人も多い様子でした。
こういった目から鱗が落ちるような話を重ねながら、森先生は新大学入試に立ち向かうための英語をはじめとする勉強法について、やるべきことは基本的に変わらないが、やらねばならない量が増えただけだと結論づけます。
「入試にはトレンドがあり、入試が変わるというよりは、トレンドが変わっているだけなんです」
確かに、思考力が問われるといっても、その前提となる知識がなければ、そもそも何をどう考え、表現すればよいのか、見当もつかないでしょう。
森先生はまた、「出遅れ科目を放置しない!」ということを強調していました。
森先生流の具体的な学習方法としては、To Doリストではなく2週間単位での学習計画を立てて勉強をしなさい、というものでした。
To Doリストは、書き出そうと思えば無限に書き出してしまうし、さらにそれが終わらないことで自己否定につながってしまいます。それよりは、2週間くらいの単位でざっくりとした学習計画を立て、都度それを見直しながら勉強のリズムを作っていくとよいそうです。この「2週間」というのも大事なポイントで、学校行事、定期テスト、部活の試合、模試などなど、高校生の生活リズムにぴったりと合うのだそうです。
長年、多くの高校生の姿を間近で見てきた森先生は、高校生の忙しさも熟知。ご自身の授業は授業を受けることがそのまま予習にも復習にもなり、しっかりと知識の定着を図れるように設計していて、そのために運動部に所属している生徒など時間のない高校生に支持されているとのことでした。
「とは言え、君たちはアオハル(青春)なんだよね。まずは学校生活に全力投球を!」高校生への温かいエールで、森先生の講演は幕を閉じました。
2月にしては暖かく、過ごしやすい天気だったこの日。でも、会場から帰る参加者の足取りが軽やかに見えたのは、この日和のせいだけではなかったでしょう。
不安のある新大学入試にしっかりと対峙するための知識を得、これから始まる大学受験への指針を見つけた様子の大勢の親子連れ。その背中に、心の中でエールを送りました。