桜蔭生の情熱の塊「体育大会」
エデュ:続いて、体育大会についておうかがいしたいと思います。どんなことが印象に残っていますか?
王先生:体育大会は縦割りのクラス対抗でチームを作るので、学年をまたいで一体感が生まれることが一つ。それと、得点にはならない対学年のリレーの盛り上がりが、強く印象に残っています。
エデュ:どんな風に盛り上がるのでしょうか?
王先生:リレーの前に、学年ごとに応援団がつくったオリジナルの歌と踊りで応援し盛り上げていきます。当然、高校3年生は最終学年なので、勝ちたいとすごく熱が入ります。それに対し、他学年が対抗してくるので、勝負という点でクラスリレーより対学年リレーに力が入ります。高校2年生でも勝って、高校3年生でも勝ったという場合には卒業後も誇りにするぐらい、対学年リレーは桜蔭生にとって、一大イベントです。
もう一つ、在校生の間でひそかに話題になるのはクラスカラーです。縦割りのクラス(チーム)は、A・B・C・D・Eの5つ。それぞれのテーマカラーが青、黄、白、赤、ピンクです。在学中の6年間で5色すべてのハチマキがそろうと少しうれしい気持ちになったりもします。
エデュ:体育大会で、先輩から代々受け継がれているものはありますか?
王先生:伝統として、中学3年生は「マズルカ」という踊りを、高校3年生は「みのり」という踊りを学年全体で行います。「マズルカ」と「みのり」というのは、昭和初期ごろから続いている、当時の女学校で行われていた典型的なダンスです。
エデュ:ずっと同じ踊りが受け継がれているのでしょうか?
王先生:メインの踊りは昔からずっと同じ振りで、イントロと最後のところだけは、毎年ダンス部が新しい振りをつけます。ダンス部がリードして、学年全員の約240人もの生徒が振りを覚えられるようにしたり、舞台となるグラウンドへの入場から、輪の広がりをシミュレーションしてフォーメーションを考えたり。 全員が集合してできる練習はたった2回しかないのに成功させるのですから、ダンス部は尊敬される存在です。
今年は新型コロナウイルスの影響で体育大会が実施できませんでした。桜蔭生にとって大事な体育大会ですから、せめてダンスだけはと考え、秋に実施を計画しています。
edu’s point
桜蔭生に抱いていたイメージが変わるようなお話だったのではないでしょうか。 女子御三家の生徒の気質を表すものとして、「もし道に空き缶が落ちていたら」、桜蔭生は「本を読んでいて気づかない」、女子学院生は「缶けりをはじめる」、雙葉生は「拾ってゴミ箱に捨てる」というたとえがあります。しかし、勉強熱心で真面目な桜蔭生の真の姿は、学業だけでなく、なにごとにも情熱を傾け、自己を表現していく姿だと感じました。
第2回では、生徒たちの生き方に大きな影響を与える「桜蔭という環境」に迫っていきます。