中学受験、複数回受験の「優遇措置」とは?

私立中高一貫校の入学試験は、御三家などの超難関校を除き複数回設けられています。しかし、2回、3回と日程が後ろになるにつれ倍率が上がる試験でもあります。複数回受けても合格の見込みは薄いのでしょうか。
実は、複数回受験には加点などの「優遇措置」があります。慎重に入試日程を組むことで、同じ学校へのチャレンジが可能となります。
優遇措置や複数回受験の対策について、過去問題集出版大手「声の教育社」の後藤和浩さんにアドバイスをいただきました。

複数回受験、合否に関わる4つの「優遇措置」とは?

同じ学校を複数回受ける受験生は、その学校に入りたいという強い意志があるということ。「熱望組」とも呼ばれます。そういった熱心な受験生を受け入れたいという想いから、「優遇措置」を設けている学校もあります。具体的に見ていきましょう。

合格ボーダーラインでの優遇

1回目で不合格だった受験生が2回目を受験した際に、点数が合格のボーダーラインに近く、そのボーダーラインに複数名いた場合、1回目を受けた受験生が優遇される措置です。

合格する実力があるにもかかわらず、1回目の試験で緊張してしまい力が発揮できないケースもよくあります。2回目を落ち着いて受験できれば、倍率が高くても優遇措置により合格のチャンスが広がります。

繰り上げ合格での優遇

一般的に入学手続きの段階で募集定員に満たない場合、繰り上げ合格があります。繰り上げは点数順に上から決めていきますが、繰り上げのボーダー付近に複数名いることもあります。その場合、入試を複数回受けた中で、学校が認める点数が取れていた受験生を優遇し合格を出す学校もあります。

加点による優遇

複数回受験をすることで、試験の点数に加点があることです。加点の優遇措置を公表している学校がある一方で、非公表の学校もあります。また、学校によって加点の方法は異なっています。入試説明会等で詳しい内容を発表する学校もあります。

声教チャンネル「【中学受験】早めに知っておきたい複数回受験①~優遇措置はすごい!」より
声教チャンネル「【中学受験】早めに知っておきたい複数回受験①~優遇措置はすごい!」(https://www.youtube.com/watch?v=sgSNJHDdEXk)より

良いとこどり

複数回受験した中から得点の高い結果で合計点を出し、合否を決めることです。
たとえば、1回目の試験で国語が60点、2回目が70点だとすると、2回目の点数が採用されます。

続いて、複数回受験の対策について見ていきましょう。

1回目、2回目それぞれの過去問対策は必要⁉

1回目、2回目それぞれの過去問対策は必要⁉

入試問題は学校の「アドミッションポリシー」に則り作問されます。よって各回の問題の難易度や出し方は共通です。一方で、各回の出題の分野に関しては特徴が見られます。

たとえば、1回目と2回目の出題分野が同じ学校もあれば、1回目で出した分野は2回目で出さない学校もあります。
前者では、1回目は試験に慣れずに思わず失点してしまった受験生に対し、2回目で正確な実力を見たいという意図、後者では受験生の得意分野を見たいといった学校側の意図があります。

したがって、同じ学校の入試でも1回目だけでなく2回目、3回目の過去問も必ず解き、出題の傾向をつかむことが大切です。

傾向をつかんでおけば、1回目終了後に2回目に備えることができる!

声教チャンネル「【中学受験】早めに知っておきたい複数回受験②~初回受験後にやるべきこと」より
声教チャンネル「【中学受験】早めに知っておきたい複数回受験②~初回受験後にやるべきこと」(https://www.youtube.com/watch?v=FlM8YZckD8Qより

各回の出題傾向をつかんでおけば、1回目の試験が終了した後に、2回目に備えて対策することができます。

1回目、2回目ともに同じ分野を出す学校であれば、1回目の試験終了後に解き直しを行うことで2回目に備えることができます。別の分野を出す学校であれば、1回目の試験終了後に1回目の出題分野と異なる分野を復習することで、2回目で得点できる確率が上がります。

複数回受験での注意点! 日程の組み方は?

複数回受験には優遇措置といったメリットがあり、対策も講じやすいことがわかりました。しかし、冒頭でお伝えしたように2回目以降は倍率が上がり「チャレンジ」となります。そのため、2回目以降の受験方針や日程を今から固めておくことが大変重要になります。

2回目を受けるかどうかは第三者に相談

たとえば、2回目を受けるかどうかを「1回目の手ごたえで決める方針」であれば、受験生本人の「できた・できなかった」の感覚だけでなく、試験後に塾の先生に自己採点を見てもらい判断を仰ぐなど、できれば冷静な第三者と相談して決めると良いでしょう。

2回目と同日の「安全校」を事前に決めておく

相談した結果、2回目は受けない方がよいと判断するケースもあるでしょう。複数回受験は優遇措置があったとしても、合格の確約はないからです。
その場合は別の学校を受けることになるので、2回目と同日試験の「安全校」をあらかじめ決めておくことが大切です。

1回目が不合格となった場合、早めに合格を一つ取っておくことが重要となります。後半の日程は偏差値や倍率が上がります。体力もある前半日程で確実に合格しておくことは自信にもつながり、安心して後半日程にも臨めるようになります。

優遇措置はほとんどの学校で「同時出願」が条件!

出願は「ダブル出願」それとも1回目が終わってから?

Web出願が主流となり、入試前日の23:59や当日の朝まで出願を受け付ける学校も多くなりました。以前のように「ダブル出願」で受験料をみすみす無駄にすることも少なくなりました。よって、1回目が終わった後にどの学校を受けるかを決めて、それから出願することも可能です。

しかし、「優遇措置」を設ける学校のほとんどは、複数回を同時に出願することが条件となっています。
その場合、まとめて受験料を払うことになるため、2回目以降の受験料の割引きを行っている学校もあります。

また、「優遇措置」のための出願条件は学校ごとに異なり、細かく指定されています。必ず入試説明会などで学校に確認した上で出願するようにしましょう。

取材協力:株式会社声の教育社

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