新しい学習指導要領とは
学習指導要領とは、全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省が学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準としているものです。社会や時代の変化に対応するため、約10年ごとに見直され改訂されてきました。幼稚園から高等学校まで、全国の学校がこの内容をもとに授業を行っています。
新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」を実現するため、以下の3つの柱を示しています。
- 知識および技能の習得
- 思考力、判断力、表現力
- 学びに向かう力、人間性の育成
小学校では2020年、中学校では2年間の移行期間を経て、2021年4月から新学習指導要領に基づいた授業が実施されました。そして、新学習指導要領での学びを終える現在中学3年生が進学する2022年に、高等学校においても新しいカリキュラムが始まります。
高校でカリキュラムはどのように変わる?
「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」に変わる
新学習指導要領では、「主体的・対話的に深い学び(アクティブ・ラーニング)」を実現するため、高等学校においても、小中学校と同じように「総合的な学習の時間」がありました。その授業が2022年からは、「総合的な探究の時間」へと変わり必履修科目となります。
どのように変わるかというと、文部科学省の「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」によると、「総合的な学習の時間は、課題を解決することで自己の生き方を考えていく学びであるのに対して、総合的な探究の時間は、自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していくような学びを展開していく」とあります。
つまり、「自己の在り方生き方」をベースに、より自分らしく生きるため、自ら課題を発見し、解決していく資質や能力を身につけるための時間に変わるのです。
新設・再編される教科・科目の特徴
続いて、「総合的な探究の時間」の方針に基づき、科目においても新設・再編がされます。代表的なものを見ていきましょう。
地理歴史科における新設「歴史総合」「地理総合」
現行課程「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」が、新たに領土や国際協力、防災を学習する「地理総合」、日本と世界の近現代史を扱う「歴史総合」が新設され、必履修科目となります。
選択科目として「歴史総合」「日本史探究」「世界史探究」が新設されます。
公民科で「公共」の新設
必履修科目として新たに「公共」が新設されました。
選挙年齢が18歳以上と引き下げられ、2022年には成年年齢が18歳となります。こうした背景も踏まえ、政治参加、選挙について、また労働問題、消費者教育、SDGsについて学んでいく科目となります。
国語科における科目再編
必履修科目では、現行課程の「国語総合」が「現代の国語」「言語文化」に分けられました。
選択科目においては、現行の「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」が、「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」になります。
このうち、「現代の国語」「論理国語」「国語表現」は実社会に生きるために必要な国語の能力を身につけることを目的に新設されたものです。
外国語は発信力を強化
現行で必修「コミュニケーション英語Ⅰ」が、新学習指導要領においては「英語コミュニケーションⅠ」に変更となります。
外国語は小中高一貫して、「聞く」・「読む」・「話す(やり取り)」・「話す(発表)」・「書く」の4技能5領域を強化する方針です。
これらの技能をもとにディベートやディスカッションを通して、さらに発信力を高める「論理・表現」の科目も設置されます。
「情報」はプログラミングを扱う「情報Ⅰ」が必修に
先行して施行されている小学校の学習指導要領では、プログラミングが必修となりました。中学校でもプログラミングや情報セキュリティについて学習していますが、高等学校でもプログラミングを扱うようになります。
現行の「情報」では、情報が世の中に与える影響を考える「社会と情報」を教える学校が8割となっており、プログラミングを教える「情報の科学」2割程度でした。このためより高度なIT人材を育成することを目的に、2科目を一つにし「情報Ⅰ」として必修化とされます。
共通科目「理数科」の新設
「理数探究基礎」および「理数探究」で編成される科目です。
数学的な見方・考え方、理科的な見方・考え方を組み合わせて課題を解決するために必要な、基本的な資質・能力を育成することを目的としています。
2025年大学入試は新課程に対応する試験に
上述の流れを受けて、大学入試共通テストは2025年に、現行の国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語の6教科30科目から、情報を加えた7教科21科目に再編されます。
情報の追加に対し、国立大学協会では、国立大学の受験生に対し、情報を課すかどうかは、11月の方針決定を見送り、2022年の年明け以降になる見通しです。
そのほか各大学においては、2022年度中に、大学入学共通テストに利用する教科・科目を公表する予定です。
知識偏重から考える力の醸成へ、親世代の頃とは大きく変わっていく高等学校での学び。子どもたちがどのようなことを学んでいくのか注目してみてください。
■参照元
学習指導要領「生きる力」(文部科学省)
【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説(文部科学省)