中学受験の「偏差値50」は決して低くない!偏差値の正しい見方・活用の仕方とは?

中学受験においても、偏差値を目安に受験校を選び、受験生の実力を計ります。しかし、模試によって偏差値が異なるため、どの模試を参照したらよいかと悩まれる保護者もいます。
また、偏差値の低さを気にして受験校選びを迷う保護者もいるようです。
そこで、中学受験における偏差値の正しい見方や判断の仕方、偏差値を正しく活用して学力を上げる方法をまとめました。

中学受験における「偏差値50」はどのくらいのレベル?

せっかく中学受験をするのに、偏差値50の学校へ行くのなら公立中学へ行ったほうがよいのでは…と考える保護者も少なくありません。大変な努力をして臨む中学受験。だからこそ偏差値50の“平均レベル”よりも高い学校を目指したいという想いがあるのでしょう。
その理由は、高校受験や大学受験における偏差値50をイメージしているからです。しかし、中学受験における偏差値50は、決して平均レベルではないのです。

中学受験における「偏差値50」はどのくらいのレベル?
偏差値とは、平均からどのくらい離れているかを数値化し、模試やテストを受けた集団の中での位置を測ったもの。たとえば1000人中500位であれば偏差値50となります。

中学受験で私立中高一貫校に進学する割合は首都圏で4人に1人と言われています。そのほとんどの受験生が塾に通い、同じような勉強をして受験します。したがって、学力の高い層だけで母集団が構成されているのが中学受験です。

図のように「偏差値50(1000人中500位)」のお子さまも、小学校のクラスでは学力上位(平均より上)ということもよくあります。一方、高校受験は母集団が大きく、さまざまな学力の受験生がいるため学力の差が生じやすいことから、概ね偏差値50は“平均レベル”と言えるかもしれません。
つまり、中学受験における偏差値50は、高校受験や大学受験と比較すると高い水準にあるのです。

模試によって偏差値が異なるのはなぜ? どの模試、いつの値を参考にしたらいい?

「偏差値50の学校」といっても模試によって異なる

では、中学受験での偏差値50とはどういったイメージになるのか、具体的に首都圏の主要模試が出している偏差値を見ていきましょう。

中学受験生向けの大規模な模試は、首都圏ではSAPIX、日能研、四谷大塚、首都圏模試センターが主催しています。最も受験者数が多いのは四谷大塚の模試です。通っている塾の模試のほかに、四谷大塚の模試を受ける受験生も多いでしょう。すると、同じ学校でも模試によって偏差値が異なることに気がつきます。

2022年2月1日午前入試の四谷大塚、日能研、首都圏模試の80%偏差値(各塾での追跡データから算出した、合格の可能性が80%の場合の偏差値)の例を見てみましょう。

男子校:高輪中学高等学校(2月1日午前/A日程入試)

主催 四谷大塚 日能研 首都圏模試
偏差値 52 51 64

女子校:富士見中学校高等学校(2月1日午前/第1回入試)

主催 四谷大塚 日能研 首都圏模試
偏差値 48 50 61

共学校:かえつ有明中・高等学校(男子/2月1日午前/2科4科入試)

主催 四谷大塚 日能研 首都圏模試
偏差値 46 48 59

共学校:かえつ有明中・高等学校(女子/2月1日午前/2科4科入試)

主催 四谷大塚 日能研 首都圏模試
偏差値 47 48 60

各模試掲載の偏差値をもとにインターエデュにて作成

模試によって、偏差値が異なることがわかります。また共学校においては男子と女子でも偏差値が異なっています。その理由は、中学受験と高校受験における違いと同様、“集団の違い”です。

合格者が多い塾が主催する模試の偏差値を参考にする

では、どの模試の偏差値を参考にしたらよいのでしょうか。
模試の偏差値は、主催する塾が過去の模試、入試結果も参照し数値化しています。過去において、お子さまが志望する学校への受験生が多い模試であれば、ライバルたちの中での位置がわかります。志望校への合格者が多い塾の主催する模試を受けて、その結果を参考にしましょう。また、同じ模試を受け続けることで、集団の中での位置を観測することができます。

6年生秋以降の模試を参考にする

6年生秋以降の模試を参考にする

しかし、模試の結果が良かったり、悪かったりと変動が激しく、わが子の「持ち偏差値」がわからないというご家庭も多いようです。

中学受験における学力には、早くから目的をもって勉強している子と、受験勉強に消極的だった子の間にある「意欲の差」や、精神的な「成長の差」も影響します。
そういった「差」が縮まり始めるのが、6年生の秋以降です。5年生や6年生春の模試で結果が良くても、ライバルの追い上げで判定が厳しい結果となるケースや、反対に手が届かなかった学校も合格圏内に入ってくる可能性もあります。

特に男子の場合、女子よりも精神的に幼いため模試では低迷していても、入試間近の最後になってぐんと伸びるといったことも中学受験ではよく見られます。

したがって、参考にする模試偏差値は6年生の9月・10月・11月のものがよいでしょう。

偏差値を上げて、志望校に合格するにはどうしたら?

実は偏差値を上げることが重要ではない

「学力を上げる」と「偏差値を上げる」を同じ意味で捉えている方もいるかもしれません。
しかし、偏差値は集団の中での位置を示したものなので、集団全体の学力の上昇幅と比べて、わが子が得点できなければ、いくら学力が上がっていたとしても、偏差値として上げることはできません。

よって、偏差値をお子さまの学力の絶対的指標としてしまうと、お子さまの自信を失いかねません。大事なのは、偏差値はあくまで集団での位置を把握するための指標であると捉えることです。お子さまができるようになったことに目を向け、志望校へ合格する学力が身についているかを確認しましょう。

志望校に合格するには偏差値ではなく「過去問で得点すること」

志望校に合格するには偏差値ではなく「過去問で得点すること」

模試の偏差値が、志望校の合格率80%の偏差値に届いていれば、たしかに合格圏内ではあります。しかし、大事なのは入試問題との相性です。模試の偏差値が志望校の合格率80%の偏差値に届かなくても、過去問で合格点をとれれば、合格する可能性は高くなります。反対に、合格率80%の偏差値に届いていても、過去問で得点できなければ合格が難しくなる可能性もあります。
過去問題集には、過去の入試の合格最低点や平均点の表が掲載されています。その点数を参考に、正答率が高い問題から確実に得点できるように対策を行いましょう。

偏差値がさほど高くない学校でも、倍率が高ければ受かりにくくなる

2022年の首都圏中学受験者数は、2015年以降過去最高となりました。特に東京都内での中学受験熱が高まる中で裾野が広がり、中学受験家庭はさまざまな視点から学校選びを行うようになりました。その結果、以前は比較的入りやすかった学校に志願者が集まり、人気校はさらに人気を集めるなど、実質倍率(合格者数÷受験者数)が跳ね上がる学校が出てきました。

そういった学校は、偏差値帯からすると実力相応であった学校も、合格を得ることが難しくなります。模試主催者が公表している模試での学校別志願者数や、過去の入試の受験者数や倍率も参考にしましょう。

偏差値の高低にこだわらないことも大切

偏差値が高い学校に入学できれば、学校生活や大学受験において安心と考え、偏差値にこだわって志望校・併願校選びをするご家庭もあるかもしれません。

しかし、合格をもらった学校が偏差値は高いけれどお子さまの実力相当以上で、入学後は常に成績が下の方になってしまった場合、お子さまの気持ちはどうなるでしょうか。
反対に、合格をもらった学校の偏差値が低いと、保護者が下に見て残念がっていたら、お子さまは学校に親近感を持てなくなり、中学受験自体を後悔することにもなりかねません。

どの学校へ入学しても、お子さまがよいところに受かったのだと思えるように、導いてあげることが大切です。偏差値はあくまでその補助的なものだと考えて、役立てていきましょう。

■参照元
中学受験塾の四谷大塚 公式サイト四谷大塚ドットコム
R4一覧 【結果】 | 日能研入試情報2022年入試による結果R4偏差値一覧
2022中学入試 入試結果偏差値一覧 | 首都圏模試センター

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