【大学受験】東京大学に推薦合格したのはどのような生徒?大学生活は?

東京大学の入試には「学校推薦型選抜」といわれる推薦入試があります。2023年の合格発表は一般選抜よりも一足早い2月14日。例年どのような生徒が合格し、入学後はどのような学生生活を送っているのでしょうか? 2022年に教育学部へ学校推薦型選抜で合格し、文科三類に在学中の1年生、Iさん(東京・中村高等学校出身)に推薦入試を受けた経緯や、入試対策、現在の大学生活についてうかがいました。

「学校推薦型選抜」に合格するにはどのような準備が必要?

論文は自分の経験を等身大で言語化

「学校推薦型選抜」に合格するにはどのような準備が必要?

インターエデュ(以下、エデュ):東京大学教育学部を受験しようと思ったのはなぜですか?

Iさん:幼い頃から東大に憧れがありましたが、受験を決めたのは高校3年の春頃です。進学先についていろいろと調べた結果、最適な学びの環境がある東大が志望校になりました。東大の教育学部には、学校教育だけではなく、地域の教育、老後の教育、家庭内の教育など「教育」について幅広く学べるカリキュラムがあることが魅力的だったからです。

エデュ:一般選抜ではなく、学校推薦型選抜で受験した理由は?

Iさん:一般選抜でも東大を受験するつもりでしたが、学校推薦型選抜には論文や面接があり、海外留学を通して感じたことを大学の先生方に知ってもらえる良い機会になると考えました。高校では留学制度のある国際科に通っていたので、私も含め同級生の多くがアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドなどへ渡航しています。ところが、世界的な新型コロナの流行によって、海外に出た後に学校が休学になり、思い描いていたような留学生活を過ごすことはできませんでした。そのときのモヤモヤした気持ちを、同級生たちのためにも言語化しておきたいという気持ちで論文を書き上げました。

11月の書類選考に向けて論文作成から準備を開始

エデュ:出願準備はいつ頃からどのように取り組みましたか?

Iさん:11月の1次選考の書類審査に向けて、まずは留学中に感じたことを同級生にアンケートしました。その内容をもとに15,000文字程度の論文を作成。高校の先生に添削していただき、提出までに10回は書き直したと思います。書類審査に合格すると、12月に2次選考の面接がありました。面接ではポスター発表の後に質疑応答があるため、どのような質問にもすぐに答えられるよう、答えの引き出しをたくさん用意しておくようにしました。

エデュ:2次選考の面接はいかがでしたか?

Iさん:面接会場に入ると、6人の先生方がずらっと並んで座っていらっしゃいました。ポスター発表の最中、「うんうん」とうなずいて聞いてくださる先生もいましたが、表情が全く変わらない先生もいて、プルプル震えるくらい緊張したことを覚えています。

エデュ:一般選抜との両立は大変でしたか?

Iさん:推薦入試の合否にも大学入学共通テストの結果が関わってくるため、一般選抜と同じ5教科8科目の勉強が必要です。また、推薦の合格発表が一般選抜の10日前なので、両方の入試を受ける場合は準備することが多くなる分、大変な面はあると思います

推薦入学後の大学生活は?

「進振り」を気にせず、好きな勉強に打ち込める

エデュ:東京大学に入学して良かったと感じていることを教えてください。

Iさん:素敵で面白い同級生たちに出会えたことです。話すたびに新しい知識を得たり刺激をもらったりしています。それに、東大のようにしっかりとしたクラス制のある大学は珍しいのではないでしょうか。私のクラスでは1~2か月に一度のペースで、ご飯会を開いています。また、私は複数人で過ごすことも好きですが、同時に一人でいることも好きなので、一人で行動していても浮かない東大の雰囲気や環境も気に入っています。一人で外のベンチでご飯を食べたり図書館で課題に取り組んだりすることも、私にとって大切なリフレッシュの時間になっています。

エデュ:現在、力を入れて取り組んでいることはありますか?

Iさん:ソウル大学との交流サークルに入っており、間もなく韓国へ渡航するため、期末試験の勉強や渡航準備で忙しく過ごしています。2年生になると必修の授業がなくなって時間に少し余裕ができるので、今私が関心を持っているインクルーシブ教育や絵本研究についてもっと時間をかけて取り組めたらいいなと思っています。直近の目標としてはTOPIK(韓国語能力試験)やHSK(中国語検定)に合格したいです。

エデュ:推薦で入学したメリット・デメリットはありますか?

Iさん:メリットは点数を気にしすぎずに授業を取れることだと思います。推薦生は進学する学部が決まっていますが、一般生は1年次から2年次前期の成績によって学部が決まる進学選択制度(進振り)があります。したがって、興味があったとしても、自分の得意でない科目や点数を取りにくい授業をあえて選ばない人もいるようです。

その点私は、自分が得意でない理系の科目でも興味があるから取ってみようといったように、時間割の組み方の幅が広がったと思います。あとは推薦生のコミュニティが結構強いので、素晴らしい研究やプロジェクトをしている同学年の学生や先輩とつながりやすいところもうれしいです。デメリットは今のところ思いつきません。学内で推薦生ですというと、期待されるレベルが高いことにたまに困ってしまうくらいでしょうか。

大事なのは「自分の関心の芽を潰さずに丁寧に育てること」

エデュ:推薦合格を目指す後輩へのアドバイスをお願いします。

Iさん:私も何が自分の合格の要因かいまだに分からないので確かなことは言えません。ただ、いろいろなことにアンテナを張って、そこから生まれた自分の関心の芽を潰さずに丁寧に育てられる人が周りの推薦生には多いのかなと思います。これは私も普段の生活で大切にしていることの一つです。受験の結果はもちろん大切ですが、自分自身のことや自分の関心のあることをもう一度見つめ直して言葉にする、それを東大の先生方に見てもらえる、そのこと自体に価値があるのではないかなと考えています。受験生のときはやることも多かったので大変だと感じていましたが、今思い返してみるととても刺激的な時間を過ごせたなと思います。

学校推薦型選抜とは?

東京大学では、学部教育の総合的改革の一環として、多様な学生構成の実現と学部教育の更なる活性化を目指し、2016年度入学者選抜から日本の高等学校等の生徒を対象に学校推薦型選抜(旧推薦入試)を実施。提出書類・資料により第1次選考を行い、第1次選考合格者に対して学部ごとに個別面接、プレゼンテーション、小論文等が実施されます。合否は1・2次選考、および大学入学共通テストの成績を総合的に評価したうえで決定されます。対象となるのは、全10学部、定員は各5~30名の合計100名程度です。
2022年度は240人が出願し、1次選考に合格したのは178人。その後2次選考が行われ、88人が合格しました。

■参照元
学校推薦型選抜(旧推薦入試)志願者数・合格者数・過去の試験課題 | 東京大学

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