「情報Ⅰ」は国立大学の合否を分ける
新試験科目「情報Ⅰ」が登場した経緯は次のようになっています。全国の高校で2022年4月から新科目「情報Ⅰ」が必修となりました。この科目で育成する「情報技術を適切かつ効果的に活用する力」は、これから国語や数学の学力と同様に大学入試で評価の対象となる……そうした文科省の見立てに沿って、大学入学共通テストの新たな試験科目となることが決定されました。
お子さまに「国立大学へ進学してほしい」とお考えのご家庭にとっては非常に大きなニュースでしょう。大学入学共通テストと各大学の個別試験を合算して合否が判定されるためです。国立大学の一部で、「情報には配点しない」としている大学もあり、また二次試験への配点は各大学の裁量に任される点にも留意すべきではありますが、進路実現を大きく左右することに間違いはありません。
速読力も必要?試作問題をチェックしてみて
大学入学共通テストの「情報Ⅰ」は、その試作問題が公表されています。コンピューターを使用するのではなく紙ベースのテストとなることが予定されており、試験時間は60分です。第1~4問で構成され、解答する問題数は40問程度です。
最初に気づく特徴が問題文の長さ。文中で解答の前提条件が示されているのですが、なかなかの分量があります。速く読むことと正確に理解することが求められるでしょう。
第1問の問1はインターネットを利用するときの注意点を問うもの。
「相手からのメッセージにはどんなときでも早く返信しなければいけない」→×
「一般によく知られているアニメのキャラクターの画像をSNSのプロフィール画像に許可なく掲載することは、著作権の侵害にあたる」→〇
というように選択肢の正誤を判断します。
その後の問題は、コンピューターのシステムの基本となる論理回路、二次元コードの規則性、文化祭の模擬店の待ち状況を表計算ソフトウェアで分析して解消する過程、釣銭の少ないお金の支払い方をアルゴリズムとして表現する方法など、高度な内容となっていきます。
求められるのは「プログラミング的思考」
全問を通して、現実に広く使用されているアプリケーションやプログラミング言語が登場することはありませんでした。つまりICTへの慣れが問われるというわけではなく、文科省が定義する「プログラミング的思考」が要求されていると見ることができるでしょう。
その「プログラミング的思考」とは、どのような物事の考え方を指すのでしょうか。一例を挙げるとすると、何らかのプログラムを自分で組み立てる場合に、システムに意図した動作をさせるための最適な命令を導き出す……そうしたときに発揮されるものが、この「プログラミング的思考」とされています。
現在、「プログラミング的思考」の力を伸ばすためにさまざまな手立てが考えられているようです。その代表はもちろんプログラミング教育。公立校に先駆けて、ICT環境を整備してきた私立校は、プログラミング教育にも力を入れているケースが目立ちます。これから中学校・高校を選ぶご家庭も大学入試が変わることを見据えて、ICT環境を基準に進学先を探してみるのも良いでしょう。
新試験科目「情報Ⅰ」への対応力をどう見るか
一方で、大学入学共通テストの「情報Ⅰ」への対応力は、ICT環境だけでは測れない部分もあります。そもそも紙ベースのテストということに加え、受験対策として取り組むべきことはこれから徐々に明確になっていくからです。
そのため、私立校の対応力を見るときの注目すべきポイントは、大学入試改革に対応してきた実績だと言えるでしょう。近年の大学入試は、過去の知識偏重型の出題から、思考力・表現力・判断力を測る形式へと大きく変化してきました。
今年3月に高校を卒業する子どもたちは、2回目の大学入学共通テストを受けた学年に当たります。今回の大学入試の実績が良い学校であれば、2025年度入試での変更も乗り越えられるのではないかと期待できるのではないでしょうか。
大学入学共通テストの結果が反映される国立大学の合格者数と、その学校の卒業生の人数を照らし合わせることで、進路実現を支える力がどれほどあるかが見えてくるでしょう。
インターエデュでは3月上旬から、スペシャルサイトにて大学合格者速報企画「東大・京大・難関大学合格者ランキング」を実施します。全国の公立・私立高校の実績が明らかとなります。こちらの結果も参考に、将来を見据えた志望校選びをしていただきたいです。
■参照元
・大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」
・文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」
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