【大学受験】東大人気に陰りあり?共通テスト・新学習指導要領の影響は?

男女御三家、筑駒をはじめとする注目校が、昨年とは異なる傾向を見せた2023年度の大学合格実績。公立校・私立校を問わず、東大合格者数の減少が目立った結果となりました。そこで、有名進学校の東大合格者数増減、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)導入後の変遷、新高等学校学習指導要領(以下、新学習指導要領)の導入などに着目しながら大学入試そのものを考察していきます。

東大合格実績の乱高下が続く背景を探る

医学部医学科を除けば国内最難関である東大入試は、毎年の大学受験を象徴する話題として注目を浴びています。そこで、有名進学校として知られる10校における過去3年間の合格者数を例にして、近年の東大入試にまつわる不思議について掘り下げていきます。

有名進学校における過去3年間の東大合格者数

有名進学校における過去3年間の東大合格者数

上記の表でピックアップした10校のうち、半数で2022年度入試の合格者数が大きく変動したことが分かります。とりわけ開成の数値には違和感を覚えるほどで、合格者数193名のうち56名(約29%)が既卒生という特殊なケースとなりました。既卒生が翌年に返り咲くという同一条件であれば、麻布豊島岡といった進学校もそうあるべきですが、2022年度は合格者数を大きく減らしています。「狭き門だった2021年度の受験生が翌年の合格に繰り越した」とは単純に説明できない、大学受験全体に共通する地殻変動が始まっていることを予感させます。(※1)

既に影響が叫ばれている少子化だけでなく、進路の多様化や現役志向の高まり、さらには共通テストを敬遠する動きなどを考慮すると、東大入試は大きな変化を迎える時期に差しかかっているのではないでしょうか。

※1 インターエデュ・ドットコム「東大・京大・難関大学合格者ランキング」参照

共通テスト導入で問われる新学習指導要領への順応力

2021年度1月より旧センター試験に代わって共通テストが導入されました。2022年度はニュースで数学Iの難化を知った方も多いかと思われます。私学では数年前から全校ぐるみで備えていた英語民間試験や記述式問題の導入が断念されたという経緯から、若干ネガティブなイメージが先行した共通テストですが、2022年度から導入された新学習指導要領の学習内容にもとづいて作問される「2025年度以降の共通テスト」にも不安定な要素が見られるようです。

導入されたばかりの新学習指導要領の内容が共通テストにどの程度反映されるのかといった点はもちろんですが、各教科に新しい変更点が加わります。国語における作問方針は「資料の要旨を適切に解釈し、レポートの内容や構成を多角的に捉え直す」ものとあり、記述式問題の導入を予感させます。数学I、数学I・数学A、数学II、数学II・数学Bにおける作問方針は「選択問題を含まず、教科書では扱っていない数学の定理を既知の知識を活用して導く」ものだそうです。文・理を問わず合否のポイントになる英語の作問方針は「将来的にリスニングを1回読みに統一する可能性」だけでなく、リーディングとリスニングは均等に配点されるものの、各大学独自の入学者選抜では「どの技能に比重を置くかは大学側が判断できる」とあります。出題傾向の変更にとどまらず、新要素が取り入れられることによって、従来の入試対策が一新される可能性があります。(※2・※3)

※2 大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等」参照
※3 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テストの出題教科・科目の問題作成方針に関する検討の方向性(PDF)」参照