【中学受験2022】中学受験を最後までやり遂げるために。「安全校」の考え方【矢野耕平先生】

2月1日以降、最後まで受験を諦めずにやり遂げるためには「安全校」を組み込み、合格をもらうことが重要と中学受験指導塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平先生は言います。なぜでしょうか。

できるだけ早期のうちに合格をもらっておく

できるだけ早期のうちに合格をもらっておく

東京都・神奈川県の学校を受験するご家庭は、2月1日から5日までに4、5校を受ける予定にしていると思います。その日程の中で、いつにどの学校を受験するかを決めていくわけですが、早めに合格をもらえるように日程を組んでいくことが重要になります。
2月1日午前、午後、2月2日の午前と不合格が続いてしまうと、受験生も保護者も心が折れてしまうからです。

たとえ志望順位が低い学校だとしても、合格をもらったという嬉しさや自信は入試を最後までやり遂げるためのモチベーションになります。そのためには、1月に受ける学校を含め必ず「安全校」を日程に組み込みましょう。

安全校の考え方・決め方

9月以降の主催が同じ模試、3・4回分の平均偏差値をお子さまの「持ち偏差値」とします。そして、合格の可能性80%の偏差値表を見て、持ち偏差値からマイナス4以下の学校を安全校とします。

さらに、出願者数の動向も見ながら、安全校の難度の変動も予測しておきましょう。
2021年の中学入試では、たとえば山脇学園や実践女子学園、獨協などが2020年と比べて大幅に受験者数を増やしました。安全校と思っていた学校も、受験者数増加により倍率が上がり、安全校でなくなる可能性もあります。

出願者数の動向は、Web出願が開始されてから公式サイトで公表する学校もありますし、塾のサイト等で見ることができます。またお通いの塾においても、そういった情報を持っていますので、2021年の入試と比べて出願者数が増えているかどうかを都度確認し、動向を追うようにしましょう。

模試の結果や出願者数の情報から、安全校としていた学校が難化する可能性があったらワンランク下の学校を受けることも考えます。

万が一、2月3日まで不合格が続いてしまったら

不合格が続いてしまうと、受験生保護者ともに大変つらい状況となり、親子で感情のぶつかり合いが起きて、互いのメンタルがホロボロになってしまうこともあります。最悪の状況を避けるために、もし不合格が続いてしまったら塾を思いっきり頼ってください。お子さんは、先生の胸を借りて泣いて感情をぶつけてもよいです。塾の先生にしっかり励ましてもらいましょう。

お子さんは塾の先生とともに前を向こうと懸命になっていますから、保護者はその間に、2月4日、5日と合格をもらえるような学校を調べて、最悪の状況を回避するシミュレーションを重ねながら、力を振り絞ってほしいと思います。

必ず合格をもらう中学受験にする意味

中学受験をするなら、「このレベルでないと行かせる意味がない」「このレベル以下の学校は受けさせない」とお考えになる保護者も少なからずいらっしゃいます。

しかし、お子さんは友だちと遊ぶことを我慢し、中学受験にたくさんの時間を割いて勉強してきました。お子さんがこれまで一生懸命やってきたことに対し、頑張った証は「合格」しかありません。第一志望に受からなかったらといって、高校受験でリベンジすればよいというのは大人側の理屈に過ぎません。最後の最後で中学受験からドロップアウトするのはいかがなものでしょうか。
お子さんの人間形成のための大事な時間を割いてまで、何年間も受験勉強に費やすのは適切ではないと考えます。もちろん、これは受験勉強の意義を否定するものでは全くありません。

保護者が思っている以上に、子どもたちは受かった学校でたくましく、大きく成長するものです。合格をもらえた学校がお子さんにとっての一番の学校です。保護者はそのことの意味を胸にしっかりと刻んで、中学受験を最後までやり遂げてほしいと思います。

矢野 耕平(やの こうへい)先生

矢野 耕平(やの こうへい)先生

中学受験指導スタジオキャンパス代表、国語専科・博耕房代表。
大手進学塾で13年間勤務の後、2007年にスタジオキャンパスを設立し、代表に。自らも塾講師として、これまで28年にわたり中学受験指導を行っている。
主な著書に『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』 (ともに文春新書)、『旧名門校VS.新名門校』(SB新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)など。最新刊は『令和の中学受験 保護者のための参考書』 (講談社+α新書)。