【中学受験2023】合格・不合格もすべてが経験に 〜1月校の受け方・合否の捉え方〜繁田 和貴先生

2月の本命校入試を前に、1月校入試の学校を受験するご家庭も多いと思います。1月校入試ではどのような点をポイントに対策すれば良いのでしょうか。
個別指導塾テスティー塾長の繁田和貴先生に、これまで生徒を指導してきたご経験をもとに1月校入試に向けての心構えや、親として心がけておきたいポイントをうかがいました。

練習とは思わず「本番」と思って受験を

1月校を受けておいたほうが良いとされる理由は大きく2つあります。

1.“本番”を経験する

練習とは思わず「本番」と思って受験を

1月校を受けるのは、2月の本番前に受験独特の「本番ならではの緊張感を経験できる」ということに価値があります。

1月校入試を“練習校”という位置づけで考えるご家庭も多いことでしょう。
しかし、本番を経験するということに意義があるので、練習という気持ちで受けるのはNGです。ちゃんと「本番なんだ」という気持ちを持って本命校のつもりで受けないと、肝心の2月1日入試本番で緊張してしまうことになります。

スポーツ選手でもそうですが、本番に強い人間は普段から本番のつもりで本気でやっているもので、練習との差がないから強いのです。また練習でできないことは本番でもできません。
そのため、保護者のほうも「今日は練習なんだから気軽にね」という声かけは絶対にやめてください。
一番行きたい学校の入試のときに落ち着いて受けられるようになるためには、1月校から本気で受けることが肝心です。

では、1月校を良いコンディションで受けるためにはどうしたらよいでしょう?その秘訣は、普段の過去問演習の段階から本番同様のマインドセットで取り組むことです。
直前期にはそっくり模試を受けることもあると思いますが、それも本番のつもりでやりましょう。
また家で過去問演習をする場合は、それまで1教科ずつやっていたことを4教科まとめて解く機会も作ってください。できれば本番と同じ時間にスタートし、解く前には目をつぶって、入試当日の朝のことを想像してみましょう。
たとえば、朝起きてご飯を食べた。家の玄関を出て、電車に乗った。最寄駅に着いて、本命の学校までの道を歩き、教室の中に入ると自分と同じ受験生がいる。試験官が来てテスト用紙が配られて、さあやるぞ! と、一連の流れで想像します。教室の様子は普段模試を受けていれば想像できると思います。試験が始まるまでの状況を簡単にイメージトレーニングしておくと、1月校受験でも気負わず受けられるようになるでしょう。
実際やってみると「やっぱり本番は違った」と思うでしょうが、そうした経験をすることで、2月の本番にベストな状態で臨めると思います。

2.合格することで頑張った“勲章”を得る

1月校で合格が得られると、これまで頑張ったことの成果が見え、気持ちも上向きになるものです。
そのためには合格見込が高い学校もぜひ受けてください。1月は埼玉の浦和明の星や栄東、千葉の渋谷教育学園幕張などの難関校だけでなく、合格できそうな安全校も候補にいれておくことが大切です。精神的に良い状態で2月の本命校を受けるためにも、全落ちにならないようなプランを組んでください。

不合格になっても親は絶対落ち込まない

親の気持ちはそのまま子どもに影響を与えてしまうので要注意!

たとえ本命ではない学校でも「合格」は純粋にうれしいもの。これまでやってきたことが力になっている、入試に役立つ力がついていると感じることができるでしょう。

しかし、不合格になってしまうこともあり得ます。たとえ本命ではなくても、その結果に落ち込むこともあるでしょう。
そうなってしまった場合は、こんな気持ちで受け止めてください。
「今この気持ちを経験しておいて良かった。本番までには修正しよう」
たとえ望んだ結果ではなくても、前向きな心がけをすることが大切なのです。

また子どもだけではなく、親も一緒に落ち込んでしまうこともよくあります。そうならないためには「私は絶対落ち込まない」と心に決めてください。
誰よりも悔しい思いをしているのは受験したお子さんのほうです。大丈夫と思って受験しても、試験当日に緊張してしまい力を発揮できなかった、時間配分がうまくいかなかったなどいろいろ考えられるので、立て直すことをまず考えるようにしましょう。

1月校で不合格になった場合の立て直し方

うまくいかなかったことを引きずらないようにするには、まず親が引きずらないことです。
子どもがリズムを崩してしまう原因は、親の焦りや不安な気持ちが伝染してしまうからなのです。親がドンと構えていたらやがて子どもは復活していきます。

またもう一つ重要なこととして、安全校は合格しても実力相応校が不合格になるということがあります。その場合も「受かって当たり前の学校しか受からなかった」とか、不合格になった学校の評価を下げるような発言も絶対しないようにしてください。子どもが頑張って挑んだ結果なのです。

そして本番に向けて、100%の力を発揮することはなかなか難しいことですが、せめて80%の力が発揮できるよう、不振に陥ってしまった原因が何かをしっかり考え、そこに向けた対策をしましょう。親だけで分からない場合は、塾の先生に相談してください。

仮に1月校で不合格になったからといって、受けないほうが良かったということはありません。しかしそこで親が落ち込むことにより、そこから悪い連鎖が始まってしまうケースがあるということはぜひ理解しておいていただきたいと思います。
合格も不合格もすべてが経験になります。そして子どもを立ち直らせるのは親の力です。
1月校の経験を活かし、本命校受験に力を発揮できるよう頑張ってください。

繁田 和貴(はんだ かずたか)先生

個別指導塾テスティー株式会社 代表 繁田和貴 先生

開成中・高、東大経済学部卒。小学生時代はSAPIXで3年連続1位の成績を獲得し、開成、筑駒、灘、慶應中等部に合格。開成時代は独自の勉強法で学年トップの成績を取るも、ヤンチャな遊びが高じて退学寸前に。学年一の有名人となる。東大進学後に目標を見失い回り道をした反省から「受験勉強で終わらない、一生モノの人間力を」を理念に個別指導塾テスティーを創業。生徒のモチベーションを高め、勉強法を次々改善していく高い指導力と人間的魅力で、御三家をはじめとする難関校に多数の逆転合格者を輩出、生徒・保護者から厚い信頼を得ている。 コロナ禍の現在はオンライン指導にも注力しており、著書・メディア出演も多数。通称「開成番長」。