母親の不安と心配を払拭する本
男の子を持つお母さまにインタビューすると、多くの人が「男子は手がかかる」と言います。小さい頃から、手に持ったものを振り回す、外へ連れ出すと唐突に走り出す、注意散漫でケガをしたりする。注意をしても、どこ吹く風です。全員が全員、そうだとはいえませんが、男の子には、多分にこうした傾向があります。
小学校に入学して一安心かといえば、今度は学校ならではの問題行動に悩まされることもあります。授業中、じっと先生の話を聞いていられない、親が言うまで宿題をしない、忘れ物が多い、調子に乗ってバカなことをして先生を困らせる、などなど。わが子が小学校でこんな行動をしていると知らされたら、お母さまが心配になっても当然でしょう。
本書の著者の松永暢史(まつながひろふみ)さんは、受験国語指導のプロ。現在、V-net教育相談事務所を主宰すると同時に、教育環境設定コンサルタントや学習アドバイザーとして活躍されていますが、実は、子ども時代は問題行動のばかりする「ウルトラガキンチョ」だったとか。今は受験のプロとして、子どもたちの指導やその親の教育相談を受けているのですが、その中で、男の子のお母さまの多くが「うちの子はおかしいの?」と悩みを訴えるようです。
そこで、元祖ウルトラガキンチョとしての経験と、多くの小学生、中学生に接してきた実績を元に、「お母さまたちの不安と心配を取り除く」ために書かれたのが、本書というわけです。
発達障害では? いえいえ、それ、普通です!
本書は、下記のような構成になっています。
第一章 親は謝ってばかり。マイペース男子に悩みが尽きない!
第二章 学校生活をうまく乗り切る方法を覚えましょう
第三章 7歳から男の子はこう育てなさい
第四章 ハマったらとことんやる。それが彼らの勉強スタイル
第五章 やがて来る、ひとり立ちのときのために
第一章で小学生男子の実態、第二章で小学生男子の親としての心構えを解説した後、三章と四章で、男の子の性格を上手に活かした勉強法、それも家庭で誰もが可能な方法を紹介。五章で全体をまとめるという構成です。
本書によれば、男の子の特徴として、「落ち着きがない」「人の話を聞かない」「忘れ物が多い、不注意」「超マイペースでひとつのことに集中しすぎる」といったものがあります。確かに、よく言われている問題行動は、このどれかに当てはまりますよね。
発達障害に関する情報が書籍でもネットでもあふれているせいか、インターネットを見ていると、男の子がこうした行動をとったとき、「うちの子は発達障害ではないか?」と心配する人が増えてきました。著者の松永さんのところでも、発達障害では? という相談が多くなったと言います。中には担任から「お子さんはグレーゾーンですね」「一度発達診断を受けてみては」と言われてしまう親も大勢いるのだとか。
しかし、著者によれば、発達診断を受けても、「実際に発達障害と診断されるのはごく一部」なのだそうです。知識が増えるのはよいことではあるのですが、落ち着かない、忘れ物が多いといった、ちょっと困った行動をとるからといって発達障害を疑うのは、心配のしすぎかもしれません。
著者は言います。
「そもそも発達”障害”という言葉も罪深いものです。(中略)覚えられない、わからない、先のことがわからない。人間は、そんなところだらけではないでしょうか。みんな、自分が健常者であると錯覚しているだけではないでしょうか。」
確かに人の性格や能力には違いがあります。男女の性格や好みも大きく違ったりします。子どもだって、一人ひとり違っていて当たり前だし、子どもの成長の仕方が一人ひとり違っていても、何の不思議もありません。
つまり、著者が言いたいのは、世に問題行動と言われている男子の行いは、「まったくもって普通」だということです。だから、心配のしすぎはダメ。わが子が理解不能な行動を起こしても、「男の子はこんなもんだ」と、どっしり構えて対処すべきという主張には、いちいち納得させられます。