ツボを押さえて気長に見守る
むろん、「男の子はこんなもんだ」といったところで、著者はそういった子を放任しておけばいいと言っているわけではありません。男の子の性格に合わせて、上手にコントロールすべきだとしています。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、いくつか紹介すると…。
まず、前提として、わが子が問題行動を起こして周囲から注意を受けたとき、親はひたすら謝罪することが大切と、著者は言います。過剰なくらい謝ることでちょうどよいそうです。
その上で、たとえば授業中に騒ぐので先生から注意をされたとき。多動・不注意・過集中の傾向のある子は、頭ごなしに叱ってもまったく効果がなく、むしろ、なぜ教室で騒ぐことがいけないことなのかを、理屈できちんと説明する。
何度か注意したところで効き目はありませんが、とにかくここでも、根気よく諭し続けるのが大切。そのうち、本人が気づく瞬間があって、そこから見違えるように成長することもあるのだとか。
宿題についても同じ。宿題をする時間と場所を決めて、「宿題をするまでご飯を出さない」「宿題を済ませるまでは遊びに行かせない」というくらいの覚悟で臨むこと。また、なぜ勉強をしなくちゃいけないのか」と言い逃れをする子には、「勉強しないなら働け」と、バシッと言ってもかまわないそうです。
こうした、基本的な生活習慣に関する指導法から、作文の書かせ方、本を読みたくさせる方法、学校や教師を上手に利用するにはどうしたらいいか、無理のない中学受験に至るまで紹介されています。大勢の「ウルトラガキンチョ」を指導した実績をベースに具体例が紹介されているので、どなたが読んでも、とても参考になると思います。
小学生男子をお持ちのお母さまだけではなく、お父さまにも読んでいただきたい本だと感じました。
『落ち着かない・話を聞けない・マイペースな小学生男子の育て方』
松永暢史 著 すばる舎刊 1,300円+税
忘れ物が多い、先生の話を聞かない、落ち着かない…しばしば学校からも注意され、わが子に小言を言って嫌になる。でも、いくら叱っても子どもはどこ吹く風で、まったく改善の兆しがない。「うちの子はちょっとヘンなの?」「もしかして育て方が悪かった?」と悩んでしまうお母さまも多いことでしょう。 そんな、小学生男子を持つ、悩み多きお母さまの肩の荷を下ろすべく書かれたのが本書。「多動性、不注意傾向、過集中」は、とかく問題行動とされがちですが、むしろそれは、可能性を秘めた大きな才能だ、というのが著者の主張。男の子としては、「まったくもって普通」のことなのです。とはいえ、そのまま放置していては、伸ばせる才能も伸びず、ただの甘ったれのいい加減な人間に育ってしまう心配もあります。 本書では、「多動・不注意」気味の小学生男子を上手にコントロールし、押してもダメなら引いてみな、引いてもダメなら押してみなとばかりに、才能豊かな人間へと育てる手法が、これでもかと紹介されています。まずは「男の子なんてこんなもんだ」と覚悟を決め、本書のノウハウを実践してみてはいかがでしょうか。
松永 暢史(まつなが ひろふみ)さん
「受験のプロ」として音読法、作文法、サイコロ学習法、短期英語学習法などさまざまなメソッドを開発。個人指導歴42年。専門は入試国語、古典。個人授業では国語を担当。中学高校大学受験国語記述を1対1で指導する。 教育作家としても活動しており、『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』(すばる舎)、『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』(主婦の友社)、『女の子は8歳になったら育て方を変えなさい』(大和書房)など、著書多数。 1957年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。現在、V-net教育相談事務所を主宰するほか、教育環境設定コンサルタント、教育アドバイザーとしても活躍。