2学期が始まる9月1日とは…
「過去40年の統計をとると、二学期初日の9月1日は、18歳以下の自殺者が最も多い日だった…」
2015年に内閣府が発表した「自殺対策白書」によって、衝撃の事実が明らかになりました。
当初、この事実について大手メディアは関心を示さなかったのですが、不登校問題に取り組む『不登校新聞』がこの問題を取り上げ文部科学省で記者会見すると、さまざまなメディアで取り上げられるようになりました。
『9月1日 母からのバトン』は、この事実を知った樹木希林さんのメッセージを起点に、娘の内田也哉子さんが不登校経験者やセラピストなどの専門家との対話を通じて、不登校の問題や「命」について、さらには学校や社会で学ぶ意味を考える。その過程を綴った、樹木さん親子の共作ともいえる本です。
生前の樹木さんのインタビュー「難の多い人生は、ありがたい」と、「不登校・登校拒否を考える全国ネットワーク」の発足25周年を記念する講演会でのトークセッションを収録した前半と、内田さんと不登校経験者やセラピスト、有識者との対談を収録した後半の二部構成となっています。
内田さんの対談相手は、『不登校新聞』の編集長や不登校経験者、バースセラピスト、そして日本文学研究者のロバート・キャンベルさん。本書では「学校へ行くのが当たり前」という同調圧力の強さや、「9月1日」問題の深刻さ、さらには、それを常に気にかけていた樹木さんの人間性が鮮明に浮かび上がってきます。
「はじめに」で内田さんは、不登校について母が語った原稿を読んだときのことについて、次のように書いています。
「私はこれを母からのある種のバトンだと理解し、まずは、ほんとうのことをもっと知りたいと思い、やがて、その現状を少しでも誰かと共有できればと願うようになりました」。