社会が変化するスピードがどんどん加速する中、この先どうなっていくのか見極めるのがなかなか難しい状況です。「こうすれば人生安泰」という指針がない中では、将来どんな職業についたらいいのか、どんな人生を送ればいいのか、進路の選択に迷うお子さまもいることでしょう。
今回ご紹介する『スタディサプリ 三賢人の学問探究ノート』は、大学等で研究されている学問の最前線を伝えるとともに、子どもたちに向けて、世の中への興味を広げ、自分らしい進路選択ができるようになるための指南書のような本です。
テレビや雑誌を始めとしたさまざまなメディアでも活躍する9名の“賢人”たちが、どんな子ども時代を送ってきたのか、自身のこれまでを振り返り、紆余曲折ある人生を語っています。
<好き>を追求していくことで自分の道を確立できる、幸せな、満足いく職につながるという糸口を見つけることができるのではないでしょうか。
文系・理系問わず興味を持ったテーマから読み進められる
本書は、『人間を究める』『社会を究める』『生命を究める』3つのタイトルに分かれ、現代哲学、公共哲学、英文学、社会学、自然人類学、生物学、人工知能などを研究している先生たちが登場します。
オーソドックスな学問から、学際的な学問まで、文系・理系を問わず、興味を持ったテーマからアプローチでき、それぞれの学問のさわりを知ることができます。
各タイトルに登場する先生方をご紹介しましょう。
『人間を究める』
・「知能はつくることができるのか?」
東京大学大学院:人工知能 松尾 豊先生
・「ヒトはいつ大人になるのか?」
総合研究大学院大学:行動生態学・自然人類学 長谷川 眞理子先生
・「物語に描かれている「人間」とは?」
京都大学:英文学・イギリス小説 廣野 由美子先生
『社会を究める』
・「世の中の「大前提」は本当にそれでいいのか?」
慶應義塾大学・福井大学:コミュニケーション論 若新 雄純先生
・「生きづらさや違和感をどう言葉で伝えられるか?」
國學院大學:社会学 水無田 気流先生
・「哲学で社会は変わるのか?」
山口大学:公共哲学 小川 仁志先生
『生命を究める』
・「生命とは何か?」
青山学院大学・米国ロックフェラー大学:生物学 福岡 伸一先生
・「日本人はどこから来て、どこへ向かうのか?」
国立科学博物館:自然人類学 篠田 謙一先生
・「ロボットは「心」を持つことができるか?」
金沢大学:現代哲学 柴田 正良先生
テレビや雑誌などさまざまなメディアに登場している方も多いので、なにかの機会で名前や顔を見たことがあるのではないでしょうか。
この9名の”賢人“たちがどんな幼少期を送り、今の研究テーマにたどり着いたのか、その軌跡を語っています。
例えば、『人間を究める』に収録された行動生態学・自然人類学者の長谷川真理子先生の場合をご紹介します。長谷川先生の幼少期は緑豊かな自然に育ち、たくさんの生き物に触れてきました。
そして研究の道に進んでからは誰も足を踏み入れないような辺境の地にも向かい、野生動物の姿を観察。その過程で「どんな動物よりも不思議なのは『ヒト』という生き物だ!」と思ったそうです。
なかでも注目したのは動物とくらべて長い、ヒトの思春期の謎。そこで先生は3000人もの子どもを25年にわたって観察し続けるという「思春期調査」を始めたのです。
野生動物の研究をし続けた研究者が人間の謎を解明するに至るまでの変遷、そして現在研究している「スマホと生きる子どもたち」について、先生自身から読者に向けて将来に向けて、どんなことを大切に、生きていってほしいのかというメッセージがとても平易な語り口で綴られています。
長谷川先生だけでなく、どの先生のストーリーにも「好き」なことを追いかけた結果、今があるということがわかるでしょう。