脳の発達と反抗期 わが子に何が起きているのか?【反抗期を科学する・3】(2ページ目)

子どもの発達=クールブレインの発達!?

子どもの発達=クールブレインの発達!?

子どもの発達について、この2つの脳のバランスから考えてみましょう。

まず生まれたばかりの子どもですが、0才児の彼らは、ホットブレインこそ働いているものの、クールブレインはほとんど動いていません。だって、0才の赤ちゃんが、「今はママが忙しそうだから、おっぱいは遠慮しておこう」のように、冷静な判断をして、自らをコントロールするなんてことはないですから。24時間、ホットブレイン中心。勝手気まま、気持ちが悪ければ泣きますし、充足されれば笑います。そこにクールな思考はありません。

ところが1才、2才と発達するにつれ、クールブレインが発達してきます。状況を把握し、ちょっと先のことを見越して、我慢することができるようになります。こんな風に自分の中にあるホットブレインをコントロールすることが、クールブレインのとても重要な働きなのです。

人が社会の中で生きて行くには、自分の欲求ばかりを通すわけにはいきません。よって、子どもの成長を考えたとき、クールブレインの発達(ホットブレインのコントロール)は、とても重要なことになります。そのため、脳科学者の中には、子どもの発達とは、クールブレインの発達であると言い切る人もいるくらいなのです。

アンバランスな反抗期の脳

では、この考えを元に反抗期について考えてみましょう。反抗期の子どもたちのホットブレインとクールブレインは、どのようになっているのでしょうか?

クールブレインも育っているでしょうが、ホットブレインがすごいことになっていると思いませんか。簡単に怒ったり泣いたり、不安になったり怖くなったりと、大変な状況です。
実際、この反抗期(=思春期)には、このホットブレインとクールブレインのバランスが崩れていることが、既にたくさんの研究者によって指摘されています。性ホルモンの影響により、ホットブレインが大きく発達し、それにクールブレインが追いついていない、とのことです。

つまり、反抗期=思春期の子どもに特有な感情的な行動、不安定さは、ホットブレインとクールブレインのアンバランスさに原因があるんですね。
ホットブレインが、まさにホットになってしまっている現状に、子ども本人のクールブレインが困っている、そんな風に理解することができます。

わが子の脳をイメージして話す

反抗期の子どもと話をするときは、今、その子のホットブレインとクールブレインのバランスがどのようになっているのか、考えてみるといいでしょう。

ホットブレインが興奮しているときに話は通じません。そんなときは、放っておいて、その子の中のクールブレインが動き出すのをじっくりと待ちましょう。そして、クールブレインが現れたなと思ったら、私たちの側もクールブレインで対応しましょう。せっかくクールブレインが出てきているのに、大人の側がホットブレインを持ち出してはいけません。

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和久田 学(わくた まなぶ)先生

和久田 学(わくた まなぶ)先生

小児発達学博士、子どもの発達科学研究所主席研究員、大阪大学大学院特任講師、日本児童青年精神医学会会員及び教育に関する委員会委員、日本LD学会会員。教員経験ののち、連合大学院で博士号を取得した稀有な経歴を持つ研究者。日本の教育、子育ての世界に科学的根拠に基づく先進的な研究やプログラムを導入。「愛と科学は両立する」を信条に、子どもたちが本来持っている能力を存分に発揮できるよう、研究・開発・社会実装に力を注いでいる。
著書に『科学的に考える子育て~エビデンスに基づく10の真実~』(緑書房)『学校を変える いじめの科学』(日本評論社)。その他論文多数。

子どもの発達科学研究所

子どもの発達科学研究所は、子育て、いじめ予防、就労支援等に関し、科学的根拠に基づくプログラムの研究開発と提供を行う日本では数少ない社会実装団体。なかでも脳科学、行動科学、疫学統計学による『3Ds(スリーディーズ)アプローチ』は、実効性の高いオリジナルプログラムとして注目を集めている。
また、子どもの「こころ」の発達や、子どもの「学び」に関する正しい支援・対応について学習する講座をシリーズで提供。教育関係者や保護者の方々から高い評価を得ている。幼児期から思春期における成長を科学で支え、健やかな未来へと導くため、当研究所は研究、開発、コンサルティングなど、幅広い活動を行っている。