今回は、古くは石器時代にまでさかのぼりながら反抗期と脳の仕組みを見ていきましょう。
他人との比較は大人でもツライ
前回、反抗期の裏側に自己肯定感があること、子どものメタ認知の発達が関連していることを説明しました。そして、メタ認知の本質は比較にあると書かせていただきました。
思春期に入る前くらいから、自分を他と比べて価値付けすることができるようになり、自分が世界の中であまりにもちっぽけな存在であることに気づき、それが自己肯定感を下げる、というお話ですが、これは子どもだけに限りません。私たち大人だって、比較はきついものです。我が子に、「他の家のお母さん・お父さん」と比べられるのはちょっとムカつきますし、仕事上でも、「同じような仕事を手際よくやる誰か」と比べられるのはきついものです。
子どもは器用さを持っていない
もっとも大人の場合、適切な比較対象を選んだり(むやみにレベルの高い人と比べないで、時として自分より下の人と比べる)、適当にあきらめたりすることができるので、まだ自己肯定感を守ることができるのですが、子どもはそんな風な器用さを持っていません。
私たちだってそうだったように、子どもたちは大まじめに世界と自分を比較し、しっかりと傷ついてしまうわけで、それが思春期に顕著になるんですね。
脳は今も石器時代のまま?
こうした状況は、情報社会である今の社会だからこそのもののようです。
人類が進化の過程の大半を過ごしてきた旧石器時代では、独自の言語や風習を共有する1,000人ほどにより、社会が構成されていたそうです。ただし、食糧確保のため、全員が同じ場所に住むことはせず、日常的には30人から50人程度の仲間で活動し、その周辺を合わせて150人程度の集団が生活の中心だったとのこと。そして、この集団生活の人数が、人間の脳の構造を決める要因の一つになっているそうです。
今でも一人ひとりの個性を見分けられるのがせいぜい50人、顔と名前が一致するのが150人程度であることは、この時代の人類と、脳の機能が基本的には同じであるからと言えるのかもしれませんね。