受験したいからと通塾していた息子が、突然受験はしないと言い出して…

塾・学校の実態に精通する教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、「中学受験を家族にとってのいい経験にする」というコンセプトで、中学受験のさまざまな相談にアドバイスしてくれます!
TOP

育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.17

Q.受験したいからと通塾していた息子が、突然受験はしないと言い出して…

5年生の男子です。自分で受験したいと言い出して2年前から大手進学塾に通っています。でも最近、本人が受験しないと言い出しました。

進学塾に通い始めたのは3年の3学期からで、友達のほとんどが中学受験する学校なので、友達と同じでいたいということでした。私も主人も地方出身なので戸惑ったのですが、勉強したがっているのはいいことだから通わせることにしました。塾に通うのはとても楽しそうで、勉強も好きと言いました。塾のクラスはずっと上から2番目と悪くありません。

でも、最近になって「塾には行くけど、受験はしない」と言い始めました。頭がよくないから受験しても無駄だみたいなことを言います。受験が1年後になり塾でいろいろ話があって、行きたい学校(御三家のA校です)が偏差値的にむずかしいことがわかったせいだと思います。

私は、ほかにもいい学校はあるよと言ったりするのですが、「もう受験しないと決めたんだ」といってききません。もともと、いったん言い出したらテコでも動かない子です。私はここまで頑張ったのだから受験してほしいと思います。難関大学への進学率の高い私立はほかにもありますし、教育環境でも私立のほうがいいと思います。

でも、もともと息子がしたいと言い出した中学受験ですから、どうしたらいいのでしょう? 迷っております。(ぶんぶん)

回答はこちら

A.大変頼もしい息子さんです。なぜなのか理由を聞いて、その気持ちを大事にしてください。彼自身が答えを出すでしょう

自分が思い描いていた学校に手が届きそうにないと思い、受験をやめると言い出したのですね。でも、塾には通い続けるつもりなんですよね。そこが偉いですね。受験をしないなら塾に行っても意味がないと考えてしまう大人も多い中、小学5年生にして中学受験勉強すること自体に意味を見出しているなんて見事です。しかもいったん言い出したら梃子でも動かない性格とのこと。頼もしい息子さんですね。

御三家ばかりが学校ではありません。「難関大学への進学率の高い私立はほかにもありますし、教育環境でも私立のほうがいいと思います」というのは仰るとおりです。中学受験をする意味は大きく分けて2つあります。

1つは多感な時期を過ごす環境を自分で選べるということ。最も多感で、反抗したり中だるみしたりしなければいけない時期に、それを高校受験に邪魔されないということもそこに含まれます。

もう1つは、中学受験勉強そのものに、子供の能力を伸ばす作用があること。知識や思考力はもちろん、教養の基礎や社会人基礎力も身に付くと私は考えています。ですから、仮に中学受験をしなくても、中学受験勉強に準じる勉強はしたほうがいいと私は思います。息子さんはそのことが直感的に分かっているのでしょう。たいしたものです。底知れないものを感じます。

さて、受験はしないと言っている今、親としてどうすべきかということですよね。親としてはせっかくここまでやったのだからもったいないという気持ちがおありでしょうが、まずは息子さんの気持ちをしっかり受け止めてあげることが大事でしょう。「受験しなさい」などと命じても逆効果になるであろうことはお母さまがいちばんよく分かっていることでしょう。「馬を水場に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という英語のことわざもあります。

なぜそう思うのか、話してくれるようなら話を遮らず、最後まで聞いて、「あなたの気持ちは良く分かった。その気持ちを大事にしなさい」と応援してあげてください。もしかしたら不安を吐露するかもしれません、迷いを語ってくれるかもしれません。でもお母さまがしっかりと気持ちを受けとってあげれば、きっと息子さんの視野が広がります。視野が広がれば、自分にとって何がいいことなのか、正しい判断ができるようになります。

そうしたら、もしかしたら、「やっぱりやる!」と言い出すかもしれません。そればっかりはわかりませんし、それを期待して話を聞くと言うのは本末転倒ですが……。

とにかく、息子さんのいちばんの理解者でいてあげてください。ご相談内容を拝見する限り、大変頼もしい息子さんです。必ず彼らしい答えを導き出すことと思います。

おおたとしまさの心すっきり相談室 アーカイブ≫