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第12回激増する奨学金受給者。今や大学生の3人にひとりが利用2014年07月31日 公開
日本学生支援機構の「奨学金貸与事業の概要」を見て驚きました。大学生の奨学金受給者数が、平成10年度以降、うなぎ登りに増えているのです。
グラフをご覧ください。平成10年度には約50万人だった奨学金受給者数が、平成24年度には約134万人と、約2.7倍に急増。特に「有利子奨学金」を利用している学生が急激に増えています。反対に、「無利子奨学金」の受給者は、平成17年度以降、若干減っています。この15年間で増えた奨学金受給者は、大学卒業後に利子をつけて返済しなければならない「有利子奨学金」の利用者だということが一目瞭然ですね。
この結果、それまで10%前後で推移していた奨学金受給者は、今や30%を超え、大学生の約3人にひとり、大学院生の約2.5人にひとりが利用しているそうです。
なぜこんなに増えたのか。平成11年度に奨学金の貸与に関する学力基準や家計基準が緩和されたことに加え、月額の貸与額を選択できる「きぼう21プラン」が、有利子奨学金としてスタートしたことが第一の要因です。
それともうひとつ、長引くデフレ不況で家計所得が減っていることも見逃せません。グラフに、平均給与の推移(国税庁の「民間給与の実態調査」から)を拾い出し、グラフに重ねてみました。この15年、ほぼ一貫して給与が減り続けているため、奨学金に頼らざるを得ない学生が増えたということでしょう。
有利子奨学金の門戸を広げたことで、これまで奨学金を受けられなかった学生も奨学金を受けられるようになったこと自体は、学生にとってもその両親にとっても喜ばしいことではあるのですが、その一方で、問題も発生しています。
大学・大学院卒業と同時に多額の借金返済を背負った若者を大量に生み出していることです。就職しても収入が低かったり失業したりして、返済が滞るケースも増え、日本学生支援機構の調査によれば、平成24年度には、3か月以上の返済遅延者は約19万4000人にのぼるとというのです。
この点は文部科学省も把握していて、「学生への経済的支援の在り方に関する検討会『学生への経済的支援の在り方について(中間まとめ)』」で、
「近年、奨学金の需要に対応するため有利子奨学金の拡大に頼ってきた実態があるが、原則に立ち戻り、無利子奨学金を基本とする姿を目指すべきである」
と提言。有利子奨学金の拡大に警鐘を鳴らしているくらいなのです。
幼稚園から高校まででも、学校の授業料や、学習塾、家庭教師、教材その他を含め、教育費を捻出するのはとても大変ですが、大学での費用はそれ以上(※連載3回目参照)。大きな助けになるはずの奨学金が、学生や家庭の負担を増やしたのでは、本末転倒になってしまいます。財源の問題が大きな壁となっているようですが、奨学金本来の姿である「無利子奨学金」に比重が移ることを望みたいですね。
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