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第24回学校選択制度の導入は15%程度。広がらない理由とは?2014年10月23日 公開
公立の小中学校で1990年代の終わりから始まった学校選択制度。地域内に小学校や中学校が2校以上ある場合、保護者が複数の学校の中から選択できるようにした制度です。
スタートから15年以上。学校間の競争が導入されることで、教育の質が向上することが最大のメリットと考えられていますが、どのくらいの地域で実施されているのでしょうか。
平成24年に内閣府が行った「小・中学校における学校選択制の実施状況について」によると、学校選択制を実施している教育委員会は246。対象となる教育委員会約1500のうちの、15.9%です。このうち12の教育委員会は廃止を検討していると回答しており、「廃止予定なし」の教育委員会は234。全体の15.1%でした。
年々、導入する教育委員会は増えているのですが、当初、期待する声が多かったとわりには、意外に数字が伸びていないようですね。しかも、気になるデータがありました。下記のグラフは、「小・中学校における学校選択制の実施状況について」から転載したものです。
学校選択制度の実施状況を、平成18年の調査と比較したものです。導入している教育委員会の比率はわずかに増えてはいるものの、平成24年調査では、「導入検討中」が激減し、「非実施・導入検討なし」が80%を超えているのがわかります。
導入の効果については、多くの教育委員会が「子供が自分の個性に合った学校で学ぶことができるようになった」(49.2%)、「保護者の学校教育への関心が高まった」(36.2%)、「選択や評価を通じて特色ある学校づくりが推進できた」(32.7%)と回答しています。
保護者の反応はどうでしょうか。「小・中学校における学校選択制の実施状況について」の3年前に、同じく内閣府が行った「学校教育に関する保護者アンケート」によると、50%を超える保護者が学校選択制の導入に「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答しています。「反対」「どちらかといえば反対」は11%程度でした。
さらに、学校選択制を利用したり検討したりしたことのある保護者の半数以上が、「非常によかった」「よかった」と回答しており、「よくなかった」という回答は5%程度に過ぎません。
にもかかわらず、検討中の教育委員会が激減したのはなぜでしょうか。下記は、「小・中学校における学校選択制の実施状況について」から転載した「学校選択制を導入しない理由」のグラフです。
グラフを見ての通り、「地域との連携が希薄になる」「通学距離が長くなる」「入学者が減るおそれがある」「学校間格差が生じる」がTOP4の理由。いったん学校選択制を導入して廃止した理由も、これとほぼ同じです。確かに、学校にとっては、大問題でしょう。また、子どもや保護者にとっても、通学距離が長くなったり、学校間格差が広がったりすることは、あまりありがたいことではありません。
導入した教育委員会や利用した保護者には、かなり評価が高い学校選択制ですが、実施から10数年たち、その課題が徐々に顕在化してきたということでしょう。今後、導入する地域がそれほど増えない可能性が高そうですね。
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