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第40回試験直後に後悔する子ほど次の試験で「やる気」になる2015年02月19日 公開
2月初旬、猫の遺伝子解析により「猫の移動の歴史を探る手がかりとなるレトロウイルス感染の痕跡を発見」というニュースがありました。発表したのは京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授や京都大学大学院医学研究科博士課程の下出紗弓氏らの研究グループ。
イエネコの品種の分岐がどのように行われたのかが解明できるかもしれないというのです。
興味深かったので、京都大学のホームページへ行ったところ、他にもさまざまな研究成果がいっぱい! そこに、【後悔感情から高校生の自律的な動機づけの獲得プロセスに迫る】という研究成果を見つけました。
勉強の動機付け、つまり「やる気」と、「もっと勉強しておけばよかった」「もっと自分の楽しめることをしておけばよかった」というふたつの後悔の関連性について調べた研究です。
調査対象は高校1年生320人。定期試験の前に、試験勉強への動機付けを尋ねた上で、試験後に試験前の生活を振り返り、「もっと試験勉強をしておけばよかった」という後悔(勉強後悔)と、「もっと自分の楽しめることをしておけばよかった」という後悔(楽しみ後悔)をどのくらい感じているかを尋ねます。続いて、試験の8週間後にも同じ質問。最後に、次の試験の1週間前に、再び勉強への動機付けを尋ねる、という手法で調査は行われました。
その結果、分かったことをまとめると、次のようになります。
●後悔は動機づけの内在化(自らやる気を出すこと)に影響するが、その影響の仕方はいつ、どのようなことに対して生じた後悔かによって異なる。
●試験の直後に「もっと試験勉強をしておけばよかった」と強く後悔しているほど、次の試験のときに自律的な動機付けが高い。
●前の試験のとき、統制的動機付け(勉強をさせられている)で勉強していた人ほど、試験直後の勉強後悔が強い。
●試験から時間が経ってから生じた「もっと自分の楽しめることをしておけばよかった」という後悔が強いほど、後の試験の際に自律的な動機づけが低い。
●自律的な動機づけの獲得に寄与するのは、冷静に思考を巡らして生じる後悔よりもむしろ、情動的に生じる後悔である。
つまり、試験後に、直感的に思い浮かぶ「もっと勉強しておけばよかった」という後悔は、本人の「やる気」にかなり影響を与えるということです。それも、時間がたってからの後悔ではなく、直後に感じることが重要と言えそうです。
また、最初は自らの意思ではなく試験勉強をさせられていた人ほど試験勉強後の「もっと勉強しておけばよかった」という後悔が強いということは、たとえやらされている試験勉強でも、本人のやる気を喚起する可能性を示しています。
もっとも、本人のやる気を出すために「後悔させることが重要だと主張したいわけではない」とも。試験後に、「もっと勉強しておけばよかった」と、つい思ってしまうということは、誰に強制されるわけでもなく、自分の至らなさに自ら気づいたということ。自律的な動機付けを確立するためには、後悔も自律的である必要があるんでしょうね。
ホームページには、この研究の他にも、「機械学習によるカンニングの検出技術の開発」「チンパンジーと人間の子どもの描画の比較」」「養育経験が脳の働きに与える影響」など、普通の人間ではなかなか思いつかないような興味深いテーマがたくさんあります。自由闊達な京都大学らしいですね。みなさんも、一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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