育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.33
Q.娘の希望は低偏差値の学校。もっと上を 目指すよう勧めたほうがいいでしょうか
いつも参考にさせていただいております。
娘は成績は悪くはないのですが、御三家にはまだ手が届かないなあというレベルです。まだ小5なので、塾からは上を目指して!と言われ、いろいろな学校を見に行っていますが、娘は受験を決めた当初から憧れの学校があり、どうしてもその学校にいきたいと言います。その学校は娘の偏差値から15ほど下の学校です。
学校の雰囲気や面倒見の良さなどに、母の私も偏差値は低いけど良い学校であると思っています。
実際それくらい偏差値に差があると、入ったときに、どうでしょうか。
御三家レベルになんとか届いたとしても優秀な生徒の中でもがき辛い思いをするくらいなら、ゆとりのある学校で上位にいてのびのびとできる方が良いのかなと思ったりもします。生真面目な娘は、頑張るとは思いますが、頑張っても底辺にいることになる可能性の高いレベルの高い学校に行かせるのはそれはそれで心配です。アドバイスいただけるとありがたいです。(ポンチャラリン)
A.偏差値にとらわれず憧れの学校が言える娘さんはあっぱれ!その希望を認めた上で、他校も検討して可能性を広げよう!
「目指す学校の偏差値が現実よりも15も上で・・・・・・」ということはよくありますが、その逆なんですね。でもお母さまは御三家を狙わせたいと思っていらっしゃるようですね。
まず、高いレベルの学校に行かせることについては心配はいらないと思います。御三家の中学は、各小学校で1番だったような子供たちばかりが集まってきます。当然その中でビリになる生徒もいるわけです。でもトップクラスの中でのビリですから、何も恥ずかしいことはありません。もしそのことで子供が劣等感を感じているようなら、それは「そんな成績じゃだめじゃない!」などという親から貼られたレッテルのためである可能性が高いと思います。
ビリは決して誇れたことではありませんが、そこで悔しいと思うのならがんばればいいでしょう。みんなできる子たちばかりで、力は拮抗していますから、がんばれば順位なんてすぐに回復できます。逆に、ビリでもまあいいやと思えるなら、それもそれで一つのスタンスです。常に優等生の役割を果たさなければいけなかった神童たちが、優等生を演じ続けることをやめられることも、トップ校に行くひとつのメリットだと私は思います。
が、そもそも今回のご相談の主旨はそこではないですよね。娘さんの目標が低すぎるのではないかということですよね。それだけ余裕がありすぎると、もしかしたら入学してから物足りなさを感じることは可能性としてはありますね。娘さんの性格次第ですが。
それにしても、偏差値にとらわれず、自分の憧れの学校をいえる娘さんにはあっぱれです。年収や肩書きで人を判断してしまう大人に、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。そういうお子さんは、本当に中学受験に向いているのだと思います。
親としては「もっと上を目指せるのに」と思うでしょうけれど、それだけしっかりしている娘さんなら、志望校を変えるように説得しても、きっとうまくいかないでしょう。せっかく自分で決めた目標をもっているのに、その目標を親にけなされることは、子供にとってはとってもつらいことです。せっかくのやる気をなくさせてしまう可能性だってあります。
「偏差値にとらわれないで、自分の目標を自分の価値観で決められるあなたはすごい!」と、娘さんの決意をしっかり評価してあげたうえで、「でもほかにもたくさんいい学校はあるみたいだから、可能性は閉じずにいろいろな学校を見てみましょう」と話してみてはいかがでしょうか。
お母さまがいいなと思っている学校があるのなら、そのことは伝えていいと思います。「お母さんは、この学校、あなたに合っていると思うんだけどな」なんていいながら、どういう学校が娘さんに合っている学校なのかを話し合うのも大切だと思います。お気に入りの学校があるのなら、その学校の生徒や卒業生と話をしてみるのもいいでしょう。「あのお姉さんのようになりたい!」みたいな具体的な目標があると、子供のモチベーションは急上昇します。
でも決して価値観を押し付けたり、説得しようとしたりはしないでくださいね。逆効果になる可能性が高いですから。まずは娘さんの気持ちをしっかり受け止めてあげること。自分の考えをしっかり受け止めてもらえているという安心感があってこそ、娘さんの視野も広がっていくと思います。お母さまの意見も聞いてみようという気持ちが湧いてくると思います。