育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.47
Q.第二志望に進学。本人は気に入っている 学校なのに、夫が否定的で困っています
初めまして。この2月に中受終了したものです。終了組なので、ご相談してよいのか迷っておりますが、アドバイスいただければと思い、書き込みさせていただいております。
息子は第一志望残念で、第二志望校に進学します。この学校も気に入っており、本人は入学を楽しみにしています。が、夫はこの学校のことが気に入らず、「あんな学校に入れた時点で、将来は望めない」とかなり否定的です。
夫は公立優位の地方出身、トップ県立高から現役で旧帝大に進学、大手企業に勤務しています。私は関東圏出身、私立中高一貫校から私大大学院修了、技術職についています。
育った環境がほぼ正反対で、中受に反対気味であったところを押し切った私のやり方にも問題はあったと思います。息子自身が中受を希望したのですが、勉強の仕方が甘かったことも否めません。
しかし、進学先が決まった以上、学校に対して否定的なことは言って欲しくありません。
夫の持論は、学校の環境なんて関係ない。本人がどれだけ勉強するかだけだ。そして、今、息子に、この学校でビリに近い成績で入学なのだからもっと勉強しろ、と怒鳴りつける毎日です。
はっきり言って、旧帝大に入学することがすべて、という夫の考えには同意できません。息子には、そういう思考の大人になって欲しくありません。
息子と夫の板挟み、で、せっかく合格をいただいたのに、辛い毎日です。今後、息子にどのように向き合って行くべきでしょうか? このままでは、息子が自己肯定感の低い子供になってしまいそうです。(アキママ)
A.息子さんを応援してあげてください。葛藤を味わいながらも、父親という壁を 乗り越えて、たくましく育つでしょう
合格おめでとうございます。そしてお疲れ様でした。第一志望校ではなかったということですが、息子さんが気に入った学校に進めて良かったですね。しかし旦那様はそのことに対しての理解がないのですね……。残念ですし、困ったものですね。教育とは何か、親の役割とは何か、あまり考えたことがないのかもしれませんね。自分ではない、世間の評判が、価値基準なのかもしれません。
地方には地方の公立文化があり、東京には東京の私学文化があり、それぞれの出身者はそれぞれの文化しか知らないわけですから、こういうことは少なくはありません。拙著『もし中学受験で心が折れそうになったら』(KADOKAWA)は、地方公立出身で中学受験に否定的な父親をもつ中学受験塾講師の物語です。今回のご相談の回答になるわけではありませんが、参考までにご覧いただけるといいかもしれません。
中学受験がせっかく終わって、見事合格を勝ち取ったというのに、毎日怒鳴られるというのでは息子さんは気の毒です。旦那様には冷静になってほしいところですが、人はそう簡単に変われません。お母様が間に入って息子さんを守ってあげなければいけませんね。「お父さんにはお父さんの価値観がある。それはそれで認めてあげなければいけないわね。でもあなたの人生はあなたの人生。自分の選んだ学校に誇りをもって通いなさい。お母さんはこの学校が大好きだよ。そこでほかでは出会えなかったものに出会えるはずだから、大事に6年間を過ごしなさい」などと語りかけてください。
それでも息子さんは葛藤を味わうでしょう。今後本格的な思春期を迎えたら、父子の衝突があるかもしれません。しかしそれも、息子さんにとっていずれは越えなければならないハードルなのでしょう。父親という壁を乗り越えていくのは息子さんにとっては大変なことです。しかも旦那様の壁は、相当に高くて分厚そうです。必死に父親という壁を乗り越えようとする息子さんを見ていることはお母様にとってはとてもつらいことかもしれません。でも、壁を乗り越えるのは息子さん本人でしかありません。息子さんを信じ、応援してあげてください。これだけ高くて分厚い壁を乗り越えることができれば、息子さんはきっとたくましく育つでしょう。
一方、今まさに、夫婦の葛藤もあるでしょう。夫婦とは言え価値観を完全に一致させることは至難の業。無理に価値観をどちらかに合わせようとするのではなく、それぞれの価値観があると認め合えるといいですね。アキママさんご夫婦にはそれぞれの価値観がある。価値観が違うとその分葛藤も増えますが、子供が育つ環境としてはそれだけ価値観の幅があると言えます。息子さんはその広い価値観の幅の中で、きっと自分なりの価値観を見いだすはずです。決して悪い環境ではありません。