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3年目の夏 巣鴨でしか見られない景色

inter-edu's eye

巣鴨中学校・巣鴨高等学校(以下、巣鴨)に、生徒を虜にするサマースクールがあることをご存知でしょうか。世界の一流エリートが集結し、講師となって生徒と6日間を過ごす「巣鴨サマースクール(以下、SSS)」です。インターエデュ(以下、エデュ)では、2017年の初開催から現地取材を重ね、生徒のスペシャルな夏を追ってきました。3年目となる今回は、講師が巣鴨生のためだけに用意した授業をレポートします。

Sugamo Summer Schoolとは

時代に左右されない真のエリートの育成に努める巣鴨は、
イギリスの名門校「イートン・カレッジ」の
サマースクールに参加できる首都圏唯一の男子校です。
このサマースクールと同等の体験を、
より多くの生徒に味わわせてあげたいと始めたのがSSS。
長野県・蓼科の校舎に講師を招き、
中学生を中心に行われるサマースクールです。

講師紹介

世界を股にかけて活躍する
グローバルエリートだけを招集した豪華な顔ぶれ。
巣鴨生にとっては一生ものの特別な経験です。
素晴らしい講師たちと寝食を共にすることで、
情熱の火が灯り、
大きな知的刺激を受けていました。

オリー先生

イートン・カレッジのサマースクールでも複数回のダイレクターを務め、現在は世界展開する企業コンサルティング会社で指導的地位に就いている。人気アカペラグループのメンバーとして英国首相隣席の演奏会にも出演。

ベン先生

イートン・カレッジのサマースクールで豊富な指導経験を持つ。オックスフォード大学言語学科をトップの成績で卒業後、法科大学院に進学。イギリス有数の法律事務所勤務を経て、現在は日本語の翻訳家として活躍中。

ジャック先生

子どもから大学生まで幅広い年齢層の生徒に英語・数学・科学を指導した経験を持つ。水泳(バタフライ)の元イギリス代表選手でもあり、マスターズ世界選手権では2連覇中。SSSでは巣鴨伝統のフンドシ水泳も披露。

エミリー先生

コスタリカやロンドンで7歳〜16歳の生徒に英語・数学・歴史を指導した経験を持つ。現在は世界規模で事業展開する広告代理店で重責を担っている。一方で女優・セミプロ歌手としてヨーロッパ各地での公演も行う。

ノア先生

イギリス政府勤務。中高時代にはイギリス数学チャレンジ大会で金賞を4度受賞。フェンシングのロンドン・ユース大会では銀メダルも獲得。教育困難校での指導経験もある。趣味はチェスと読書。

サミー先生

オックスフォード大学の哲学・政治経済学部をトップの成績で卒業。ロンドン・パリで、英語・ラテン語・数学・歴史の指導経験を持つ。現在はイギリス政府に勤務し、要職を歴任している。ピアノ演奏もお手の物。

トリスタン先生

イートン・カレッジのサマースクールでダイレクターとしての豊富な指導経験を持つ。イギリスで最も先進的なパブリックスクールであるウェリントン・カレッジの歴史教諭及びハウス(寄宿舎)の副寮長。

トミー先生

イギリスの名門ハロー校で化学教諭・ハウス副寮長を務めた後、イギリス政府に勤務。外交官を経て、現在は首相補佐官を務めている。セイリングのインストラクターやセミプロ歌手としても活動している。

Sugamo Summer Schoolで自分の殻を破れ!

SSSの強みは各講師による独創的な授業です。
講師の人間としての魅力や授業内容に感銘を受け、
SSSへの再チャレンジや、
イートン校のサマースクールへの参加を
決意する生徒が後を絶ちません。
「生徒が自分の殻を破るきっかけにしてほしい」と、
各講師が用意した授業とは。

Why no female emperors?

皇位継承問題を取り上げ、「なぜ日本には女性の天皇がいないのか」を話し合う授業です。

授業の様子 トリスタン先生

トリスタン先生の手には、1枚につき1つずつ”女性天皇がいない理由”について日本語で書かれた5枚の紙が。二人一組になった生徒らは1枚ずつ紙を受け取り、書かれた内容を英語でプレゼンすることに。考える時間は10分です。さっそく取り掛かろうとする生徒に、先生は「(手元の)辞書を使わずベストを尽くして」と提案。「えっ」と怯む生徒たち。日本語で語ることですら容易ではないテーマを、英語で、かつ人前で話すとなれば、生徒が頭を抱えるのは当然です。仲間と相談して英訳に挑む生徒らに、先生は床に膝をつき、目線を合わせて話しかけていきます。会話をヒントに生徒の考えがまとまると、すかさず先生は書き留めるようアドバイス。

授業の様子 発表の様子

プレゼンタイムでは、言葉での説明に限界を感じた1組が、立ち上がって黒板に図を描きながら必死に解説。先生は生徒がいた席に座り、じっくり耳を傾けます。見事にベストを尽くし、やり切った生徒たち。最後に先生は、「今後、女性天皇は誕生すると思う?」と問いかけ、生徒に考え続けるという宿題を残して授業は終わりました。
生徒たちは、「日本語より英語で歴史を学ぶほうが楽しいです」「先生の授業は50分間ずっと面白かったです。英語で質問されることに慣れたし、苦手意識を克服できました」と、授業で得た自信や新たな発見について話してくれました。

授業の様子 発表の様子 授業の様子 トリスタン先生

Brexit Debate

ノア先生・オリー先生

生徒同士でディベートをするこの授業。
実際の討論に入る前に、生徒たちはノア先生とオリー先生による豪華な実演を見て予習します。テーマはベジタリアンについて。オリー先生が反対派に扮し、「私たちは今まで何千年と肉を食べてきたのに今更なぜ食生活を変える必要がある?」と迫ると、ノア先生は「何千年前から肉を食べていることが理由?それなら、きみの生活は何千年前から何も変わっていないのか? ぼくは“現代世界”に生きているよ。」とすかさず反論。徐々に討論のスピードが上がっていく先生の言葉を、巣鴨生たちは難なく聞き取り、ユーモアあふれる応酬を楽しんでいました。
予習が終われば、いよいよ生徒たちの番。イギリスの「EU離脱問題」を議題に、賛成派・反対派に分かれて討論を行います。
ノア先生が用意したヒントカードを参考にしながら、自分なりの意見を10分間でまとめると、ディベート開始です。英語で意見を伝える難しさに直面しながらも、相手の声にも耳を傾け、的確な反論があちらこちらから飛び出します。生徒たちの着眼点にノア先生も感心しているようすでした。

授業を終えて

オリー先生も「最も静かだった生徒がちゃんと英語でコミュニケーションをとっているのを見て、生徒たちの情熱やエネルギーが大きくなっていることを感じた。自分も勇気をもらったよ」と、生徒の成長ぶりを語っていました。

Drama & End of course event

エミリー先生が担当するドラマレッスン。英語劇を通して、生徒はさまざまな感情表現に挑みます。
レッスンでは、テーマに沿ってストーリーを作り、物語の中で感情がどのように変化するのかを考え、動きをつけて表現していきました。

エミリー先生 授業の様子

また、生徒全員で演じる英語劇の練習にも励みます。SSS最終日の前夜を本番とし、講師たちの前で披露する『School of Rock』のミュージカルです。ほかの授業は生徒10人で着座して行われるのに対し、劇の練習では全生徒が広間に集まり、動き回ったり歌ったり、ときには踊ったり。セミプロ歌手のトミー先生や、楽器演奏が得意なサミー先生らも加わり、現場は活気にあふれます。その盛り上がりに、最初は硬かった生徒の動きや表情がどんどんほぐれていきました。

授業の様子 サミー先生

再びSSSに参加したという高1生は、「初めてのSSSは中2のとき。最初は誰がどんな面白いことを言っても笑うことすらできなかったけれど、エミリー先生の授業を受けて自然と感情表現ができるようになって。だから、先生は僕の恩人です。我慢できないくらいSSSの先生に会いたくなったので、また参加しました」と自身の変化を打ち明けてくれました。
緊張や照れくささからドラマレッスンを苦手と感じる生徒が多いのかと思いきや、熱い想いを内に秘め、エミリー先生の授業に臨んでいる生徒がたくさんいることが分かりました。

本番では…

大合唱によるフィナーレで劇は大成功! エミリー先生は大喜びで舞台に駆け出し、生徒たちとハイタッチを交わしました。

エミリー先生 授業の様子 授業の様子 サミー先生

Sugamo Summer Schoolの濃密な時間が培う世界基準

高1生のときイートン校のサマースクールに参加し、
2018年秋からオックスフォード大学に通う金田隼人さん。
昨年から2年連続でスタッフとしてSSSに参加しています。

また、過去2回のSSSに参加した上級生たちにとって
SSSでの学びはどのように息づいているのでしょうか。

金田さん
金田さんは現在、物理学を専攻中。
アルティメットというフリスビーのチームと、JAPANソサエティという文化交流サークルに所属。

オックスフォードの学生になり、「SSSの講師の方もかつて自分と同じような生活を過ごした上で、今があるのだな」と、昨年とは違う見方をするようになりました。そして、学歴だけがすごいのではなく、彼らが社会でもしっかりしたキャリアを築いてきていることを改めて思い知らされました。ですから、講師の方々と過ごすことで大きな影響を受けますし、自分にとってもそれが成長の糧になっていると思います。

これまでに参加した上級生は

文字なら書けるような単語でも実際には全く使えないことに気づかされたので、何度も音読を繰り返し、使える英文を増やす勉強を始めました。声に出すのは怖いけれど、声を出した生徒が一番楽しめると思います。

受験のためだけでなく、人々とのコミュニケーションをとるための手段の1つとして英語を勉強しようと思うようになりました。
SSSを「巣鴨のイベント」と捉えていると、よい意味でだまされると思います。勉強合宿とは全く雰囲気が違います。

SSS2019の全貌はこちらからまとめてご覧ください

編集者から見たポイント

生徒にとって有意義な時間であったことは言わずもがなですが、第一線で活躍する豪華講師陣にとっても「巣鴨生を教える」というのは非常に価値のあることなのだと先生方は語っていました。エリート教育とは、知識の詰め込みではありません。世界を広く見渡し、多様な価値観を持つ人たちと適切なコミュニケーションが取れること。そのエリートとしての素地、そして世界に飛び立つきっかけをこれからも巣鴨はもたらし続けるのだと感じさせる取材でした。

企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:巣鴨中学校・巣鴨高等学校