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新型コロナウイルスの影響により、全国の学校で教育活動が大きく制限された2020年。中学受験生の間では、「新しい日常」を踏まえた学習形態・行事を実現できた学校に注目が集まっています。東京都練馬区の東京女子学院中学校・高等学校(以下、東京女子学院)もそうした注目校のひとつです。オンライン授業の成功はもちろんのこと、文化祭では宝塚大学と企画した「プロジェクション・アート」が話題を呼びました。今回は、生徒お二人と校長の野口潔人先生にインタビューし、コロナ禍で発揮された柔軟な対応力に迫ります。
東京女子学院は1学期の休校期間中、LIVE配信によるオンライン授業を実施しました。まずは、その感想を生徒お二人にお聞きします。
オンライン授業の感想を教えてください。
小峰さん
先生が作成したスライド資料がそのままパソコンの画面に映るので、黒板を写すのに必死で授業についていけないということがなくなってよかったです。
山田さん
ただ、授業のスピードは対面より早くて、「自習を頑張らなくては!」という気持ちになりました。また、希望者にはポケットWi-Fiが支給されるなど、「生徒一人ひとりの学習環境を気遣ってくれているんだな」と感じたこともありました。
自宅で学習している間、先生からはどのようなサポートを受けましたか。
小峰さん
私は2年生になってから所属コースを変えたのですが、元のコースと数学のカリキュラムが違うため、個人で学習しなくてはいけない範囲があり大変でした。でも、毎日のようにオンラインで個別に補習してもらえたおかげで、今もスムーズに勉強できています。
山田さん
授業で分からない部分があっても、人数が少ない授業ではそのまま発言できましたし、人数が多くてもメッセージを送れば対応してもらえました。また、進路についてもしっかりと指導してもらえたことが心に残っています。大学への志望理由書は最初、何を書いたらいいのかも分からないというゼロからのスタートでしたが、何度も添削を受けて提出できるものを仕上げられました。
休校期間を経て、学習姿勢に変化はありましたか。
小峰さん
最初は配信される課題をなんとか終わらせるので精一杯でしたが、「自分から勉強しよう」という気持ちが強くなったと思います。今では、友達とオンラインで勉強会を開いたり、教え合ったりするようになりました。
山田さん
私もコロナ禍になってからのほうが勉強しています。進路についても、学習についても個別の指導をたくさん受けてきたので、モチベーションが上がりました。どんな小さな悩みでも先生方が向き合ってくれるのが東京女子学院の強みだと思います。
休校期間中に生徒どうしで交流する機会はありましたか。
小峰さん
ホームルームに合わせて話すタイミングがありましたし、部活動のミーティングも積極的に行いました。私は硬式テニス部に所属していて、今年から部長になったのですが、オンラインで話し合うことからスタートしてよかったかもしれません。学校再開までに部員がしっかりとまとまっていたので、一致団結して活動できています。
山田さん
私が所属するバレーボール部でもオンラインで会話しながらトレーニングするなどして雰囲気を高められました。また、部活だけでなく授業中も発言しやすい雰囲気だったので、休校期間はそこまで寂しさを感じずに過ごすことができました。
東京女子学院は6月から完全登校を開始。徐々にいつもの学校生活を取り戻していき、9月21日には文化祭「芙蓉(ふよう)祭」を1日程のみで実施しました。飲食物の提供はせず、生徒の作品展示と演劇などに出し物をしぼり、感染対策を徹底。規模は縮小されましたが、新しいイベントが屋外で開かれました! それが冒頭でもご紹介した「プロジェクション・アート」です。こちらについて、生徒会長として中心になって進めた小峰さんにご紹介頂きました。
秋の夜の幻想的なプロジェクションアートはぜひ動画でもご覧ください!
光のアートで校舎を包もう!芙蓉祭プロジェクションアート
全国の学校で生徒の体験活動や交流を深める機会が失われてしまう中、東京女子学院は可能な限り、コロナ禍であっても当たり前の学校生活を送れるように尽力しています。しかし、それも感染対策が徹底しているからこそ。マスク着用や入り口での検温・消毒はもちろんのこと、生徒主体の取り組みも充実しているということで、保健委員会による啓発活動について委員長の山田さんから伺いました。
山田さん
保健委員長になったのが去年の12月で、その後すぐに新型コロナウイルスの感染拡大が進み、とても驚きました。「啓発活動を行う上で大切なのは説得力を持つことだ」と考え、常に報道などをチェックして、ウイルスについての疑問にも答えられるように心がけてきました。
保健委員会では毎日、昼食の直前から5時間目が始まるまでの間に、手洗い・消毒・うがいをするよう呼び掛ける放送を3回しています。当初は食事前に手を洗う生徒は少なかったのですが、徐々に増えていて、活動の効果が出始めたところです。秋になってからは気温が低くなったことで、さらに体調管理に気を付けてほしいというメッセージも盛り込みました。
教育活動にさまざまな制限がかかる中、生徒の主体的な動き、先生方の熱意によって「新しい日常」を踏まえた学校生活を築き上げてきた東京女子学院。数々の取り組みに込めた思いを校長の野口潔人先生に語って頂きました。
今年の学校運営の中で大切にしたことを教えてください。
野口先生
「学校本来の姿をいち早く取り戻す」ということに尽きます。
対面での授業、コミュニケーション、活発な部活動を守るために、感染対策を徹底してきました。
今後の教育活動の目標を教えてください。
野口先生
本校は、生徒が卒業後に自分らしさを発揮できるように育成していきます。宝塚大学との連携もその足掛かりになるものです。大学生と交流することで、自分に近い将来像をイメージして、進路を考えるヒントをつかんでほしいと願っています。2021年以降も、さらに協働して教育活動を展開していきます。
小峰さん
「プロジェクション・アート」は校舎全体に華やかな映像を投影するプロジェクション・マッピングです。管弦楽部の演奏にあわせて万華鏡のようにたくさんのイメージを映し出していくと、来場者の方からは大きな歓声が上がっていました。地域の方からは「また来年もやってほしい」という声があって嬉しかったです。
準備には2日間かけ、生徒会、芙蓉祭実行委員、連携先の宝塚大学の学生のみなさんと準備しました。普段、交流することのない大学生の方から、勉強やサークル活動をはじめ、学生生活についてお話を聞けて参考になりました。