生徒渾身の研究を発表“オンラインSTEAMフェス”
inter-edu’s eye
ドルトン東京学園中等部・高等部(以下、ドルトン)では、生徒自身が決めたテーマの研究成果や作品、演奏などを発表するSTEAM(Science,Technology,Engineering,Art,Mathematics)フェスがあります。個人発表のため、生徒たちは自分のテーマにとことん向き合い、挫折を繰り返しながら発表準備に励みました。今回は初めてのオンライン形式で3月にフェスを開催。どのような実のあるフェスになったのか、生徒と先生に詳しくお話をうかがいました。
最先端の技術で、初のオンライン開催に挑戦!
普段の授業から積極的に探究学習を取り入れているドルトンは、些細なきっかけから深掘りできる目標を見つけたり、授業外でも活躍する機会にあふれています。STEAMフェスの前提も、ドルトンプランの根底にある「学習者中心の学び」であり、もちろん主役は生徒たちです。期間をかけて生徒個人が研究に没頭し、発表するアウトプットの過程を大切にした行事となっています。
生徒たちの研究発表は動画作品としてあらかじめオンライン上にアップされ、その中から各自おもしろいと思った発表に投票します。昨年度の3月に開催されたフェス当日は、得票数が多かった生徒、発表をしたいと立候補した生徒、先生から推薦された生徒が代表としてオンライン上で発表を行いました。
発表の舞台としてバーチャル空間の校舎が用意されており、サイトにアクセスしたら、自分のアイコンを動かして好きな発表を聞きに行くという、まさに新時代の技術を取り入れたもの。リアルタイムで発表が聞けるほか、発表者への質疑応答も可能となります。コロナウイルスの影響もあり、大勢で集まることが困難な今日ですが、オンライン上でフェスを開催することで、来校しなくてもネットさえ繋げば、保護者や遠方に住んでいる祖父母などにも気軽に発表を楽しんでもらえるという利点があるのです。
日ごろから疑問に思っていた「効果的な手洗い方法」を追求
STEAMフェスにて、サイエンス部門賞を受賞した中学2年生の生徒に研究の進め方やフェスを終えての感想をうかがいました。
インターエデュ(以下、エデュ):STEAMフェスで取り組んだ研究テーマはなんですか。
N.Tくん:僕の研究テーマは、「石鹸・アルコールの手指消毒効果を細菌培養で比較検証する」です。コロナウイルスの流行で、手洗いと手指消毒をしなさいと言われることが多いですが、みんな目的をもって行っているけれど、実際の効果については漠然としているなと思ったのがきっかけです。効率の良い手洗い方法を知るために、どのように手を洗えば良いのかを研究して発信したらおもしろいかなと思い、このテーマに決めました。実験の仕方は母に相談をしながら、コロナ禍で学校に通わなくてもできるものにしました。
エデュ:具体的な研究内容を教えてください。
N.Tくん:どんな手洗いの仕方が効果的なのかを知るために、手を石鹸のみで洗ったときとアルコールのみで消毒をした場合、さらに石鹸とアルコールを組み合わせて使用した場合など、洗い方によって細菌の数に変化はあるのかを調べます。実験方法は寒天培地を使い、手洗い前と手洗い後の細菌の数を比較しながら検証をしました。
エデュ:発表動画の編集も各自行うとうかがったのですが、動画を作る際に工夫をしたことはありますか。
N.Tくん:発表動画の作成でこだわったのは、話の聞きやすさです。動画を編集してつなぎ合わせるとどうしても不自然になってしまうので、聞きやすさを考慮して“一本撮り”に挑戦しました。
エデュ:STEAMフェスを終えての感想を教えてください。
N.Tくん:発表を聞いた母から、話し方がうまいねと褒められてうれしかったです。実験手順の考え方やプレゼンテーションの方法、発表での話し方などは、学校の授業で身についたものが活かされたと思います。ドルトンではたくさんの実験機材が用意されているので、所属している理化学研究会でいろんなことにチャレンジしてみたいです。
エデュ:ドルトンを目指す受験生へメッセージをお願いします。
N.Tくん:入試では自分の意見を記述する場合もあるので、いつも自分の考えを持っていることが大切だと思います。ドルトンは自由な学校で、どんな研究にも没頭できる環境があっておすすめです。
生徒の才能を発揮する場を全力でサポート
STEAMフェスの全体統括者の乙守秀一先生とオンライン運営(バーチャル会場)担当の伊東佳奈美先生に生徒の成長やフェスの成果について語っていただきました。
エデュ:先生方は今回どのようなサポートを行ったのでしょうか。
乙守先生:教員の役割は生徒のやりたいことに対して手助けをし、必要があれば補うことです。そのため、生徒の作品に手を出しすぎないように心がけました。何をしたらいいのか分からないと悩む生徒には個別相談でフォローを徹底し、普段よりも生徒一人ひとりとじっくり向き合うことができたと思います。
エデュ:今回のフェスで生徒に求めたもの、重視したポイントを教えてください。
乙守先生:テーマに沿った問題点を発見し、解決策や仮説を打ち立て、最終的に発表としてまとめられるか。そういった研究のプロセスを踏めるかが最大のポイントでした。しかし、結果的に思うようにうまくいかなかった生徒たちにとっても、挫折を繰り返して研究をやり抜いたその過程こそが、生徒たちの今後の力に活きると感じています。
エデュ:オンラインのSTEAMフェス開催にあたり、舞台裏での苦労話やエピソードがあれば教えてください。
伊東先生:オンラインでの開催が決まってから問題が山積し、一つずつクリアにしていく日々でしたが、新しいサービスの導入を学校が素早く決断したことで、その先の実装のスピード感につながったと思います。また、初めてのツールを使いこなせない生徒もいる中で、生徒同士が教え合い助け合う場面が多く見られました。ドルトンの協働の精神が目で見えるかたちで現れたのはうれしかったですね。
エデュ:STEAMフェスではどのような成果がありましたか。また、生徒たちの作品を見た感想を教えてください。
乙守先生:早い段階で自分がやりたい研究を見つけた生徒たちのポジティブな空気が連鎖して、続々と研究に没頭する生徒が増えていったことが良い流れを生みました。さらに、普段はあまり積極的ではない生徒が驚くほど集中して自分の作品に向き合い、真摯に取り組む姿を見たときに、そのチャレンジ精神に感動をしましたね。そういった作品の数々に、教員同士が「やって良かった」と強く実感しています。
エデュ:今回のフェスで最優秀賞を設けないと決めたのは生徒とうかがいましたが、どのような経緯があったのでしょうか。
伊東先生:生徒の自治活動であるDSC(Dalton Student Council・生徒会)のメンバーが最優秀賞を用意すべきかを議論し、今回は優劣を競うものではないため、設けないほうが良いと意見が上がりました。全生徒にアンケートを実施したところ、DSCが考えていたような結果にはならなかったのですが、彼らは正解のない難しさに悩みながら、相反する考えの落としどころを探り、全校生徒に説明をした上で理解を求め、最優秀賞を設けないという結論に至ったのです。生徒主体で進めていく頼もしさを感じましたね。
エデュ:保護者の皆さまからはどのようなコメントが寄せられましたか。
乙守先生:生徒の堂々とした様子や難しい質問にも誠実に答える姿に賞賛の声が多かったですね。発表内容にわくわくできたという声もありました。
エデュ:受験生と保護者に向けてメッセージをお願いします。
乙守先生:開校3年目のドルトンは、生徒主体で大きく進化してきました。生徒にとって理想の学校を作り上げる余地はまだまだありますよ。フロンティアスピリットにあふれる生徒が入学してきてくれることを楽しみにしています。
伊東先生:生徒の「やりたい!」を全力で応援するドルトンは、これからやりたいことを見つけたいと考えている子にも向いています。多様な学び方や体験を通して、自分自身を好きになれる学校ですよ。これからも生徒だけではなく、教員と保護者の強い連帯で、彼らをフォローしながらすてきな学校を作り上げていければと思います。
編集者から見たポイント
「自分は何を学びたいのか」を中学生のうちから真剣に向き合って探究するドルトン生には、取材のたびに驚かされます。その生徒たちを全力でバックアップする学校の環境があるからこそ、ここまで内容の濃いフェスを作り上げられたのだと感じます。自分の考えを発信する力をどんどん伸ばしていく生徒たちの成長速度は、他校にはない勢いがあると強く思います。
ドルトンが掲げる学習者中心の教育メソッドはこちら ≫イベント日程
イベント名 | 日時 |
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オープンスクール | 2021年5月29日(土) 10:00~12:00 |
学校見学会 | 2021年6月5日(土) 10:00~12:00 |
学校見学会 | 2021年6月19日(土) 10:00~12:00 |
連載コンテンツ
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