都立中の形態
現在全国で設置されている公立中高一貫校は「6年間の学校生活の中で計画的・継続的な教育課程を展開することにより、生徒の個性や創造性を伸ばす」ことを目的にしています。東京都には中等教育学校型と併設型の2つのタイプがあります。
中等教育学校型
- 小石川中
- 桜修館中
- 立川国際中
- 三鷹中
- 南多摩中
- 区立九段中等
※2021年度より武蔵高附属中、富士高附属中が中等教育学校として加わります。
「一つの学校において一体的に中高一貫教育を行うもの」とされています。前期課程(中学校の学習指導要領)と後期課程(高等学校の学習指導要領)に分かれていますが、一貫教育の特色を出すために
①「中学校の段階で選択教科をより幅広く導入できること」
②中学校と高校の「指導内容の一部を入れ替えて指導できること」
以上のような「基準の特例」を設けています。中学入学時には「適性検査(選抜試験)」が実施されますが、高校には「無試験で進学」できます。外部からの高校募集は行われません。募集定員は一部例外を除き男女各80名、合計160名となっています。
併設型
- 白鷗高附属中
- 両国高附属中
- 大泉高附属中
「高校入試選抜を行わずに、同一の設置者による中学校と高等学校を接続するもの」とされます。現在ある高校をベースにして、同じ敷地内に中学校と高校が設置されることから「併設型」と言われます。
中学校は「中高一貫」の教育課程が組まれていますが、中等教育学校と同様「特色ある教育課程を編成する」ことができるように「基準の特例」が設けられています。中学入学時には「適性検査(選抜試験)」が実施されますが、高校には「無試験で進学」できます。中等教育学校との違いは、募集定員は削減されますが、外部からの高校募集が行われる点です。したがって、このタイプの学校では高校入試は継続して実施されます。中学の募集定員は、白鷗中以外男女各60名、合計120名となっています。
2019年2月に発表された「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」の中で下記のように中高一貫教育校の改善が示されています。
※白鷗高校・附属中学校については、施設整備の状況を踏まえて実施時期を決定(実施期間:2021年度以降を予定)
内容 | 対象校 | 予定年度 |
併設型中高一貫教育校において、 高校段階での生徒募集を停止するとともに、 中学校段階からの高い入学ニーズを踏まえ、 中学校段階での生徒募集の規模を拡大 |
富士高校・附属中学校 | 2021年度入学生から |
武蔵高校・附属中学校 | ||
両国高校・附属中学校 | 2022年度入学生から | |
大泉高校・附属中学校 |
教育理念は「リーダーの育成」
公立と私立の区別は、前者は社会の全員に門戸を開放し「対等平等」を基本としているのに対し、後者はあくまでも「特定の教育理念・方針」の実践・実績(自由であり、かつ特別な教育課程の編成など)への共感を基本としている点です。過去・現在においても、また将来においても、私立学校が「自由な教育」の実践を大きな魅力としているのに対して、公立学校は社会に対していかなる役割を果たしていけばいいのか、社会の費用(税金)で設立されている以上、社会へ貢献できる人材の育成が重要なテーマです。そのため公立中高一貫校の教育の基本理念として「未来を切り開くリーダーの育成」が掲げられているのです。
「リーダーの育成」の内容
主な内容は次の3点になります。
①「自然、社会、人文等のあらゆる分野に関心を持った生徒」の育成。
そのために、教育課程として、基本は「すべてを学ぶ」システム(教養教育)を用意しているのです。日本史、世界史、地理、政治経済、倫理社会のすべてといった具合です。
②リーダーに一番必要な「コミュニケーション能力」の養成。
ここには2つの課題があります。1つはしっかりとした国語の力=言語能力をベースにして、自分の考えを「理由や根拠」を明確にして相手に伝えること。もう1つは「異なる文化や考え方をもつ人」との交流、一般的に国際社会の場面で自分の意見を述べることです。
③「論理的な思考力」の養成。
課題の論理的(合理的)解決と円滑なコミュニケーションに不可欠な力です。公立中高一貫校の適性検査の多くが「論理的な思考力と表現力を必要とする問題」であること、また教育課程がこうした思考力と表現力を6年間かけて養成するシステムとなっていることが、従来の公立校と区別される重要な点だと言えるでしょう。
教育課程・カリキュラム
公立中高一貫校の6年間の教育課程の特徴をまとめてみましょう。
3段階の教育課程
多くの一貫校は6年間の課程を3つの段階に区切って、各段階でそれぞれに課程を明確にし、一定の能力や関心・態度の育成を図ると同時に、各校で重視するものについては、6年間系統的にその養成を目指しています(基礎力養成期・充実期・発展期の3つ)。
基準の特例
特徴の1つは、従来の公立校と異なり、「自由な教育課程の編成」が可能となっていることです。一貫教育の特色を出すために、
①「中学校の段階で選択教科をより幅広く導入できること」
②中学校と高校の「指導内容の一部を入れ替えて指導できること」
以上のような「基準の特例」が設けられているのです。つまり、学習単元の「順番を変えたり、内容を創意工夫したり」できるのです。例えば桜修館中では、中学校の歴史分野の授業で高校の『日本史』『世界史』の視点が取り入れられています。
習熟度別授業&土曜講座
より細かな生徒指導を行うという観点から、英数を中心に「少人数・習熟度別授業」を行ったり、基礎学力の養成の徹底を図るために、土曜日には予備講座や補習が組まれたりしています。
特色ある教育活動
朝学習や朝読書から始まり、特に一貫校では国際社会に貢献する人材育成の必要から英語の系統的かつ実践的学習に力が注がれています。立川国際中では、2年生で英語合宿、1・2年生でイングリッシュサマーセミナー、1~3年生でレシテーション(暗唱)コンテストやスピーチコンテストなどの英語発表会、5年生で英語圏への海外研修旅行など、九段中等では3年次にオーストラリア研修旅行(全員参加)などが行われます。論理的思考力の養成を重視する桜修館中の「国語で論理を学ぶ」や「数学で論理を学ぶ」も創意のある教育です。グローバル化が進む現代の中で、武蔵高附属中の目玉は「地球学」の学習です。調査・観察を通して課題を見つけ、3年生で課題研究の発表が行われます(地球学発表会)。
また、三味線や伝統工芸など日本の伝統文化の学習(白鷗高附属中)、望ましい職業観・勤労観を培い、将来、職業を通して社会に貢献する志や使命感を育成するため、総合的な学習の時間に行う「志(こころざし)学」(両国高附属中)なども特徴的です。さらに、小石川中では観察・実験を重視し、自然の様々な事象への関心を深め、かつ科学的に分析、考察する力を養う「理数教育」、オーストラリア海外語学研修[3年次・一人一家庭で全員参加・2週間]など、国際理解教育を重視した教育実践が行われています。
十分な授業時間数の確保(前期3年間)
文部科学省が設定している公立校の標準的な授業時間数と比べて、一貫校では主要5教科(英数国理社)で、より多くの時間数を確保しています。例えば武蔵高附属中では、国語・数学で1.09倍の時間数を設定しています。
都立武蔵高附属中の学習時間(中学3年間)
区立や市立などの中学校より、授業時間を確保します。※現時点での時間数の比較です
※年間8回の土曜授業を含んでいます。