inter-edu’s eye
連載第3回の記事でご紹介した、八王子中学校が2020年大学入試改革に向けて展開する、新しい取り組みの数々。「実際、どんなふうに進められているんだろう」と、思いを巡らせた方も多いのでは? 今回は、より具体的な内容について、社会科の吉村昌輝先生にうかがいました。
いま必要な「伝える力」とは
八王子中学校の新しい取り組みの根源には、生徒たちに「自分の考えを相手に伝え、理解させるだけでなく、納得させる力」を身につけさせる目的があります。同校が長年感じていた、「知識を身につける力(インプット)と自分の考えを表現する力(アウトプット)のバランスがとれた生徒をいかに育てるか」という問題意識がもととなり、そういった力を訓練するアウトプットの機会をさまざまな場に設けているのです。その一環として、ICTを活用した授業や、アクティブ・ラーニングが行われています。
こうした取り組みにより、伝えること・表現することに対するハードルが徐々に下がり、生徒たちは、アウトプットすることに前向きになってきています。また、授業自体にも積極的に参加するようになってきています。これまでの知識偏重型の教育では、実現し得なかった成長が見られているのです。
具体的な実践事例
ICTが“考える”“表現する”時間を生み出す
社会科の吉村昌輝先生
吉村先生は日本史の授業で、電子黒板やタブレットを積極的に活用しています。史跡を、地図検索サービス「Googleストリートビュー」で調べたり、近代経済史を学ぶ時に、企業サイトの沿革を見せて説明したりしているとのこと。それにより、授業中の発言が増えたり、授業内容への興味・関心がうかがえたり、と生徒たちに明らかによい反応が見られているようです。
ICT機器を“ツール”として活用することも重要なことの一つですが、吉村先生は、「使うことそのものではなく、生徒に考えさせたり表現させたりすることが目的です」と語られます。
「探究ゼミ」は“伝える”ハードルを下げる
中学3年間で行われる「探究ゼミ」は、アクティブ・ラーニングを代表する授業です。学年ごとに「調べる力」「話す力」「書く力」を身につけさせることを目標に掲げ、大学のゼミのような形式で進められています。たとえば、1年次から、図書館の活用方法や、インターネット検索による情報の取捨選択の仕方などにも踏み込んだ「調べ学習」を行います。
学園祭でのプレゼンテーション風景
具体的には、1年生が周辺地域を知る“八王子学”、2年生が修学旅行、3年生がオーストラリア語学研修をテーマに研究し、学園祭で発表します。今までは模造紙を使用して発表していましたが、「探究ゼミ」では全員がパワーポイントを使用。吉村先生は、「大切なのは、うまくできるかどうかではなく、いかに“伝える”ハードルを下げるか、ということ」と語られます。
新たな取り組みに込める想い
こうした取り組みに込められた、先生方の“想い”とはどんなものなのでしょうか。
インターエデュ(以下、エデュ):吉村先生は、新しい授業を展開するなかで、生徒のどんな成長を期待されていますか?
吉村先生:生徒たちには、教科書に太字で書かれた言葉を覚えるのではなく、その言葉を説明できるようになってほしいんです。ですから、ICT機器を使用することにより省かれる「板書する時間」などを、効率的に活用して訓練しています。
また、世の中にある学説には、“true or false”だけでなく“true or true”もあります。答えが見つからない、あるいは複数ある、といった曖昧さに負けない人間になってもらいたいと思います。これまでは、用意された答えを最短ルートで導き出す、という訓練をしてきました。その学びを土台にしながら、自分で答えをつくっていけるようになっていってほしいですね。
エデュ:そういった先生方の想いは、適性検査型入試の導入などにより一新された入試制度にも込められているのでしょうか。
吉村先生:そうですね。既存の2科型・4科型入試においても、とくに新設される「東大・医進クラス」の問題は、記述式が多くなっています。また、適性検査型入試においては、教科の枠を越えた表現力を見る問題を取り入れています。
いかに自分のもっている知識をつかって表現できるか。その力は、中学生活をスムーズに迎えることだけでなく、やがては大学で学ぶために必要なスキルや思考力にもつながっていくでしょう。
編集者が見たポイント
新しい取り組みというのは、本質が問われるもの。導入して満足!となってしまっては元も子もありません。八王子中学校の場合、軸として、かつて抱えていた問題意識、そして先生方のぶれない想いがあります。生徒の反応からも、既存の教育と融合し、うまくまわり始めていることが見受けられました。
学校説明会・イベント一覧
説明会・イベント | 日程 |
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保護者対象 premium 説明会 | 12月4日(金) 10:00~ |
入試模擬問題体験&説明会 | 12月20日(日) 10:00~ |
入試直前対策説明会 | 1月16日(土) 10:00~ |