inter-edu’s eye

今年から始まった、八王子学園八王子中学校・高等学校の学校改革「八王子イノベーション」。電子黒板やタブレット端末を使用した授業や、ネイティブスピーカーの教員による実践的な英語教育など気になる取り組みがあふれています。その中から、今回は生徒の知的好奇心を刺激する「探究ゼミ」を取材しました。

つながりが広がる「探究ゼミ」

「探究ゼミ」は、中1は「調べる」、中2は「話す」、中3は「書く」という学年別の目標を設定し、ディベートやプレゼンテーションを通して、課題解決能力やプレゼンテーション能力などを身につけていく授業です。

「歴史」では衣食住をテーマに「個人テーマ」を検討

「歴史」では衣食住をテーマに「個人テーマ」を検討

今年の1年生から対象となっており、学年別目標に対して「基礎」を学ぶ前期では、1年生は「八王子を知る」というテーマで、活動を行いました。

そして、応用力が試される後期。今年は「歴史」「欧米」「文学」「数学」「生命倫理」の5つを大テーマに据えたゼミのいずれかに生徒たちが所属し、大テーマをもとに、「中テーマ」を班ごとに、さらに「小テーマ」を個人で設定し、3月の発表会に向けて、学習を深めていきます。

クラスを超えた授業

積極的に班の話し合いをまとめていた一貫特進クラスの生徒

積極的に班の話し合いをまとめていた一貫特進クラスの生徒

他の授業では、「東大・医進クラス」「一貫特進クラス」とで分かれていますが、探究ゼミではクラス混合制となります。取材時には、個人テーマを決めるための話し合いが行われておりましたが、その様子にクラスの区別は感じられませんでした。

彼らの後輩が入学してくる来年以降は、無学年制をとるため、大学のゼミのように学年も混合になります。すでに、横のつながりが広がっている現状を見ていると、来年は中学校内の縦のつながりも期待できますね。

先生に聞く!「探究ゼミ」に隠された“ねらい”

「探究ゼミ」で、先生方はどのようなことを心がけているのでしょうか。「歴史」のゼミを担当する吉村先生に、教えていただきました。

ディベートで他者を認めることを学ぶ

東大・医進クラス担任の田上先生

ブラックジャックを題材に安楽死の是非を議論する「生命倫理」

インターエデュ(以下、エデュ):すべてのゼミの様子を拝見しましたが、「生命倫理」では、安楽死否定派と肯定派がそれぞれの主張をする時間だけでなく、相手の反論の時間もしっかり設けられ、互いの歩み寄りを重視されている展開がとても興味深かったです。

吉村先生(以下、先生):実は、「探究ゼミ」の根底には、ディベートを通して、自分と意見が違う他者を認めよう、という想いがあります。これは、八王子学園の学園モットー「人格を尊重しよう」、「平和を心につちかおう」に由来するものです。

お話しいただいた吉村先生

お話しいただいた吉村先生

エデュ:それはどういうことでしょうか?

先生:このモットーができた背景には、約70年前の戦争があります。八王子でも空襲があり、多くの人々が亡くなりました。第二次世界大戦は、各々の国の自己中心的な考えが招いた悲劇と考えられます。この悲劇を二度と繰り返さぬよう、平和を実現するために考え出されたのが、学園モットーなのです。
「探究ゼミ」のような取り組みをされている学校は他にもありますが、本校ではこの学園モットーを実現する手段としても「探究ゼミ」に取り組んでいます

エデュ:時代としても、様々な立場を認め合う姿勢が求められてきていますね。

先生:集団生活の中では、自分のやりたいことをすべてできるわけではありません。全体の中で自分のやりたいことと、相手のやりたいことのバランスを取ることは、将来、社会に出て仕事をするときのチームワークの訓練にもなると思います。

生徒が常に頭を働かせるように

エデュ:ゼミでは、班ごとに議論の進行役、発表者など、全員が必ず何かの役割についている様子が見られました。

先生:私は、良い授業というのは、生徒が「頭を働かせる」授業だと考えています。だから、「探究ゼミ」でも、役割分担をさせたり、研究テーマを自分で決めさせたり、必ず発表させたりしています。

話し合いをする生徒たち

話し合いをする生徒たち

エデュ:そうすることで、授業にきちんと向き合えるようになりますね。

先生:「一方通行の授業にしない」ということは常々心掛けています。そのためには、教員の問いかけに答えさせることが重要になります。人に説明するためには、自分が理解している必要がありますよね。つまり、そうすることで、生徒は常に頭を働かしている状態になるわけです。

エデュ:ゼミですと12~13人ほどの少人数ですし、きちんと役割分担をすることで「できる子がやればいい」という雰囲気にもならなそうです。

先生:そうした雰囲気になってしまわないようにするのも、教員がその場にいる意味だと思います。最低限の誘導はしつつ、生徒に役割をもたせていければ、と考えています。

編集者が見たポイント

「数学のプロ」小山先生のゼミ

大学を優秀な成績で卒業されたという「数学のプロ」小山先生のゼミ。専門分野のハイレベルな内容とあって、先生ご自身も楽しそうでした。

「相手の印象に残るプレゼンテーションができるようになれば、将来、社会人になったときに、役立つはずです。」と話していた吉村先生。今後は、社会の第一線で活躍している専門家や大学で研究を続ける研究者などもゲストに招きたいと、お話ししていました。本物に触れることは、生徒のキャリア教育にも繋がりますね。通常の授業では学べない、“専門”を学べる「探究ゼミ」は、お子さまの可能性を伸ばしてくれる授業だと感じました。

学校説明会・イベント一覧

イベント名 日程 時間 定員
保護者対象説明会 12月1日(木) 10:00~11:30 20組 ※要予約
ナイト説明会 12月7日(水) 18:00~19:00 10組 ※要予約
入試模擬問題体験&説明会(2科・4科型) 12月18日(日) 10:00~11:30、13:00~14:30 各100組 ※要予約
入試模擬問題体験&説明会(適性検査型) 12月23日(金) 10:00~11:30 100組 ※要予約