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2020年からの大学入試センター試験刷新や急速に進むグローバル化による英語教育の重視など、大学入試が大きく変わろうとしている今、郁文館夢学園はそれにどう対応していくのでしょうか。今年から新たに中学校に開設された「GL特進クラス」が目指すものを通して、郁文館の教育理念を土屋教頭先生にうかがいました。
※GL(グローバル・リーダー)・・・将来国際的な舞台でリーダーシップを発揮する人材育成の意。
大学入試改革に生かされる郁文館の教育観
インターエデュ(以下、エデュ):2020年に迎える大学入試制度改革について、御校はどのような対応をお考えですか?
土屋先生:私の担当する郁文館グローバル高等学校では、海外の大学を第一志望とする生徒が3割以上いるので、自然な流れで1点刻みの試験ではない国内外のAO入試や推薦入試の対策に7~8年前から力を入れてきました。よって、2020年からのアウトプットの力を重視する試験で、ようやく我々の教育力が生かされると感じています。
エデュ:入試改革の中で重要視されている「思考力」を育成するために、どのような工夫をされていますか? また、「思考力」とはどのような力だと認識していますか?
土屋教頭先生
土屋先生:まずは全教科の授業においてディスカッションベーストの授業を増やしていくこと、さらにNIE(Newspaper In Education)という新聞を使った教養教育を週3回授業として行っています。毎朝朝礼の前には、各自が新聞を読んで1つのトピックを選び、相手に自分の考えを1分間スピーチとして伝えるということも実施しています。内容に正解はありませんが、「どういう問題意識を持ったか」「どういう観点で自分の意見を構築していくのか」、そしてある意味批判的な思考を持って新しい考え方に到達していくというところまではできていると思います。ひと言で表現するのは難しいのですが、「思考力」として意識しているのはそのような、自分で考え、人生を切り開いていく力です。
エデュ:「伝統の名門進学校」と呼ばれる各校の序列が一新されるかもしれない時代を迎え、今後どのような位置付けを狙っているのでしょうか?
土屋先生:急速にグローバル化が進む今の時代では、国内と海外の大学との隔たりも段々となくなってきていると言えます。例えば環境学を学びたい生徒がいたとして、海外にその第一人者の教授がいたとき、言語の壁を越えていることができていれば、そこへ行くという選択肢が生まれます。本校から欧米圏の大学のみならず台湾や中国、マレーシアの大学へ進学した生徒が何人かいますが、その生徒たちは自分たちの夢のために英語に加えて中国語も磨きたいという理由で、アジアの大学を選びました。自分の将来の夢を叶えるために何が足りないか、ということを進路決定において考えたときに、人生の通過点として幅広い選択肢を提示できる学校にしていきたいと思っています。
2020年の大学入試改革へ対応する「GL特進クラス」
エデュ:郁文館国際高等学校から郁文館グローバル高等学校に変わって9年が経ちますが、その間蓄積されたノウハウを既存の「特進クラス」と「一般クラス」に取り込むのではなく、「GL特進クラス」を新たに開設するに至った経緯を教えてください。
「GL特進クラス」の様子。ほぼ毎日ネイティブの教員による英語のみの授業がある。
土屋先生:「特進クラス」と「一般クラス」にもグローバル高等学校の要素を取り入れようという計画はあったのですが、ディスカッションなどアウトプット型重視の授業がいきなり増えることによって、教員間の指導法に関するコンセンサスをうまく得られないところがありました。よって、まずは「GL特進クラス」というグローバル高等学校の要素をふんだんに取り入れた少人数のクラスをつくり、ノウハウが蓄積されてからその要素をほかのクラスに水平展開していこうと考えたのです。
エデュ:グローバル高等学校との連携について教えてください。まず、「バディシステム」を導入された理由はなんですか?
土屋先生:これはグローバル高等学校の生徒の方から提案があったのです。1年間の海外留学を終えた3年生の「教育ゼミ」に在籍する生徒たちが、グローバル高等学校の弟・妹的存在である「GL特進クラス」ができたことで、中学生のうちから学業面、生活面でサポートしてあげれば高等学校にとても良い流れで入学できるのではないかと発案し、教員一同が賛成して成立しました。「GL特進クラス」の生徒21人に1人1人、グローバル高等学校3年生の生徒がバディとしてついて、さまざまな面から面倒を見ていくのです。アッセンブリーという英語によるホームルームのときも隣に座り、わからないことは高校生が教えてくれます。「GL特進クラス」の生徒たちは頼れるお兄さん、お姉さんがついてくれるのでうれしくて仕方がなく、自分の将来像もはっきりしてくるようです。グローバル高等学校の生徒も「しっかりしなくては」と気が引き締まり、どちらにとってもメリットがあります。
エデュ:中学生に高等学校の授業を先取りさせることで、どのような結果を求めているのでしょうか?
英語の授業風景。「2人1組になって会話したり、ときにはゲームもしながら学んでいくのでとても楽しい」と生徒たちは語る。
土屋先生:「教育の平等性」とは何か、という問いはすべての教員が悩んでいるところだと思います。英検2級レベルの生徒がアルファベットから学ばなければいけないのは好ましい状況だとは言えないと思いますし、「学びたい」という向学心が等しく満たされる環境が、本当の意味での教育の平等性だと考えています。そういった意味で、実力に見合った授業を受けさせ、やる気を引き出し、学ぶ喜びを感じてもらうために、一部の生徒には高等学校の授業を先取りさせています。
エデュ:「GL特進クラス」の生徒の保護者からは、どのような反応がありますか?
土屋先生:保護者のみなさまは大変積極的かつ協力的です。例えば、「ヤングアメリカンズ」という中学2〜3年生向けの3日間オールイングリッシュでスケールの大きいミュージカルをつくりあげるというイベントがあるのですが、「GL特進クラスの生徒さんは特別に参加させましょうか?」とうかがったときも非常に前向きな返事をいただきました。補習などで帰宅時間が少々遅くなってもきちんとご理解をいただいています。保護者のみなさまの反応も含め、とてもよいスタートが切れていると思います。
エデュ:最後に、「GL特進クラス」やグローバル高等学校以外のクラスは、2020年の入試改革にどのように対応していく予定かお聞かせください。
土屋先生:将来大学入試センター試験がなくなり、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)と呼ばれるものにかわっても、学業面では既存の仕組みで十分に対応は可能だと思います。郁文館高等学校においては、入試の二次試験の論文や面接対策として、グローバル高等学校のアウトプット型重視のノウハウを取り込んでいく予定です。また、すべての教員が論文の指導をできるように、「論文チーム」をつくり、「特進クラス」や「一般クラス」の生徒たちにも対応していこうと考えています。
編集者が見たポイント
郁文館夢学園が一貫して掲げてきた「夢教育」は、「学力」「グローバル力」「人間力」を育成し、夢の実現に近づける教育です。思考力や表現力をはかり、多面的な人物評価を通じたグローバル人材の育成を目的とする2020年の入試改革には、郁文館の教育観がまさに当てはまると言えるのではないでしょうか。郁文館も自信を持ってすすめる教育観念の詳細を、ぜひ学校説明会でお確かめください。
イベント日程
内容 | |
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2015年 7月 11日(土) | 中学 クラブ活動体験会 |
2015年 7月 23日(木) | ヤングアメリカンズ 公演公開日 |
2015年 8月 1日 (土) | 在校生保護者主催 第2回中学学校説明会 |
2015年 8月 22日(土) | 第3回中学学校説明会&GL特進クラス体験授業 |
2015年 9月 12日(土) | 第4回中学学校説明会 |
2015年 10月 3日(土) | 理事長説明会 in 郁秋祭1日目 |
2015年 10月 4日(日) | 理事長説明会 in 郁秋祭2日目 |
2015年 10月 24日(土) | 第5回中学学校説明会 |
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