中3全員参加の海外研修 目標があるから身につく英語力
inter-edu’s eye
今年100周年を迎える城西大学附属城西中学・高等学校(以下、城西)が打ち出したのは中3に全員参加で行われるオーストラリアへの短期留学(以下、海外研修)。これまでも進んだグローバル教育があった城西の新たな取り組みです。今回は6年間のグローバル教育をどのように考えているのかうかがいました。
JOSAI Future Global Leader Program
100周年を機に新たにスタートした城西のグローバル教育「JOSAI Future Global Leader Program(以下、JFGLP)」は中高一貫の6年間に目標を持って着実に力をつけるプログラム。中学校の3年間は英語力や自立心を養い、夢の実現へ向かう高校生活の下地を作る時期と位置づけています。その3年間のゴールとして打ち出されたのが中3の海外研修です。
海外研修は2週間のホームステイ形式。始めの1週間は語学学校で英語や現地の過ごし方を学び、次の1週間は提携校で現地の学生と一緒に授業を受けます。
海外研修という大イベントがあることで中1から目標を持つことができ、日々の英語学習やプログラムで行われる行事に生徒自身が大きな意味と意義を感じられるようになります。「学んだことすべてがオーストラリアにつながる」という中学校生活に1本の軸を持たせたプログラムです。
海外研修は希望すると6週間に延長をすることも可能。高校へ進学後も中期・長期の留学プログラムがあり、中3のオーストラリアでの経験はその後の確実な自信へとつながります。
生徒自身で目標を持って3つの力を伸ばす
長年留学プログラムに携わってきた国際交流課の高橋嵩先生にお話をうかがいました。
高橋先生:JFGLPにおける中学校の3年間では、海外研修で自信を持って学べるよう「語学力」「基礎学力」「国際感覚」という3つの力を大事にしています。
まず日常生活で必要となる「語学力」は、4技能を意識しながら、週3日行われるネイティブ教員によるAll English授業や、放課後のJOSAI Academic English、英単語統一テストなどで向上を図っています。また、今年度からは1人1台タブレットを持ち、これまで行って来た洋書の多読は、気に入ったフレーズを音声で吹き込み、ネイティブ教員に送信するといった形式へと発展しています。
次に「基礎学力」は、研修先の授業内容を理解できるよう、英語以外の科目についても、アクティブラーニグやPIL型教育によって、思考力・表現力・協調性を育み、生徒主体で学習を進める力を伸ばしています。
そして、「語学力」「基礎学力」に加えて、海外で必要になるのは「国際感覚」です。海外に行ったときは、一方的に相手の国の文化を知ろうとするのではなく、自分の国のことも話すことができなければ、当然ながら会話に面白みが出ません。私自身、これまで6回短期留学の引率をしていますが、ホストファミリーの方々と話をすると、自国の文化を教えるために私たちを受入れているのではなく、私たちの文化に興味があるからこそ受入れをしていただいていることに気がつきます。
そのため、中学校の3年間では、稲作体験や鎌倉での校外学習といった行事を通して自国の文化を学び、“世界の中の日本”の学校に通う学生としての「国際感覚」を身につけられるようにしています。
学校生活のすべてがオーストラリアへつながるプログラムです。中学校の3年間、大いにチャレンジし、その結果大いに失敗して構わないのです。むしろその失敗の中から、たくさんのことを学んでほしいですね。
目標があるから意識して勉強できる きっと自信になる
生徒たちはどのように中3の海外研修をとらえているのでしょうか。中1の生徒と担任の伊東美香先生にお話を聞きました。
インターエデュ(以下、エデュ):入学理由を教えてください。
島﨑くん:文化祭がきっかけです。先輩も優しくて雰囲気もよかったので入りたいなと。実際に入学して学校生活を楽しいと感じています。
石井さん:私は留学や英語に力を入れているからと親に勧められて入学しました。
小川くん:姉が城西生です。入学前から海外研修のことを聞いていたので、入学前から期待していました。
エデュ:海外研修のために何か頑張っていることはありますか。
福田さん:単語さえ分かれば意外としゃべれるし、相手も分かろうとしてくれると先輩に聞きました。だから今は単語テストを頑張っています。
長谷川くん:学校でオンライン英会話ができるのですが、今の僕ではまったく聞き取れませんでした。ネイティブの発音は難しいと実感しました。中3までにもっと勉強して現地でチャレンジしたいです。
伊東先生:まだまだ英語に苦戦してるようですね。英語だけでなく、今年度からは彼らに国際感覚を身につけさせるため、農業体験をはじめました。半日知らないご家庭で農業体験をさせていただくというものです。日本語が通じるとはいえ、見知らぬ家庭に入りコミュニケーションを取るという経験はホームステイの練習になります。そして日本の文化を知ることで、海外の文化を感じたときに日本と比較ができるようになります。農業体験は海外研修への土台を作る行事です。
エデュ:農業体験ではどのようなことを体験できましたか。
福田さん:農業体験で行ったところには、自分の住んでいるところと違って虫がたくさんいました。虫は苦手なんですが、体験しているうちに農業には欠かせないものと感じ、自然と抵抗も少なくなりました。
石井さん:知らない人との交流は緊張しましたが、海外研修のことを考えるとよい経験になったと思います。
小川くん:日本人同士だから言葉も通じていろいろな話が聞けました。でも3年後は言葉の分からない地で初対面の人と接することになります。この経験が3年後の海外研修で活きてくるのではないかと思っています。
エデュ:海外研修は自分にとってどのような意味があると思いますか。
島﨑くん:海外研修では知らない人、言葉が違う人と交流するので、何が違うのか、どう違うのかを感じて吸収できるのではないかと思います。
福田さん:近い将来のことですが、海外へ行って生の英語を日常会話として聞けることは、試験方法が変わる大学入試にも役立つのではないでしょうか。
長谷川くん:まだ行っていないですが、海外研修できっと自信がつくのではないかと思います。将来海外で活動することになっても自信があれば困ることはないと思っています。
今後の展望
高橋先生:海外へ行ったときに会話が続けられずに困ることの1つに、「相手と何を話せばよいか分からなくなる」ということがあります。そのため、英会話力の向上とは直接関係ないように思えますが、農業体験という“経験”をしたということが重要で、それが海外の人たちと対話するときのネタになれば、大きな意味があるのです。
そして、ホームステイ先や現地校では、見るもの聞くものすべてが、今後の人生にとって大きな“経験”になります。日本だけで過ごすのとは違う経験をすることで、高校進学後の視野も広がります。高校では、長期留学や中期留学にチャレンジをすることも可能です。
海外研修は中学校のゴールと位置づけていますが、もちろんそれで終わりではありません。目標はもっと先。城西で学んだことをベースに、5年後、10年後、あるいは20年後、どのような時代が来ても、城西で培ったグローバルマインドを胸に、自信を持って生きていける人に、そして、どんな社会にも適応し貢献できる人材になってほしいですね。
伊東先生:学年全体が海外研修を意識して過ごしていると感じます。生徒たちはすでにグローバルな視点も持っています。英語ができれば未来が広がり、自信と勇気も得られます。研修でさまざまなことを学び英語力を上げ、将来につながる教養を身につけてほしいと思います。
編集者から見たポイント
「どんな時代にも対応できる土台を生徒たちに作ってもらいたい」という先生の熱い思いを理解して成長しようとしている生徒たちのようすが印象的でした。1本筋の通った教育は生徒にとって大きな財産になると感じます。
自信を持って国際社会へはばたく人を育てる城西のJFGLP。グローバル教育に関心のあるご家庭にはぜひとも注目してほしい取り組みです。
これからのイベント日程
イベント名 | 日時 | 備考 |
---|---|---|
第2回中学一日体験入学 | 11月11日(日) 10:00~ | - |
第4回中学校説明会 | 11月24日(土) 14:30~ | 個別相談・施設見学ツアー |
第1回入試説明会 | 12月8日(土) 14:30~ | [受験生向け] ミニ授業体験を並行実施 個別相談・施設見学ツアー |
第2回入試説明会 | 1月12日(土) 14:30~ | [受験生向け] ミニ授業体験を並行実施 個別相談・施設見学ツアー |
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