αゼミは「実社会をフィールドとする学び」城西の新しい教育活動
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「自由主義教育」を礎として、生徒一人ひとりの個性を尊重しつつ、自立した人材を育ててきた城西大学附属城西中学・高等学校(以下、城西)。実社会と接する場面を積極的に設けており、商品開発や被災地訪問などを通して、生徒が見識を深めています。そうした体験的な学習の代表とも言える「αゼミ」をはじめ、教室の外へ広がっていく城西の学びに迫ります。
「生きる力」を養うαゼミ!選べる多彩な講座
αゼミは高校1〜3年生を対象とした希望者制の講座。「表現力と質問力養成」「地域活性化」「英会話」など多彩な内容が設定され、受講者はすべてのプログラムを受講していきます。ご担当の先生に指導にかける思いをうかがいましょう。
αゼミの指導に関して大切にしていることを教えてください。
小林先生教員がファシリテーター(進行役)に徹することです。ある程度の助言はしますが、すべてを教えるということはせず、生徒が主体となり進めていくことを原則としています。αゼミの目的は生きる力の習得です。指導しすぎないという方針のもと、生徒たちが自立心を発揮するようになり、うれしく思っています。
オリジナル入浴剤を考案!町おこしを企画する生徒たち
2022年、高校3年生が所属するαゼミは、地域活性化を目指してオリジナルの商品を開発するという本格的な活動を展開。高校3年生の佐藤友柊さんのお話から、その道のりを辿ります。
所属するゼミで取り組んできたことを教えてください。
佐藤さん修学旅行で訪れた岡山県高梁市の吹屋の町おこしを目標に、江戸時代に赤の顔料「ベンガラ」の産地として栄えた歴史と、地元で生産されている唐辛子を使った商品の開発を進めてきました。さまざまな商品を考案し、最後は唐辛子の成分を含む赤色の入浴剤を企画し、商品の完成に向けて動いています。
そちらの商品はどのように着想しましたか。
佐藤さん辛味成分のカプサイシンで体が温まるのではないかと気づき、地元の方の意見を聞きながら、同級生のみんなでアイデアを具体化してきました。
「本当に良いプレゼンテーションとは」気づく体験
現地の方にアイデアを伝えるなかで、大変だったことはありますか。
佐藤さんプレゼンテーションで商品の企画を発表したのですが、思うように上手くできず悔しかったです。ですが、現地の方が「吹屋のことをたくさん考えてくれたことがすごくうれしい。ありがとう」という言葉をかけてくださったんです。練習したとおりにできることだけが成功とはかぎらないと思えました。
プレゼンテーションで力を入れた点はどこですか。
佐藤さん作っている自分たちは伝わりやすいと思っているプレゼン資料も、客観的に見ると何を伝えたいのかわかりにくいことがあり、パワーポイントや原稿、実際のプレゼンをいろいろな先生に見てもらい、改善点を指摘してもらいました。注目してほしい部分では身振り手振りをつけたりプレゼン資料にアニメーションを付けたりしました。当日は、たくさんの方に見ていていただいたので、後ろのほうまで届くよう大きな声で元気良く、笑顔で発表を行いました。
今回の活動を通して、ご自身で成長を感じたところはありますか。
佐藤さん学校外の方にプレゼンテーションをするにあたり、客観的に発表内容を見直すことが求められました。その中で、聞き手がどう感じるかを冷静に想像するようになりました。「自分たちで解決する力」も身につきました。先生が行き詰ったときも明確に答えを出さずに、ヒントをくれるので深く考えさせられることが多かったです。
成功のカギは協働!一人ではできない学び体験
αゼミは校内でもアクティブに活動中。高校3年生の繁谷美来さんは受講してきた「英会話のプログラム」「表現力と質問力養成講座」について、その充実度を語ります。
受講してきたαゼミの活動内容を教えてください。
繁谷さん毎週の講座で英会話やプレゼンテーションの経験をたくさん積んできました。いろいろな人の意見を聞いて、自分で深く考える場面が多いので、違った視点に立って考えることができて楽しいです。
αゼミと普段の授業の違いを教えてください。
繁谷さんコミュニケーション能力と自分の考えの言語化がより重要になってくるところです。同じ課題を一緒に考察し、その成果を発表することがメインなので、どうすれば上手く協働できるかがカギになります。
αゼミを通して、得られたものは何ですか。
繁谷さんゼミでプレゼンテーションを何回も行うなかで、よりよい表現方法が見えてきた気がします。スライド資料に手書きの文字を混ぜてみよう、絵や図も取り入れてみよう……といった発信する側だけではなく、見る側の視点により立った工夫ができるようになりました。αゼミは、一人では思いつかないような考え方が協働することで生まれ、それを形にする貴重な体験ができるんです。
修学旅行で被災地訪問「社会を学ぶ本気」が光る
社会を見つめること、人と向き合うこと。こうした「本物の体験」を重視する姿勢が色濃く表れるのはαゼミだけではありません。2021年、東日本大震災から10年の節目を迎えたことを受け、修学旅行の行程の中で被災地訪問を行っています。行先は岩手県宮古市・大船渡市・釜石市・陸前高田市で、64名の生徒が参加。どのような学習をしたのかをご担当の岡嶋沙紀先生からお聞きしました。
被災地訪問がどのように行われたか詳しく教えてください。
岡嶋先生全体で宮古市に赴き、そのほかの地域へはグループに分かれて訪問しました。大船渡市では大船渡津波伝承館を見学。釜石市では、いのちをつなぐ未来館、釜石鵜住居復興スタジアムに向かい、避難路追体験も行いました。陸前高田市では、語り部の方にバスに同乗していただき、震災遺構を巡りました。
実施の狙いを教えてください。
岡嶋先生修学旅行を「楽しかった」だけで終わらせるのではなく、その地域が抱えている問題を知り、生徒たち自身がどんなことができるのかを考察する探究学習を取り入れたいと考えました。同じ日本で起きた大震災を他人事にはせず、考え、学んでほしいという目的がありました。
被災地訪問を終えて、生徒に変化は見られましたか。
岡嶋先生もともと、生徒たちにとって東日本大震災は「テレビで見たもの」「教科書で知ったもの」でした。しかし、震災遺構や復興に向けた取り組みを目の当たりにし、現地の方に話を聞くことで、現実に向き合うことができたと思います。他人事ではなく、自分たちにいつ起こってもおかしくないという認識を持ち、準備をしなくてはならないと思いを新たにしたようです。
印象に残った生徒の姿を教えてください。
岡嶋先生参加生徒全員で、津波被害で鉄骨のみとなってしまった宮古市の震災遺構「たろう観光ホテル」を見学したときのことです。現場に足を踏み入れたうえで、震災当時の映像資料を閲覧しました。津波が押し寄せる瞬間などのテレビでは放送されない緊張感のある場面が記録されていました。改めて東日本大震災について知った生徒たちからは、災害時に自ら行動しようとする意欲が伝わってきました。もし、大規模な災害が起こったとき、高校生である自分たちがどのような手助け・ボランティアができるのか。このことを真剣に考える姿が心に残っています。
編集後記
先行きの見えない現代社会。子どもたちには答えのない問いに向き合う経験を積みながら、将来のキャリアプランを考えることが求められています。決して簡単なことではありませんが、新しい教育活動を通して丁寧に寄り添う城西では光明が見えるのではないでしょうか。勉強はもちろん、「大人になる前に何かに挑戦してみたい」という意欲のある受験生の方! きっと城西はピッタリの学校ですよ。
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