inter-edu’s eye

美術に特化した私学として、日本で最も長い歴史を持つ女子美術大学付属高等学校・中学校が、今年10月30日に創立100周年を迎えました。これを記念した式典でこれまでの伝統と歴史を祝福するとともに、次の100年に向けた新たな一歩を踏み出しました。今回は、女子美付属の歴史を振り返るとともに、盛大に執り行われた式典の様子をお伝えします。

女子美付属が創り出してきた歴史

女子美付属のあゆみ

女子の新しい生き方を示す、女子美の学び舎

一人の女性として、そして一人の人間として生きること。自分の中に育んできた美術の力によって、心豊かな毎日を生み出していく人間となり、社会を、文化をも支える人間になること。「良妻賢母」を女性の理想像としていた明治時代に、女子の新しい生き方を示したのが女子美でした。
こうした革新的な考えは、永く校風に受け継がれ、「美術をとおして、我が国の文化に貢献する有能な女性を育成する」という現在の教育理念につながっています。美大の付属校として、中高一貫で、美術と一般教科の両方を重視する教育を進める学校は全国でも稀有な存在であり、これまでに芸術分野をはじめ、さまざまな分野で活躍する女性を数多く輩出しています。

100年の伝統を祝福する式典

記念式典特別リポート

記念式典

中野サンプラザ大ホールで行われた記念式典には、卒業生をはじめ、在校生や関係者など多数が参加。女子美術大学で名誉理事長を務める、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生もご出席されました。
式典は、管弦楽部の演奏で華やかに幕を開けました。来賓による祝辞のほか、中学生・高校生が創立100周年に対する思いを披露。生徒・教職員による合唱では、美しいハーモニーが会場に響き渡り、一気に祝福ムードに包まれました。
また、卒業生であり日本を代表する女優、桃井かおり氏による記念講演も。在校時の思い出や女子美付属の魅力を、温かな語り口で披露して式典に華を添えました。

式典参加者・卒業生からのメッセージ

卒業生 桃井かおりさん

「発想すること」と「個々で向かい合うこと」が今の糧に

桃井かおりさん

制服にあこがれて入学した女子美付属。入学当初、似合わなかった制服が、だんだん似合っていく。そうした日々が今でも愛おしいです。私の50%は、女子美付属で過ごした時間で作られたと思っています。女子美では、「発想すること」「個々で向かい合うこと」を学びました。たった一人で作品を仕上げなければならないという経験は、今の俳優や監督を務めるにあたり役に立っています。

桃井かおりさん

最近では、監督として作品を完成させるにあたり、デッサンが役に立ちました。英語や日本語でいくら説明しても説明できない表現を、絵で示したのです。すると、私が思っているイメージを、役者さんやスタッフさんと共有することができるだけでなく、私が思っている以上のイメージを膨らませることができました。卒業以来のデッサンでしたが、幅を広げたいとき、自分の背丈では無理になったときに支えてくれるのは、女子美での学びであると実感しました。
美術を手に入れたことで、「一人で発想する」「個を磨く」ことを知ったおかげで、これからの将来、寂しくないです。在校生のみなさんには、女子美での学びを大切にしてほしいと思っています。

卒業生 秋田悦子さん(ポリマークレイアクセサリー教室主宰)

女子美は、現在の自分へ導いてくれた「原点」

秋田悦子さん

私にとっての女子美付属は、現在の自分へ導いてくれた人生の「原点」です。大好きな美術に囲まれて、幅広い分野の教養を身につける機会を与えてもらいました。当時は課題を学ぶことに必死でしたが、現在は中学高校で培った基礎がとても役立っています。
女子美生は個性豊かで自分自身をしっかりと持ったお友達ばかり。お互いに認め、補い合い、出来上がるチームワーク、そういった学生生活で築いていく団結力や表現力は、将来必ず発揮されます。女子美パワーが世界に広がる事を楽しみにしています。

次の100年を紡いでいく女子美生たち

「100周年ロゴマーク」の制作者 平成26年度卒業生 鈴木綾さん

鈴木綾さん

私は中学からの女子美生で、これ以上ないくらい楽しい学校生活を送らせてもらえました。女子美で過ごした時間はかけがえのないものだと実感しています。
卒業した後も、女子美に行くといつでも先生が話を聞いてくださるので、本当にアットホームな学校だと思います。私はそんな女子美が大好きです。だから、女子美生のみなさんには、今をとびっきり楽しんでほしいです。
次の100年、200年と末長く続いていくことを願っています。

壁画・原画制作者 高校3年生 牛山明日香さん

牛山明日香さん

100周年にふさわしい素敵なものにしようと思い、描きました。自分のデザインが選ばれると思っていなかったので、今でも信じられないくらい驚きと喜びでいっぱいです。制作中は、実際にモザイク壁画になったときのことを具体的に想像できるように、タイル風に細かく線画を描いて、カラフルで自然な流れのある配色を心掛けました。絵の中には、女子美の歴史が無限に続いていくよう願いを込めました。

次の100年に向けてあゆみを進める在校生のメッセージ

鏡友会会長 高校2年生 功刀果奈絵さん&鏡友会中学副会長 中学3年生 中野桜さん

功刀果奈絵さん、中野桜さん

100周年という節目に、生徒として在籍できていることを誇りに思っています。
好きなものは好きだと、個性を隠さずにありのままでいられる空気が好きです。
これからも背筋を伸ばして歩んでいきたいと思います。

編集者が見たポイント

たくさんの卒業生やご父母の支えによって紡がれてきた、女子美付属100年の歴史。美術を中心にして感性を磨きながら、文化の担い手として創造性豊かな人間を育成するという学校の教育理念は、いつの時代でも多くの方から支持されるものに違いありません。

2015年 公開行事

日程 時間 プログラム
2016年1月9日(土) 中学10:00~
高校16:00~
ミニ学校説明会
2016年3月2日(水)~8日(火) 9:30~17:30
※会場未定。詳細は決定後、お知らせします。
高等学校卒業制作展