北海道へ!5学年の生徒が参加した「理科見学旅行」
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女子聖学院中学校高等学校(以下、女子聖)には、希望制の行事「理科見学旅行」があることをご存じでしょうか。近年はコロナ禍で休止していましたが、今年7月に再開し、中2から高3までの計43名が参加。理科見学旅行の意義や今年度の感想、自身に与えた影響について、先生や在校生、卒業生が語ってくれました。
「物理・化学・生物・地学」4分野の要素を組み込む体験学習
まずは理科見学旅行を知るため、理科ご担当の松ノ井覚先生に概要をうかがいます。
理科見学旅行の概要と目的を教えてください。
松ノ井先生1970年から毎年行われている希望制の旅行で、理科をテーマに日本各地で学習します。一見、理科とは無関係に見える事柄にも理科的な目を向け、その経験から物事を複眼的に捉えることの面白さを知り、生徒が自分の目で見て体験することで理解を深めます。
さらに、その土地の文化や先端産業、伝統産業に触れる機会も大切にしています。生徒にとって、知らなかった世界との出会いが”次なる未知”への好奇心につながり、その後の学びと将来に向けた歩みの原動力となります。旅行を通しての「着眼点」と「実体験」が縦糸と横糸になって理科見学旅行を作り上げています。
対象の学年を教えてください。
松ノ井先生中2から高3が対象です。今年度は中2が15名、中3が6名、高1が11名、高2が8名、高3が3名で、合計43名が参加しました。
今年度の行先は北海道
今年度のプログラムはどのようなものでしたか。
松ノ井先生行先は北海道の道東です。まず世界自然遺産の知床に行き、現地のガイドとともに知床の森でネイチャーウオッチングを実施しました。
続いて羅臼では、日本最北の深層水給水施設で解説を聞きながら見学し、酪農の町・別海町ではバイオガスプラントを見学して地域循環型の発電を、標津町サーモン科学館ではサケの解剖を見て特性を学びました。
そして釧路湿原では、温根内ビジターセンター研究員の先生と湿原を歩きながら、湿原の成り立ちや温根内周辺の植生を学びました。
生徒は現地でさまざまな体験をしたのですね。旅行にあたり、事前学習は行われましたか。
松ノ井先生事前学習は15回行いました。各回のテーマは、「クジラとイルカ」「釧路湿原の動植物」「昆布」「北海道の温泉」「北海道の気象」「サケ」「北海道の海洋生物・陸上生物」「釧路湿原の成り立ち」「知床半島の成り立ち」「バイオマス発電」「羅臼の深層水」「北海道の星空」などです。
女子聖の理科教育
こうした行事を1970年から続ける女子聖では、どのような理科教育を行っているのでしょうか。
松ノ井先生自然科学全分野を背景とした”総合知”をもって、現代の諸課題に正しく向き合える人物を育てたいという信念が本校の理科教育に息づいています。このため、地学についても古くから専任教員を置いており、4分野についてバランス良く学べるカリキュラムを組んでいます。物理・化学・生物の各分野とともに、さまざまな地球規模の社会的課題とつながる総合的な科目として、長年にわたって地学を大切にしてきました。
したがって、理科見学旅行に関しても、物理・化学・生物・地学の4分野の要素を必ず組み入れることにこだわり、毎年計画を立てています。
印象的だったオホーツク流氷館とネイチャーウオッチング
今年度の理科見学旅行に参加した中高生に感想をうかがいます。
中3 A.Aさん
理科見学旅行の参加歴:1回(中3)
女子聖に入学したきっかけ:付属の小学校に通っていたため
所属クラブ、委員会:宗教委員会
なぜ理科見学旅行に参加したのですか。
A.Aさん理科の勉強に特化した旅行は他校では聞いたことがなく、面白そうだと思ったからです。
今年度の旅行で印象に残った場所や体験と、その理由を教えてください。
A.Aさんオホーツク流氷館です。施設内見学や、流氷を見たことが楽しかったからです。
事前学習の感想を聞かせてください。
A.Aさん理科の先生方から専門的な講義を受け、普段の授業とは違うことを学べて刺激を受けました。
高3 A.Hさん
理科見学旅行の参加歴:3回(中2、中3、高3)
女子聖に入学したきっかけ:ミッションスクールだったことと、知人のすすめがあったから
所属クラブ、委員会:茶道部
将来の夢:飢餓の解決に貢献すること
なぜ理科見学旅行に参加したのですか。
A.Hさん初めて参加した中2のとき、理科見学旅行のファンになったので、継続して参加するようになりました。旅行先の食事がとてもおいしいことも理由の一つです。
今年度の旅行で印象に残った場所や体験と、その理由を教えてください。
A.Hさんプレペの滝でのネイチャーウオッチングです。ガイドの方が植物や昆虫、動物のことを詳しく解説してくれて、勉強になったからです。事前学習で得た知識をもとに、より深い学習ができました。
事前学習の感想を聞かせてください。
A.Hさん先生方が旅行先の施設や土地を訪れたとき注目すべきポイントを交えながら講義してくれるので、旅行が楽しみになります。今年度は、添乗員の方による事前学習も一度ありました。
影響を受けた「ウミガメの産卵観察会」
理科見学旅行は参加者にどのような影響を与えているのでしょうか。中2から高3まで5年連続で参加した卒業生にお話をうかがいます。
大学生 M.Hさん
女子聖卒業年度:2020年度
進学先:北里大学 海洋生命科学部 海洋生命科学科
女子聖に入学したきっかけ:「小6の夏に『夏の女子聖体験日』に参加して、とても楽しかったからです。また、いきいきと楽しそうな在校生の姿や、セーラー服、チャペルがある美しい校舎に憧れました。入学前から先生に顔を覚えていただいたほど説明会に通いました」
理科見学旅行で一番印象に残っている体験やプログラムは何ですか。
M.Hさん高2のとき、屋久島の永田いなか浜で行ったウミガメの産卵観察会です。まず、屋久島でウミガメの保護活動に取り組む永田ウミガメ連絡協議会の方からレクチャーを受け、ウミガメが浜に上陸するのをひたすら待ち続けました。結局、2時間ほど待ってもウミガメに出会うことはできませんでしたが、待ち時間に目にした、それまで見たことがないほどきれいな星空が心に残っています。
永田浜では増加した観光客によって砂が踏み固められ、子ガメの孵化率が減少しているそうです。繊細なウミガメが安心して産卵できる浜を守る大切さを学び、私たちのような観光客が野生生物の生活に及ぼす影響について考えさせられました。
理科見学旅行がご自身にどのような影響を与えたと感じていますか。
M.Hさん参加するたびに自分の世界がどんどん広がりました。一つの旅の中で地質、生き物、産業、食文化など、さまざまな分野に触れるので、現地に行ってから初めて知ることばかりでしたし、帰ってから気になったことをさらに調べていくことで、自分の興味の幅が広がったと感じます。
また、旅行で見聞きしてきたことをまとめる「しおり」のコンテストで先生方から評価していただいたことは、大きな自信になりました。そして、一緒に旅をした先生方や先輩・後輩とは学年を超えたつながりができ、洞窟探検にパラグライダー、カヤックなどアクテビティにチャレンジして、自然の中で遊ぶ楽しさも知りました。
海洋生命科学部に進学したのは、幼稚園児の頃からサメやクジラといった海の生き物に興味があったからです。理科見学旅行に参加して自然観察の楽しさに触れ、フィールドワークができそうな学部を選びました。参加して得た学びとたくさんの思い出は、私の宝物です。
編集後記
卒業生のお話からは、女子聖が理科見学旅行に込めた思いが生徒に伝わっていることがうかがえます。こうした経験は家族旅行では難しく、他校でもあまり類を見ません。学校の方針に根づいた魅力的な行事が女子聖に数多くあることを多くの受験生に知っていただきたいです。
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