白百合学園と語る、女子校の魅力

白百合学園と語る、女子校の魅力

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歴史ある名門女子校が立ち並ぶ千代田区。神田女学園中学校高等学校(以下、神田女学園)はその区内・神田猿楽町にあります。この地はかつて白百合学園中学高等学校(以下、白百合学園)もあった深い縁のある場所。今回、この千代田区で125年以上女子校として歩む両校の対談が実現。白百合学園の田畑文明先生と神田女学園の校長・高橋順子先生に女子校のよさや両校の特色ある言語教育、学校の将来像などについてじっくりと語り合っていただきました。

学校公式サイト≫

両校の歩み

白百合学園と神田女学園の歴史をたどると千代田区神田猿楽町にゆかりのある学校だという共通点が見つかります。神田女学園は1890年、当時極めて低調だった女子教育に力を入れたいという地域の人々の思いから誕生した学校で、設立から現在まで猿楽町に校舎を構えています。
一方、白百合学園は1881年にフランス人修道女が猿楽町に設立しましたが、関東大震災で校舎が全焼したために現在の校舎がある九段へと移転しました。
多くのご家庭から愛される両校。建学のかたちはさまざまですが、どちらにも長年支持され続ける女子校としての教育があります。

女子校の環境は精神的にも学業的にも成長しやすい

自立心やリーダーシップが身につく

昨今、共学人気が高まる中でも別学であり続ける両校。
その理由をうかがうと「女子校ならではの素晴らしさがたくさんあるからです」と白百合学園の田畑先生は熱くおっしゃいます。

白百合学園の広報部長を務める田畑文明先生
白百合学園の広報部長を務める田畑文明先生

田畑先生が女子校のメリットとして1番に挙げたのは、「自立心やリーダーシップが育つこと」。共学では力仕事は男子が担当といった具合に、自然と男子と女子で役割が別れてしまいます。男子がリーダーシップをとり、女子が遠慮してしまう場合も少なくありません。
しかし、女子校ではすべてを女子だけで行うため、誰かに頼るのではなく自ら進んで行う自立心やリーダーシップが養われます。これは生徒自身も卒業後に強く感じるメリットの1つだといいます。

女子に適したカリキュラムで学力が伸びる

女子の特性に合った学習ができるのも女子校の利点。例えば男子が数学的な科目を得意とする傾向がある一方、女子は言語的な科目を得意とする傾向があります。国語では物語の登場人物の感情をより深く考察するような姿勢を伸ばし、数学ではより丁寧に学習を進めるように心がけるなど、女子の特性に合わせて授業ができます。また、美術・音楽・書道などの芸術系の授業も高いレベルで行うことができているといいます。「女性ならではの豊かな感性に驚かされることも多いですね」と高橋先生は語られました。

神田女学園の生徒のようすを熱心に語る校長の高橋順子先生
神田女学園の生徒のようすを熱心に語る校長の高橋順子先生

個性を伸ばしながら、一生ものの友情が育める

生徒たちが感じている女子校の魅力は、一生かけて付き合える同性の友達を見つけやすいところにもあります。女子校は異性の目がないため、気兼ねや計算が必要ありません。自分の個性を抑えずに本音で語り合い、物事に取り組むことで深い友情が育まれます。女子校は、人間形成において大きな強みがある環境なのです。
このような環境で育った卒業生たちについて、田畑先生は「リーダーシップを発揮するだけでなく、目立たないところでもしっかり頑張って社会を支えている印象があり、とても誇らしいです」と目を細めます。
高橋先生も「同性との付き合い方が上手になるので、卒業後に人間関係で悩むことが少ないようです。みんな『女子校でよかった!』と言ってくれます」と卒業生たちの気持ちを語ってくださいました。

卒業生の声≫

両校の言語教育

これまでの連載でも取り上げましたが、神田女学園ではトリリンガル教育を行っています。英語に加え、中学3年生からフランス語、中国語、韓国語の3か国語の中から1つを選択して毎週学ぶカリキュラムです。一方、白百合学園は英語とフランス語の教育に力を入れています。

6年間でしっかりフランス語を習得できる

フランス語が学びたくて入学する生徒も多いという白百合学園は、そもそもフランス発祥の修道会が設立した学校。最初の校名は『女子仏学校』で、設立当初からフランス語をカリキュラムに取り入れていました。戦前は外国人生徒も数多く在籍する寄宿舎があり、当時としては先進的な教育を行っていたといいます。
その伝統は今も続き、フランス語は英語とともに中学1年生からの必修科目。フランス語を高校まで学んだ生徒は日常会話には困らないほどの習熟度に達し、フランス語で大学受験をする生徒もいるほどです。

白百合学園の「外国語の部屋」には、毎日昼休みに英語とフランス語のネイティブの教員が在室。生徒は自由に来室して英語やフランス語で会話する。
白百合学園の「外国語の部屋」には、毎日昼休みに英語とフランス語のネイティブの教員が在室。生徒は自由に来室して英語やフランス語で会話する

学んだ言語を活用する取り組みも盛んで、フランスの学校との交換留学や日本に留学中のイギリス人の奨学生を学校に招く交流プログラム、フランス大使館訪問などを行っています。

世界に触れ、視野が広がる多彩なプログラム

神田女学園も国際交流が活発で、世界各地の姉妹校や交流校と相互訪問を行い、お互いの文化や言語を知る機会が数多くあります。また、留学制度も充実しており、アメリカ、カナダをはじめ、オセアニアの各国や東南アジア諸国への留学が可能です。海外に出るチャンスが多くあるため、近年人気が高まっています。今年の冬には、学校初となるフランスへの語学研修を行う予定です。

神田女学園では世界各国にある姉妹校との相互交流など、行事の枠を超えて学校の生活の中で自然に行われている
神田女学園では世界各国にある姉妹校との相互交流が行事の枠を超えて学校の生活の中で自然に行われている

「3か国語を学ぶと国際社会や世界史、文化をより広い視野で捉えられるようになります。これはグローバル化した現代社会においても非常に役立つ力です。本校の生徒には英語とフランス語を学ぶことで、アメリカとヨーロッパ両方の視点から物事を捉えられるように成長してほしいです」と語られる田畑先生に高橋先生も深く同意し、今後のフランス語の重要性やアジア圏の留学など両校の取り組みに関心を寄せ合っていました。

神田女学園の留学制度をチェック≫

ボランティア活動や行事から見える両校の特徴

共通点が多い両校ですが、1つ大きな違いがあります。それは教育理念の中心にある宗教の教えがあるかどうかです。
白百合学園はカトリックのミッション校で、「受けるより与える方が幸いである」というキリストの「愛の教え」のもと、学園生活を送っています。神田女学園の教育理念に宗教の教えはありませんが、両校とも長年ボランティア活動を続けています。

キリスト教精神・初代校長の教えに基づくボランティア活動

白百合学園では多様な宗教教育を行っていますが、中でも特に大きな役割を担っているのがボランティア活動です。「東日本大震災以降、毎年夏休みに参加者を募り、被災地でのボランティアを実施しています。『今年も来てくれてありがとう』と被災者の方々から感謝の言葉をいただくことは中高生にとって新鮮で、かけがえのない体験になっています」と田畑先生は語ります。

白百合学園の毎年夏休みに行う東日本大震災の被災地訪問のようす。福島県から避難している児童の学習支援なども生徒有志が主体となって実施している
白百合学園の毎年夏休みに行う東日本大震災の被災地訪問のようす。福島県から避難している児童の学習支援なども生徒有志が主体となって実施している

神田女学園でボランティア活動が盛んな理由は、初代校長の『目的一貫、あなたの敵を愛せ』という教えにあります。『敵だと思える人に対しても思いやりの気持ちを持とう』という考え方が深く根づいており、ボランティア活動への積極的な参加へとつながっているのです。保育園や介護施設を訪問したり、クリスマスコンサートの際にフェアトレードのチョコレートを販売するなど、さまざまな活動を行っています。

女子校の生徒はおとなしい? 生徒の楽しみはスポーツ大会!

白百合学園の生徒は「おとなしい」というイメージを持たれがちですが、実際は「素直で明るい」と田畑先生はおっしゃいます。
そんな彼女たちが最も楽しみにしている行事が、毎年秋に行われる「球技スポーツ大会」です。球技を楽しむだけでなく、チームごとに予定を立てて練習を進めることで、自主性や考える力、チームワークを養うよい機会になっています。

はちまきやゼッケンなども生徒たちが工夫を凝らして制作する、白百合学園の「球技スポーツ大会」のようす
はちまきやゼッケンなども生徒たちが工夫を凝らして制作する、白百合学園の「球技スポーツ大会」のようす

田畑先生は「大会では生徒たちが考案した競技を行うなど、生徒に企画・運営の大部分を任せています。だからこそ、強く思い出に残るのでしょう」と分析されていらっしゃいました。
神田女学園にもクラス対抗で行われる球技大会があり、大変盛り上がるそうです。高橋先生は「本校でも多少失敗しても構わないので、もっと生徒たちに行事の企画・運営を任せたいですね。学校は勉強だけでなく、人と関わることで多くのことを学ぶ場だと思うので、人と関わるチャンスを生徒に多く作ってあげたいと思います」と決意を新たにしていらっしゃいました。

思いやりの心を育むボランティア活動≫

125年以上の歴史を持つ両校が描く未来とは?

最後に今後の学校のあり方についてうかがうと「伝統を大切に守っていきたい」と両校の先生の意見は一致していました。

目に見えない伝統も次の世代へ受け継ぐ

白百合学園の伝統を語る田畑先生
白百合学園の伝統を語る田畑先生
田畑先生が守りたい伝統としてまず挙げたのは、90年以上前から一度もデザインが変わっていない制服です。制服自体はもちろん、制服にふさわしい髪形や振る舞いを心がける生徒たちの精神も受け継いでいきたいと言います。加えて、学校の温かい雰囲気や、挨拶の習慣など、目に見えない伝統も大事にしたいと語ります。
「白百合学園では学期や学年の終わりに先生に向かって、『教えてくださり、ありがとうございました。次の学期もよろしくお願いします』と感謝の言葉を伝えます。これは生徒手帳など、どこにも記されていないことですが長い間受け継がれてきた慣わしです。学校の伝統を負担ではなく喜びに感じてくれる生徒が多いので、これからも伝統をポジティブに受け止めて、次の世代に継承してほしいです」と田畑先生は願っていらっしゃいました。

伝統を守りながら、グローバル社会で活躍する女性を育てる

高橋先生は伝統を守りながら革新的女子教育を進めたいと語る
高橋先生は伝統を守りながら革新的女子教育を進めたいと語る

神田女学園も礼儀正しく、教養のある人間を育てるという伝統は守りながら、これからのグローバル社会に対応するカリキュラムを作っていくと高橋先生。
「言語の習得も大切ですが、多様性を認め、他者と協力できる女性を育成したいです」という言葉に、田畑先生は深く賛同したようすでした。
「外国語が堪能でも、教養と品性がなければ、これからの社会で活躍できません。女性の教養や品性を育むには、女子校は最高の環境だと思います」という田畑先生の力強い言葉で、今回の貴重な対談は締めくくられました。

神田女学園の目指す革新的女子教育≫

編集者から見たポイント

125年以上の歴史、女子校、充実した語学教育など共通点が多く見られる両校。対談を終えた田畑先生の「最近は共学や大学付属校が人気ですが、今回の対談のように素晴らしい女子教育を行っている学校と、ともに女子校のよさを伝えていきたいです」という言葉を受け、高橋先生が深く頷かれた場面が印象に残りました。私学の学びが魅力的なのは当たり前。お子さまがそれを学び、自立し、活躍していくには「女子校という環境が良い」、それが長年愛され守り続けられる女子校と伝統なのではないかと感じました。

今後のイベントスケジュール

イベント名 日時
中学校 授業体験会 10月27日(土) 14:00~
教育内容説明会 11月10日(土) 10:00~
教育内容説明会 11月17日(土) 10:00~
イベントの詳細と予約はこちら ≫

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