国際バカロレア「All English DPコース」開設の背景
inter-edu’s eye
世界中の国々で大学入学資格として認められている教育プログラム「国際バカロレア(IB)」の中でも、16歳から19歳を対象とした「ディプロマ・プログラム(DP)」を茨城県内の一条校(※)として初めて実施した茗溪学園中学校高等学校(以下、茗溪学園)。2017年度に日本語Dual Language Diploma Program(日本語DP)をスタートしたことにより、従来の国際教育を大きく進化させてきた茗溪学園ですが、2022年度にはすべて英語で学びながらDPを取得するAll English DPコースが開設されます。国際的にスタンダードな教育を国内でいち早く導入するに至った背景について、IB課程長として中心的な役割を担っているYvette Flower(イベット・フラワー)先生からお話をうかがいました。
※インターナショナルスクールを除く学校教育法第1条に規定された学校
新コースで深まる世界共通の学習プログラム
All English DPコースを解説した背景や教育目標をお聞かせください。
Flower先生:本校が培ってきた国際教育をさらに推進し、世界で活躍できる人材を育成するとともに、生徒自身の将来への選択肢を増やすことが新コース開設の理由となります。独立したコースを新設するのではなく、従来からあるIBDPコースの枠組みの中で選ぶ学び方という位置付けになっています。したがって、教育目標はIBが掲げる理念と変わりはありません。
IBは多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良く平和な世界を築くことに貢献できる若者の育成を目的としています。
All English DPコースにはどのような特徴があるのでしょうか。
Flower先生:主要5教科という概念のないIBDPは、6つの教科群(グループ)と、必修であるコア科目から構成されています。各グループで学ぶ内容は、母国語の学習や外国語取得から芸術に至るまで、日本の教育にありがちな文理の境目がありません。また、コア科目は課題論文、知の理論、創造性・活動・奉仕といった内容に取り組みます。
本校では、2022年度からすべてのグループやコア科目に英語で履修できる科目を配置することで、All English DPの取得が可能となります。IBDPコースの特性上、多くの帰国生や留学生が日本語以外の母国語を使用しますので、グループに設定されている言語の組み合わせによっては生徒ごとに学び方が異なります。さまざまなバックグラウンドを持つ生徒が集まることで、学校の国際化に資すると思われます。
具体的なコース体系をお聞かせください。
Flower先生:少し複雑になるかも知れませんが、大枠としてIBDPコースがあり、その中でどのように学ぶかを選択することにより日本語DPとAll English DPがあります。IBDPコースとしては、高校1年次でPre IBとしてDP修得の準備を行い、高校2年次はYear1としてのカリキュラムを実践していきます。科目の詳細については校内で検討中なので、今後のお知らせにご期待ください。
いずれを選択するにせよ、学習内容は従来のものと変わりありません。学ぶ内容や姿勢が重要であり、たとえ授業で使用される言語が違っても、国際バカロレア機構によって各科目の学習内容は定められており、DPの最終試験も世界共通の出題内容となっています。例えば、同じ会場で数学の試験を受けるにしても、問題が英語と日本語の違いだけであるといったイメージですね。
保護者の皆さまからはどういった質問が寄せられていますか。
Flower先生:日本語DPと英語DPのどちらを選ぶか迷われている方がいらっしゃいました。英語DPは英語力の向上を目的とするものではなく、授業の内容によっては大学1年程度の学習内容を理解できるレベルの英語力が必要になる場合があります。DP取得やお子さま自身の希望進路等で幅広い視野に立って選択することをお勧めしました。
最後に先生の意気込みをお聞かせください。
Flower先生:従来のIBDPコースの幅が広がるということは生徒の選択肢が広がるということで、より主体的な学びを導くことにつながると考えています。予測の難しい現代社会において、他者と協力し、柔軟な発想で時代を切り拓いていけるような人材の育成を目指していきたいと思います。今後も公開される最新情報にご期待ください。
編集者から見たポイント
以前から積極的に留学生や帰国生を受け入れてきた茗溪学園は、IBDPコースの導入によって国内有数の国際カリキュラムを実践する教育モデル校となりました。進学実績を含め、その先行きには多くの保護者・教育関係者から注目が集まっています。2021年度からは中学生を対象としたアカデミアコースが開設され、高校進学時にIBDPコースを選択できる新体制がスタートします。次回の連載では、このアカデミアコースの詳細をご紹介します。たゆまぬ進化を続ける茗溪学園からはこれからも目が離せません。
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