海外大進学で世界とつながったIBDPコース1期生
inter-edu’s eye
海外の教育機関に数多くの奨学留学生を送り出してきた茗溪学園中学校高等学校(以下、茗溪学園)に正式導入されたIB(国際バカロレア)教育。2019年度には、IBDPコースの1期生全員が見事IBDP(ディプロマ資格)を取得するといった結果となりました。世界基準であるDPの学びと部活動の文武両道を貫く茗溪学園のIB教育についてご紹介します。
IBDPコース1期生 インタビュー
中学から英語の基礎を学び始め、高校IBDPコースの日本語DLDP(Dual Language Diploma Programme)でディプロマ資格を取得し、アメリカの大学への進学を実現させた卒業生からお話をうかがいました。
海外の大学に進学した理由を教えてください。
髙栁さん:幅広い知識や教養を身につけたいという思いから、海外のリベラルアーツカレッジを探し始めました。その中で、メディアの専門家としての理論やトレーニングを実践するMedia Fellows Programというカリキュラムを展開しているDePauw Universityへ入学しようと決めました。このカリキュラムの他に、平和学専攻を目指しています。
1期生としての不安はありませんでしたか。
髙栁さん:1期生で先輩がいなかったため、全てが未知でした。まずは英語で展開される授業についていきながら、部活動を両立させられるようにチャレンジしようと思い、IBDPコースに飛び込みました。勉強に集中しつつ、ディプロマ資格を取得するうえで必修となっているCAS(知識と体験を統合させる課外活動)に取り組み、部活動にも参加することで、IBDPコース以外の生徒から刺激を受けたり、自分の気持ちをリフレッシュしたりすることができました。
勉強の進め方について詳しく教えてください。
髙栁さん:高2から始まるIB科目では、ディスカッションで意見交換や質疑応答を繰り返しながら授業を進めます。各科目で課される論文は、国際バカロレア機構に提出する「学問的誠実性」を踏まえたものとして仕上げなければいけません。そのため、論文のテーマを決める前にアカデミックな論文の書き方や文献引用のルールを調べるところから始める必要がありました。
英語以外の苦労もありましたか。
髙栁さん:論理的思考と批判的思考を身につけることだと思います。DPの最終試験はほぼ記述式になるので、教科の知識に加えて概念的な理解が求められ、それを論理的に書く力が必要です。語学力の向上だけでなく、さまざまな知識に関してなぜそうなるのか、多様な視点から考えておくことがDP取得のために必要となってくるでしょう。
今現在、大学でどのように過ごしていますか。
髙栁さん:寮生活をしながら、リベラルアーツならではの面白い授業を受講しています。例えば、スタンドアップコメディを観ながら、アメリカでの社会的関心やコミュニケーションのセンスといった点も学んでいます。興味・関心を持ち続けてきた平和学を専攻したい理由に繋がりますが、日本人も国際問題を今以上に考える必要性があると信じています。そのため、メディアを通してそのようなアプローチができるような仕事に就くことをイメージして講義を受けています。
IBDPにチャレンジする受験生家庭に向けた応援メッセージをお願いします。
髙栁さん:茗溪学園に入学するまでは海外の大学に進学しようと考えたことも無く、中学校から英語の基礎を学び始めた私がアメリカで大学生活を送ることができているのは、IBDPコースでディプロマ資格取得のために勉強し続けてきたからです。本当に努力が実を結ぶということを実感することができました。
今の自分にどんな力が欠けているのかを自己分析しながら新しい知識や能力を蓄える手段のひとつとして、茗溪学園のIBDPコースを受験校の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。ディプロマ資格の取得には英語力が必要になりますが、初めから無理だと考えずに、諦めず挑戦してほしいと思います。
IBコーディネーター インタビュー
IBDPコーディネーターとしてIBDPコース設立に深く関わってきた松崎秀彰先生からお話をうかがいました。
DP取得に向けた学びの特徴について教えてください。
松崎先生:ディスカッションやプレゼンテーションなども活用した概念理解を通して、「知識を構築していく」ところが大きな特徴です。学んだ知識を表面的な言葉の理解だけでなく、大きな概念に結びつけて解釈し消化した上で、未知の課題への答えを導き出すために活用していくことまで求められます。
海外の大学からは「IB生は学び方を学んでいる」と高く評価されており、その価値は日本語DLDPでも全く変わりません。本校のIBDPコース初となる卒業生たちも、イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカなどの世界ランキング上位の大学から多くの合格通知を受け取りました。IBを通した真の学びは「本当に世界とつながっているのだ」と強く実感した瞬間でした。
1期生への指導の振り返りをお願いいたします。
松崎先生:1期生はみんなが挑戦者でした。行事の多い本校ですが、高2の全員が1週間も寮に泊まって早朝からラグビーや剣道に取り組む寒稽古などに参加しながらも、IBの学習に取り組みました。「先輩」や「前例」のない中で、不安や心配も大きかったと思いますが、見事ディプロマ資格を取得できた1期生たちには大きな賛辞を贈りたいと思います。
振り返ってみると、自律した学習者を育てるためにIBが掲げている「学習の方法(Approaches to Learning: ATL)」や「10の学習者像」は、IBでの学びを通して、どれも生徒たちは身につけてきたと思います。特にATLは、思考スキル、リサーチスキル、社会性スキル、コミュニケーションスキル、自己管理スキルの5つがありますが、どれも「身につけられる」どころではなく、嫌でも身につく、身につけないとIB学習を続けることはできないくらいのものでした。
IBの導入は学校にどのような影響を与えていますか。
松崎先生:IB認定校では学校全体にIBの理念を広めることが求められます。IBは全く新しいことの導入のように捉えられがちですが、前述の「学習の方法」や「学習者像」、CASなど、本校がこれまでに行ってきたこととIBの理念が結びついていたり重複している部分も多くあります。IBの枠組みを通して従来の学びを見直すことで、これまで達成できていたこと、できていなかったことの認識の解像度が上がり、学校がより進化するきっかけとなると思います。授業でもIBのノウハウを活かす試みを行う先生も増えてきています。
日本の教育とIBの教育の間には「優劣」がある訳ではなく、「違い」があるのだと思っています。生徒たちが自分に合う学びを選べることが重要です。これまで本校では、高2から「ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)」に留学をしないとIB教育へのアクセスはできませんでした。それが学校内で受講できるという「選択肢」ができたことは非常に感慨深いです。この選択肢が学校にもたらす多様性は多くの生徒たちにも利益をもたらすはずです。
IB教育に興味を持っている受験生へのメッセージをお願いいたします。
松崎先生:IBDPコースで学びたい受験生には、IBはとことん自分と向き合う必要があるプログラムだと伝えておきたいと思います。学びたいという強い意欲が自分自身にないと、IBでの学びは成立しませんし、成し遂げるのは難しいでしょう。またIBの理念にもあるように、「人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認める」というような多様な視点と批判的思考力を持つことで、世界中のどこにいても生きていける自信と力が身につくようになります。まずは小さな一歩からでも大丈夫ですので、受験生の皆さんは安心して入学を検討してください。
編集者から見たポイント
大きな期待を受けたIBDPコースから、初めての卒業生を送り出すことになった茗溪学園。DPスコア(満点で45点)で40点以上が2名、バイリンガルディプロマを5名が取得するなど、世界中の難関大学に入学できるほどの学力を培ってきた1期生の努力はもちろんですが、先生方が築き上げてきた指導体制の今後にもご注目いただきたいと思います。
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