inter-edu’s eye

「変わる明星」をスローガンに、伝統を守りつつ、教育の革新に挑む明星中学校・高等学校(以下、明星)。今回は、3年目を迎えたICT教育の“今”に迫ります。

全ては生徒の心を育てるため

明星のICT教育について、数学科の阿部亮輔先生にうかがいました。

iPadの活用例を伝える阿部先生
iPadの活用例を伝える阿部先生

ICT導入のきっかけは、これまでの学びに加えて、プレゼンテーション能力や、情報の収集・編集能力といった、時代が求める新しい力を生徒に身につけさせたいと思ったからです。
iPadを一人一台所有したことで、生徒は好きなときに欲しい情報を引き出せるようになり、友達や先生へ何か伝えようと思えばいつでも発信できる環境が与えられました。

すると、やがて生徒は、自分のメッセージをいかに相手に分かりやすく伝えられるかを考えるようになったんです。ただ文字を並べるだけでなく、動画や画像を添えたほうがいいのか、送信する時間はいつがいいのか。人を思いやり、相手に親切な見せ方、示し方を学ぶようになり、次のステップへ進むことができました。

本校が大事にしてきた「心を育てる」教育を、これまでは校内で何か気づいたらその都度見直してきましたが、ICTを導入し、外からの情報を共有することでも、生徒の心の育成に役立つものがあると気づきました。これまで通り、手塩にかける教育、心を育てる教育という本校の教育理念は変わりません。iPadはあくまで心の育成のためのツールにすぎないんですよ。

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“明星流”ICT教育

ICT導入から3年目を迎え、少しずつ“明星流”ICT教育の形が見えてきました。

学び合いを促進させたICT

電子黒板で問題を、黒板にヒントや別解を記す
電子黒板で問題を、黒板にヒントや別解を記す

授業を見学すると、ICTによる生徒の“学び合い”の場面に遭遇しました。
生徒の手元には必要な情報をすぐ取り出せるiPad、教室には情報を共有する電子黒板があります。分からない問題に対して生徒が声をあげると、先生が答えるより先に別の生徒が説明を始め、さらに「違うよ」と、また別の生徒が発言する…共有によって学びの輪が広がっていくのです。

こうした学び合いを続けていく中で、阿部先生はある変化に気づきました。iPadを使い始めた学年の、高校1年時と2年時の進研記述模試の数学の平均偏差値が、約10もアップしたのです。

阿部先生:私が担当してきた中では過去最高の数値で、学年全体でも偏差値の上昇が確認できました。ICTがきっかけで学び合う雰囲気が広がり、生徒が切磋琢磨するようになったことが要因ではないかと思います。

ICT委員会の取り組みで、活用人口の底上げを図る

ICTを導入しても、最初は生徒がなかなか使用しなかったといいます。
また、iPadは優れた学習ツールである一方、使い方によってはただの遊び道具になってしまいます。そこで明星では、導入2年目から生徒主導のICT委員会を発足させ、活用方法の提案や、モラル教育について話し合うことになりました。
各教科の先生が、試行錯誤の末、iPadを無理矢理使うのではなく、必要なときに授業で使い分けるようになると、生徒も自然と活用できるようになったといいます。

文化祭のアプリを開発した鈴木くん
文化祭のアプリを開発した鈴木くん

3年の間に、自主的にアプリを作る生徒も出てきました。わずか3日間で、文化祭のパンフレットをWeb上で見られるアプリを作った生徒は、「面白そうだったし、学校を盛り上げようと思った」と制作のきっかけを語ります。
配信されたアプリは1,000ダウンロードを突破。将来の夢を尋ねると、「いろいろなことができる人間になりたいから、デザイナーとかプログラマーとか、名前の付いたものに決めたくない」と野望を語ってくれました。ICTを活用し、生徒は描いた夢へつながる階段を一歩上ったようです。

保護者との信頼関係にも

学年ごとに行う保護者会には、大勢の人が集まります。そこで、保護者が自身のスマートフォンで入力したものを会場のプロジェクターで共有できるアプリを利用。これにより、説明をしながらその場でアンケートの結果を映し出すことが可能になり、保護者はプロジェクターで自分と同じ意見の人の数や、ほかの意見を確認することができるようになりました。

阿部先生:何十人もいると質問しにくい雰囲気になりますが、アプリの利用で議論が活発に行われるようになりました。また、これまで紙で渡していた情報をPDFにして、生徒のようすを詳細に公開できるようになったことで、保護者との信頼関係はよい状態で築けているのではないかと思います。

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本格的な実用結果はこれから

阿部先生は、「ICTを導入して結果が出たものはあるけれど、ICTで得たものが学力と結びつくか分からないこともまだ多くある」と語ります。ICT導入時に高校1年だった生徒は今、3年になり大学受験を迎えることから、この先、進学実績など目に見える結果が一つずつ増えていくのを待ちながら、注意深く考察していく必要がありそうです。

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注目のイベント日程

イベント 日程 時間
第6回 中学校説明会 8月19日(土) 10:30~
明星祭 9月23日(土・祝)、9月24日(日) 9:00〜15:00
第7回 中学校説明会 10月7日(土) 14:00~

編集者が見たポイント

阿部先生はICT導入で、授業中に生徒一人ひとりのようすを見て回る机間指導をやめてみたところ、生徒の理解度が下がったと感じ、机間指導の必要性を再認識したといいます。ICT導入は、これまで行ってきた教育方法を顧みるきっかけにもなりました。心を育てるという教育理念の根幹は揺るがず、ICTをツールの一つとして扱う明星だからこそ、新旧融合の先に更なる発展が期待できそうです。