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創立から100年以上の歴史を誇る武蔵野中学高等学校では、教育活動の基本的な考え方を『他者理解』という言葉に置いています。特に力を入れている英語教育において、この教育理念がどのように実践され、生徒に浸透しているのかを知るために、副校長の浅見先生と生徒たちにお話をうかがってきました。
他者理解を深めるための語学習得
インターエデュ(以下エデュ):なぜ英語教育に力を入れるようになったのか教えてください。
浅見先生:現代は驚くようなスピードでグローバル化が進んでいます。ではわが校でのグローバル化への対応とは何かと考えた時に、教育理念である『他者理解』は外せません。他者理解を「相手の立場に立って考え、行動すること」と言い換えるならば、これを実践する要素はさまざまありますが、私たちは多言語・多文化への理解が必須であると考え、英語教育に力を入れるようになりました。
副校長の浅見 尚次郎先生。英語授業を強化した結果、英検2級取得者がとても増えたとうかがいました。「留学を経験した生徒は、帰国する頃には成長した自分自身を実感できることでしょう。」
エデュ:授業はどのように行われていますか?
浅見先生:LTE(Learning Through English・英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ)を導入する前は、受験を意識した授業展開で英検に代表される資格取得に力を入れていました。しかし、LTE導入後は英語による授業が大前提となり、「課題探究をとおして意見の共有を行い、自分の考えや意見を発表するという学習サイクル」の中で、自然に英語をもっと使おうという意識のもとで授業を行っています。
エデュ:現状で感じている学習の課題はありますか?
浅見先生:
外国人教師は英語だけで授業を進めていますが、日本人教師はすべて英語だけで同じように授業を進めるのはなかなか難しい状態です。将来的には社会科などにも、海外の新聞を教材として使ったりしながら、さらに多くの英語を取り入れていきたいと思っています。
iPadを使用した英語の授業を見学しました。電子黒板も全教室に配備されています。
浅見先生:生徒の「自主性・自立性」が身についたことが一番の成果です。ニュージーランドに行く前は、3か月も日本式の勉強から離れると進度に遅れが出るのではという不安もありましたが、実際には影響が出ることはありません。この理由は、海外留学することで身につけた自主性に基づいて「次の試験に向けて頑張らないといけない」という気持ちが生まれるためだと思っています。
生徒自身が撮影した画像を使って、英語をテーマにしたムービーを作成する授業の様子。中学生とは思えないほどの高いクオリティにびっくり!
浅見先生:まず事前にホームステイを意識した授業展開をしています。現地に着いた後は、ホームステイ先のホストファミリーや学校に生活全般を見てもらっていますが、現地のコーディネーターを通して毎週1回レポートを送ってもらい、生活や学校での様子から悩んでいることがないかを注視しています。また、留学中の生徒同士が現地で中間報告会を開くのですが、これがよい息抜きになるようです。基本的に親御さんとは連絡をとらないようにさせています。つまり、今まで一番身近な存在の親御さんに頼ることができないので、「自主性・自立性」が身につくことにつながっているのではないかと思っています。
撮影に協力いただいたネイティブ英語教師のパーカー先生(左)と、文法を中心に指導する酒井先生(右)。 武蔵野中学校では、週6時間のLTE授業と週4時間の英文法授業が互いに連携して徹底指導を行います。
エデュ:留学後に帰国した生徒にはどのような変化が見られますか?
浅見先生:感想としてよく聞くのは、今まで日本だけ、もっと狭い範囲でいうと家族や学校のルールの中で生きてきたが、海外に行くとまったく違う世界が広がっていることに気付かされたということです。でも、その違いに対して戸惑いながらも受け入れる必要があるので、視野が自然と広がったと聞きますね。
エデュ:来たる大学入試改革についてはどのような備えをしていますか?
浅見先生:
全体像は見えていませんが、『他者理解』という教育理念のもとで英語を身につけていければ絶対にマイナスになることはないと考えています。そのためにも海外留学のような多文化体験は重要だと思っています。
エデュ:先生が考える御校の一番の魅力を教えてください。
浅見先生:
世の中には何をやってもできる子もいれば、そうでない子もいます。しかし、大多数のお子さまは自信の無さを持っていると思います。では、一体その自信の無さはどこから来るものなのかを『他者理解』という視点をとおして自分で見つけ、本来潜在的に持っている力を引き出すことが出来る点が、わが校の魅力だと思っています。
実体験から語る海外留学の魅力
今回の在校生インタビューでは昨年ニュージーランドに短期留学した高校3年生の二人に留学前後のお話をうかがいました。
留学体験が将来の夢につながったと話すAさん(左)と、世界で活躍したいという目標を持つBくん(右)。 英語と関連した具体的な職業イメージを持って進学を目指している点が印象的でした。
世界トップクラスの教育レベルを誇るニュージーランドでの3ヶ月留学は、「他者理解」と「グローバル」が一体となる一生ものの体験になります。
「現地では皆さんがとても親切にしてくれて、困ることはありませんでした。お世話になったホストファミリーや友人とは、帰国してからも手紙やFacebookでコミュニケーションをとるぐらい、仲良くなることができました。」というAさん。将来は英語でやり取りをする職業を目標にして、進学先の有名大に向けた猛勉強中と話してくれました。
「帰国後に変わったことは、街にいる外国の方の会話を意識したり、自然と英語が聞き取れるようになったことです。それに、留学先のニュージーランドがテレビに出ていたりするとつい見てしまいます。留学の経験を活かして、世界的に活躍できるようになりたいと思っています。」というBくんは、英語を話せる世界的な役者を目指しているとのこと。
二人に共通して感じ取れたのは、これからの目標がしっかりと定まっていること、そして留学体験による英語教育を存分に活用しようと目を輝かせていることでした。
編集者が見たポイント
留学体験をとおして語学を学ぶということは、単に会話が出来るようになるだけでなく、「自主性・自立性」も身につけることができるのだと今回の取材で実感できました。貴重な体験を活かし、幅広い視野を持ちながら世界で活躍したいと努力する武蔵野生に今後も要注目です。
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