サノフィ株式会社
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お子さまの人生において大切な受験。親としては万全な状態で本番に臨んでほしいものです。
しかし受験期は生活リズムの変化、入試に対するプレッシャーがストレスとなり、
特にアトピー性皮膚炎の症状があるお子さまにとっては、かゆみを悪化させる恐れがあるそうです。
そこで受験期のアトピー性皮膚炎対策について、2回に渡って専門家にうかがいます。
1回目は「早期治療と保護者の注意ポイント」について、
神奈川県立こども医療センターの馬場直子先生にお話しいただきました。
お話を
聞いた先生
神奈川県立こども医療センター
皮膚科
馬場直子先生
小児皮膚科医歴30年。 ご自身も3人のお子さまの受験を支えた「先輩受験ママ」
ストレスがさらにかゆみを
引き起こす原因に
ストレスとかゆみの関係性について教えてください
かゆみとストレス、これは関係が深いものです。特に疾患がなくてもやはりかゆいこと自体が非常に辛く、これ自体がストレスですよね。
さらにかゆみを解消しようとして、必要以上に掻いてしまうと皮膚が壊れてますます炎症がひどくなってしまいます。
例えば、お子さまの場合でも、お母さんに怒られると体を掻き始めてしまう例があります。ストレスがかかると、掻くことで解消しようとしてしまうのですね。それは受験でストレスがかかる場合も同様ではないでしょうか?
アトピー性皮膚炎の場合、肌の状態はどうなりますか?
まず乾燥してバリア機能が低下した皮膚は外部のちょっとした刺激でも赤くなり、次いでブツブツができます。この時すでに炎症がおきていてそこを掻いてしまうとびらんという、ジュクジュクした状態になります。やがてかさぶたになりますが、そこを掻き壊してまた血が出る、ということを繰り返すと苔癬化(たいせんか)といって皮膚が分厚くなり、最終的には炎症が残存することで見た目も赤黒い肌になってしまいます。
なぜ炎症がひどくなるのでしょう?
アトピー性皮膚炎の方は皮膚が乾燥しやすく、肌を守るバリア機能が弱い状態になっています。皮膚を保護できていないと外からの悪影響を受けやすくなり、炎症を引き起こしてしまうことがあります。そうするとかゆみが引き起こされ、掻いてしまうことで皮膚バリアを余計に壊してしまう、という悪循環を起こしてしまうのです。
アトピー性皮膚炎の炎症が起こっているのか判別する目安はありますか?
アトピー性皮膚炎のお子さまの場合は、肌を触ると乾燥しておりザラザラしているというだけでも、もう炎症が始まっていると考えてください。また、見た目に少し赤いだけでも、それはもう皮膚の炎症が始まっているということです。
そうした状態を見逃さないように、注意すべきことはありますか?
本人はケロッとしていてもかゆがって夜に目が覚める、掻いている音がする、肌に赤くなっている部分がある、ブツブツが2、3日続くなどがあれば受診してください。
小さいお子さまの場合は関節部やお顔などの刺激が多いところ、汗が溜まるようなところから症状が出る場合があります。皮膚はすべてつながっているものなので、ほかの箇所が問題ないように見えてもアトピー性皮膚炎の素因はあります。
放っておいても自然に治るということはないので、軽いうちに治療してください。
馬場先生からの注意ポイント!
- かゆみで夜目が覚める、体を掻いている、肌が赤いなどは要注意
- 皮膚は全身つながっていると
考えて
小さい時の皮膚は大事。
だからこそ早く治す
アトピー性皮膚炎がきっかけでほかのアレルギーを引き起こしてしまう
ケースもあるそうですね
「アレルギーマーチ」といって1950年代に名付けられました。赤ちゃんの時にアトピー性皮膚炎だった子が離乳食で食物アレルギーになり、3、4歳になるとぜん息になり、大人になるとさまざまなアレルギーを発症するという例が数多く報告されたのですが、その頃は何が原因かわかりませんでした。
2000年代になってようやく、皮膚のバリア機能が弱まりアレルゲンとなる物質が体内に入り、さまざまな症状を引き起こすことがわかりました。
どんなものがアレルゲンになりますか?
ダニやほこり、花粉、食物などですね。壊れてしまった皮膚はいわば隙間だらけ。そこにアレルゲンが入ってくると排除しようとする生体防衛反応が働き、アレルギーが起こるわけです。排除しようとする抗体が血液中にぐるぐる回っている状態になってしまうので、食物抗原だったらその食物を食べた時にアレルギーを発症してしまいます。そうならないためにも、皮膚のバリア機能を強くしておくことが大切で、アトピー性皮膚炎の状態は早く良い状態にしておくことがより重要なのです。
馬場先生からの注意ポイント!
- 皮膚バリア機能が弱くなると
アレルギーマーチを起こしやすい - 他のアレルギーを引き起こさないためにも早めの治療が肝心!
夏期講習後は要注意!
お子様に合った治療法を
受験期はなおのこと注意しないといけないですね
そうですね。受験期になるとアトピー性皮膚炎のお子さまの多くは症状が重くなりがちなので、今まで以上にケアが必要です。特に夏期講習が終わる頃になると、症状が重くなるケースが多いです。勉強時間が長くなり、ただでさえ受験でストレスがかかっている上に、かゆみでストレスがかかるとお子さまも大変なので、そうしたお子さまには状態に合わせて治療をプラスしています。
かゆみを伴う皮ふ疾患に悩む受験生の
母親へのアンケート(n=310)
「かゆみによってお子様の勉学へ支障がある」と感じている母親137人の約88%が「集中力・判断力の低下」、64%が「イライラする」をかゆみによる勉強への支障として答えています。また同じ母親の31%が「かゆみによって、お子さんの成績が下がった」と思ったことがあると答えています。
かゆみが受験勉強に及ぼす影響の大きさがうかがえます。
かゆみがもたらす勉学への支障
かゆみで成績が下がったと思ったこと
室田浩之ほか.診療と新薬.2010 47(9)964-973
どんな治療でしょうか?
塗り薬だけでは改善されない場合は抗体医薬品という塗り薬と合わせて使用する別のタイプの薬を処方します。症状が改善するとかゆみもなくなり勉強に集中できますし、眠れるようにもなるのでさらに勉強への集中力も上がります。私の患者さんでも夏期講習後に悪化してしまって、勉強に集中できずイライラして成績が上がらず、暗い感じになっていたお子さまがいました。お肌も掻き壊しだらけだったのです。でもご自身に合う治療に出会われたことによって、かゆみが止まり、勉強に集中できるようになって目標の学校に合格されたそうです。
生活上で気をつけることはありますか?
基本的なことですが、ダニやほこりなどアレルゲンを減らす。また食事のバランスも大切です。入浴はお湯の温度に気をつけてください。38℃から39℃くらい少しぬるいかなという程度がいいですね。ボディーソープも泡状にして、ゴシゴシこすらず、赤ちゃんを洗うように優しく洗うよう気をつけてあげてください。
馬場先生からの注意ポイント!
- 夏期講習後からの症状の変化に
気をつけて! - 早く治療し、症状を改善することで勉強の集中力もアップ
正しい治療のためには
正しい情報を!
最近はネット情報についつい惑わされてしまう方も多いと思います
インターネットは玉石混淆。根拠のない医療情報も多いです。不正確な情報に流されることなく確かな情報が掲載されているサイトを見ていただきたいです。インターネットでは日本アレルギー学会が運営している「アレルギーポータル」や、製薬会社の患者さん向けサイトにも最新の情報が掲載されていますので、まずこうしたサイトから情報を得るようにしてください。
受験生のお母さまにぜひメッセージをお願いします
これまでの治療法に最新の治療法を加えることで、コントロールの良い状態、つまりすべすべのきれいな肌状態にしてあげることが期待できるようになりました。お子さんにとっては受験が終わっても、その後には学校での新しい生活が始まります。明るい気持ちで新たな生活が送れるよう、しっかり専門家の治療を受けて良い状態にしてあげてください。
私自身経験があるのでよく分かりますが、お母さま方も勉強のことだけでなく、お子さまの健康状態にも気をつけなければならず大変な状況だと思います。中学受験に向けて通塾中のご家庭は、勉強のことを塾の先生に任せているように、皮膚の疾患はぜひ我々皮膚のプロに任せてください。
私はかゆみを制するものは受験を制すると思っています。受験生にとってはお母さまが一番のサポーターです。万全の体調で勉強に集中し、本番でしっかりパフォーマンスできるように、お子さまには我慢させず、早めに私たちにご相談ください。
馬場先生からの注意ポイント!
- 治療の正しい情報は学会や
製薬会社のサイトから - 子どもにかゆみを我慢させず
早めの受診を
編集後記
受験の本番が近づくと、お子さまのストレスがお母さまにも連鎖してしまいがちです。そのストレス要因がかゆみであれば、早めに専門医に相談し、お肌を良い状態にできれば勉強パフォーマンスが上がるのではないでしょうか? 馬場先生によると、理想的には受験の1年前から遅くとも半年前には治療計画を立てておくとよいそうです。 今、かゆみに困っている方はもちろんですが、再来年の受験を目指している方にとっても今から治療を始めるのが良さそうです。これを機に皮膚科に相談してみてください。
企画・編集:インターエデュ・ドットコム
提供・取材協力:サノフィ株式会社
MAT-JP-2408168-1.0-12/2024