中1からのSTEAM教育を導入した聖学院「情報」の授業

中1からのSTEAM教育を導入した聖学院「情報」の授業

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ICT機器を活用したオンライン学習を他校よりもいち早くスタートしていた聖学院中学校・高等学校(以下、聖学院)では、高校のSTEAM教育を取り入れた情報の授業を中1から実施しています。その学びの進め方と実際の成果について、授業レポートとインタビュー取材を通して詳しくご紹介します。

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知的好奇心がふくらむ情報~授業レポート~

聖学院では入学直後の中1生を対象にITリテラシーや機器の使い方を習熟できる「情報プログラミング」の授業を実施。高校卒業まで続くSTEAM教育の導入部となる、クラスメイトへ自己紹介をするプレゼンテーション資料作成の様子をレポートします。

授業の様子
授業の様子

「情報プログラミング」はひとつのテーマにつき5~6回を1セットとしており、今回はGoogleドキュメントに下書きをして資料のアップデートを繰り返しながら、みんなに分かりやすく伝わる自己紹介をすることがテーマになっています。通常の教科では分からないことをたくさん知ることができる内容です。

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授業の様子
授業の様子

自分自身をどのように表現するかを目的としているので、クラスの全員が真剣な眼差しで集中しながら取り組みます。iPadの使い方はタッチパネルを使う生徒もいればキーボードにチャレンジする生徒もおり、自由そのもの。

授業の様子
授業の様子

資料作成の過程から、WEB上の画像の扱い方や文字の色を変えた情報整理、個人情報の書き方などを通してITリテラシーを学んでいきます。iPadを使った学び方の基礎・ルールを身につけることが、今後の高度な授業で役立つ重要なステップとなります。

ユニークな授業の数々 ≫
授業の様子
授業の様子

この授業で特筆すべき点は、先生だけでなく生徒自身が積極的に動きながらクラスメイトに声をかけていたこと。生徒同士がiPadの画面を挟んで意見交換をすることで距離が自然に近づく様子は、出会って間もない中1生たちがお互いを知る最良のきっかけになることでしょう。

1年間を通して学ぶ情報の授業の数々

・自己紹介を兼ねて作成する「プレゼンテーション動画」

・伝えるテクニックを学ぶ「CM制作」

・チーム単位でドローンを飛ばすための「スクラッチプログラミング」

・校内のオブジェクトをCADでモデリングした「3Dピクトグラム」

STEAM教育とICT活用の背景 ≫

楽しく学べた1年間のふり返り~中2生インタビュー~

聖学院での特別な1年間を過ごしてきた中2生から、授業の魅力や自らの成長をお話しいただきました。

伊藤喜也くん
数学が得意でバスケットボール部に所属している伊藤喜也くん
飯塚真將くん
英語と音楽が得意で物理部に所属している飯塚真將くん

情報の授業で一番印象に残っているものを教えてください。

伊藤くん学校のシンボルになる施設や風景をピクトグラムにして制作する3Dプリンターの授業が印象に残っています。みんなにデザインの意図を伝えるためには細かい描写が必要だと思い込んでいましたが、実際にCADデザインを作ってみると、情報過多ではしっかり作り込むのは難しいと気づかされました。この授業を通して、物事をシンプルにまとめ上げるという新しい考え方ができるようになったんです。

飯塚くんドローンの動きをスクラッチプログラミングで設定する授業がとても楽しかったです。最新の技術を楽しみながら触れられる授業は、聖学院ならではの魅力ではないでしょうか。物理部の活動で授業よりも前に3Dプリンターの扱いやドローンの操縦に慣れていたので、チームメイトを先導したりアドバイスをする役割を担うことができました。対象そのものを作ったり動かしたりすることよりも、周囲の安全や条件に応じて課題を成功に導く難しさを授業の中から知りました。

中1から取り組む探究学習 ≫

どんな目標を持って授業に臨んでいましたか。

伊藤くん自分のペースで物事に取り組むタイプなので、グループ活動で他者のペースに合わせて動くことには苦手意識がありました。そのままではいけないと思い、みんなの意見を取り入れながら協力して授業を進めることを意識してきました。クラスメイトの一人ひとりが目的を持って、周りとは異なる作品を目指して自由にアイデアを出し合えるところが授業の魅力ですね。

飯塚くんドローンを動かす際の安全性や3Dプリンターで作った制作物の意義を一番に考えていました。つまり、自分の行動や制作物によって、周りの人たちを幸せにできるのかを考えなければいけないということです。情報の授業は先生から出された問題を解く授業ではないので、今よりもさらに上のレベルに挑戦するために難易度を上げることを目標にして取り組んできました。

授業を通して成長を実感していることはありますか。

伊藤くんほかの授業よりも新しい視点を学ぶことができ、そこから教科の勉強にも活かすことができるようになりました。例えば得意な数学では、公式を使うだけではない問題の解き方を考えられるようになったんです。さらに、数学で習った多面体モデルを3Dプリンターで制作したこともあるんですよ。

飯塚くん早いうちからテクノロジーに触れたことで、大人が直面している社会問題や未来の可能性を意識できるようになりました。プログラミングでは何回も失敗を繰り返すので、成功までの道筋を導き出すトレーニングを重ね、結果的に新しい考え方や表現方法を発見できました。

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STEAM教育によって成長する生徒の姿~先生インタビュー~

情報科を担当する山本周先生からも、指導上の工夫やSTEAM教育の魅力についてお話しいただきました。

情報科と数学科の教諭を兼任されている山本周先生
情報科と数学科の教諭を兼任されている山本周先生

授業を進行するうえで重視されている点や工夫を教えてください。

山本先生今回の授業は、生徒自身の興味や関心を伝えるための表現方法を学ぶ内容なので、途中で飽きてしまったり挫折してしまう生徒の姿は見られません。本校の生徒は好きなことを見つけるとそれが何であっても集中して取り組みますが、そのためには前もって学習のゴールを提示する必要があります。とりわけ情報の授業であれば、その内容がなぜ必要なスキルとされるのかを説明してから作業に着手しています。現代のテクノロジーを身近に感じてもらいつつ、自らの成長や自己肯定感を育むことにつながるためのマインドセット(学習における目標やビジョン)を伝えているのがポイントですね。

授業の様子
授業の様子

クラスメイトと助け合う様子がたくさん見られましたね。

山本先生工作が得意・苦手関係なく手順を教え合っている様子が見受けられます。情報とは、どんなことが得意なのか、興味を持っているのかを伝えるための手段であるため、コミュニケーション能力も自ずと養われるようになります。毎年恒例の記念祭(文化祭)では本校の教育精神である「Only One for Others(自分を生かし、他者を生かす共生の関係を築く)」を実践するための生徒による企画を展示しており、2021年は3Dプリンターの制作物を来校者の皆さまにご覧いただきました。

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さまざまなアプローチやテーマを用いたSTEAM教育の進め方を教えてください。

山本先生2021年度から高校でスタートしたGlobal Innovation Classでは、ものづくりことづくりを通じて世界に貢献することを目指しています。そのためにも中学の段階では最新の学び方を取り入れたGlobal Innovation Labの授業からテクノロジーの有用性を知り、10年後にも役立つスキルを学習することをSTEAM教育のワンステップとしています。先生から言われたから仕方なく行動するのではなく、社会や他者の幸せのために自ら必要性を感じて行動できる生徒に育てるように願っています。
私たち情報科の教員も、生徒と一緒に楽しみながら新たな発見の手助けをするように心がけていますが、そのためにも積極的に校外のワークショップに参加したりさまざまなツールに触れることで、学習内容を常にアップデートしています。教科や運動の苦手な生徒でも活躍できる場として、情報の授業はさらなる発展が見込まれています。

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編集後記

まだ不慣れな手つきでiPadを用いる生徒がいれば、専用ペンシルやキーボードを使いこなす生徒も入り混じって進行する情報の授業でしたが、各人の伝えたい思いや他者に関わる喜びが感じられる内容から新時代の学び方を体感することができました。学校説明会などの機会に設けられる校内見学では、STEAM教育による作品の展示や実演を見ることができます。その際にはぜひとも親子一緒にご注目ください。

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