“自分ではない誰か”を想像する鎌倉校外学習
inter-edu’s eye
昨秋、芝中学校・芝高等学校(以下、芝)では中2生の鎌倉校外学習が実施され、3月に成果発表が行われました。2年の担任を務める見上圭佑先生と寺尾脩先生に詳しくお話をうかがいます。
他者理解がテーマの現地調査
学年の先生が企画する校外学習は、独自色の強い行事として在校生に人気です。今回の校外学習は、どのような内容だったのでしょうか。
生徒がツアープランナーになる!?
インターエデュ(以下、エデュ):鎌倉校外学習で、生徒はどのようなことをしたのでしょうか。
寺尾先生:1クラスを7つにグループ分けして、班ごとに観光ツアーを企画し、最後にツアーを紹介するチラシを制作しました。観光するのは「高齢者」「ママ友達」「10代カップル」など我々教員が設定した対象者で、これらの中から各班が自由に選びます。さらに、「食文化」「アニメ聖地巡り」など7つのコーステーマを抽選で各班に振り分けました。生徒は自分たちのためではなく、対象者がテーマの内容を楽しめるような観光ツアーを考えなければいけません。校外学習は、いわばツアーチェックの日として、作成した行程表に沿って鎌倉の街を巡り、「自分たちなら1日で回れるけれど、高齢者だと難しいかも」と検証していました。
見上先生:事前・事後学習では、近畿日本ツーリスト(以下、Knt)にご協力いただきました。事前学習では、Kntの方がレクチャー動画を作成してくださり、パンフレットやチラシに載せる情報の配置の仕組みや、現地調査では何を確認すべきか、食べ物はどうやって撮影すればよいかを学びました。事後学習ではチラシ制作に当たり、学年7クラスに1人ずつ制作現場の方がいらして、教室で作り方を指南してくださいました。
他者理解の実践とプレゼン力の向上
エデュ:そもそも、どうして観光ツアーを企画することになったのでしょうか。
寺尾先生:学年目標に他者理解があるからです。中1のときは「身近な人への理解を深めよう」と、校外学習でクラスメイトとカレーを作りました。そして中2では「目の前にいない知らない人を想像しよう」と、観光ツアーの立案に至りました。
見上先生:また、夏の宿泊型校外学習でプレゼンスキルを磨くつもりがコロナで実施できなかったため、事後学習では制作したチラシを使ってツアー内容をPRするプレゼンの場を用意しました。
旅行会社のプロが作品とプレゼンを審査
3月には2日間に渡る成果発表が行われ、生徒がプレゼンに挑みました。
コース別・クラス別で行われたプレゼン大会
エデュ:成果発表について教えてください。
見上先生:校外学習後はチラシ制作に着手しました。そして成果発表では、チラシをプロジェクターで画面に映しながら、目の前にいない一般客に向けてツアーの全容を伝えるプレゼンをしました。
寺尾先生:初日は同じコースの班を集めたクラス混合のプレゼンをし、2日目はクラスごとにプレゼンをしました。コース別で行った理由は、同じ知識を持った集団の中で発表することで、プレゼンスキルの差を実感させるためです。審査基準を公開したうえで教員2名が審査し、コース大賞を決めました。各班は初日の反省を活かし、2日目にクラスで再びプレゼンに挑戦。今度は生徒が審査員となり、クラス大賞を決めました。私の担任するクラスでは2位でコース大賞を逃した班が、負けた悔しさをバネにプレゼン内容を懸命に見直し、クラス大賞を勝ち取りましたね。
見上先生:さらにプロにも見てもらおうと、クラス大賞の7作品とプレゼン動画をKntに送り、総合大賞を決めていただきました。1学期のLHRで「人の話のよい聞き方」について考え、3学期には国語の授業でプレゼンの手法を学びました。さまざまな学びを実践しながら、中2の他者理解の取り組みを完結できてよかったです。
編集者から見たポイント
先生方は今後の展望について、「中3の京都修学旅行では、現地の企業や店を訪問した取材記事を掲載するパンフレットを制作します。この事前学習として1学期はキャリア教育と探究学習をします」と語ります。さまざまなアイデアを語る姿に、芝の先生の熱意を感じたインタビューでした。
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