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秀明八千代中学校(以下、秀明八千代)では、秀明大学学校教師学部との連携や、体験型学習「PGTプログラム」の成果を地域で発表するなど、体験活動を積極的に行っています。校外のさまざまな人との交流を通して、生徒の視野を広げるとともに、想像力(物事を自ら考えて解決方法を推し量る力)と創造力(実践的な行動から最適な結果を創りだす力)を育てるのが狙いです。連載最終回となる今回は、秀明八千代ならではのPGTプログラムにつながる発展学習について紹介します。
校長に聞いた「PGTプログラム」に託す思い
5日間にわたって体験活動の成果を展示発表していた勝田台ステーションギャラリーで、校長の富谷利光先生にその狙いや将来の展望をお聞きしました。
富谷校長:中学校では、未来を拓く力、世の中とつながる力を育てることを目的に、「PGTプログラム」を実施しています。「PGT」とは、育てていきたい3スキルの頭文字で、それぞれ「実践力(プラクティカルスキル)」「国際力(グローバルスキル)」「伝統力(トラディショナルスキル)」を表しています。
具体的な内容として、中学1年生は「和食の科学プロジェクト」と題し、食に関する体験活動を行います。これは、計画を立てて実行することを軸に、自主的に行動するだけでなくチームで協力しながら考察を深めていくことが目的です。
昨年は米作りで、今年は味噌作りを行いました。従来は、プロジェクトの成果を文化発表会で披露していましたが、地域の皆さまにも発信したいという思いから、このように公の場で展示発表しています。
味噌の美味しさを生徒の舌で確かめて数値化したり、糖度計のように本格的な実験器具を使用するなど、さまざまな視点から「研究」することでより深い学びが可能になると実感しています。
このように日本の文化を学んだうえで、中学2年生になると「イギリス英語研修」を行います。その際に、現地で研究成果を発表するのです。生徒たちにとって初めての海外は不安だと思いますが、2週間後には笑顔で戻ってきます。それは、試行錯誤しながら英語でコミュニケーションを取ることで大きな達成感を得られるからでしょう。そして中学3年生では、「日本について改めて考える」という流れになります。
今後、中学1年生は、文楽・人形浄瑠璃など古典芸能の鑑賞や伝統的なもの作りを体験する「日本文化プロジェクト」を行い、日本の伝統文化をさらに学んでもらいたいと思っています。いろいろな体験活動が、生徒たちの活躍の場になり、やる気を育てることにつながればと願っています。
生徒に聞いた“味噌作り”を通しての「気付き」
「和食の科学プロジェクト」で写真を活用して見事に成果発表をまとめあげた中学1年生のOさんとUさんに、体験活動での過程や気付きについてお聞きしました。
Oさん:初めて味噌を作ったので、最初はできるかどうか不安でした。発酵させたり、大豆をつぶしたり、一つひとつの作業は大変だったんですが、みんなで協力し合った甲斐があって美味しい味噌を作ることができました。食べる瞬間は喜びいっぱいでしたし、家族にも好評でした。
作業の過程で意見が対立することもありましたが、そのたび話し合って解決することができ、打ち解けられる仲になりました。おかげで、テスト勉強や課題で分からない内容があるときにも、友だちに声をかけて解決する機会が増えたと思います。
Uさん:味噌作りを通して、家庭で手作りしていた昔の人の苦労や、準備して計画を立てて、きちんと実行することの大切さが分かりました。計画することは、毎日の勉強にも役立っていると実感しています。それに、自分であれこれと試すだけでなく、チームで協力しながら物事を進めていく楽しさに気づくことができました。
私たちは写真部で活動しているので、他のチームよりも写真をたくさん使った分かりやすいプレゼンテーションが出来たのではないかと思います。
秀明大学と連携した発展学習
取材同日には、近隣地域の学校が集まって、秀明大学で企画展示を行っていました。秀明八千代の代表として参加していた生徒会の会長とサポート役の谷中先生に、大学と連携した学習についてお聞きしました。
生徒会長と先生に聞く「秀明八千代だけ」の授業
生徒会長:大学で受ける授業は、普段の授業とは違う面白さがあるので好きです。数学で数独パズルを解いたり、理科の授業で化石から進化を学んだり、教科書に書かれていないことを知ることができるのも魅力だと思います。
学年やコースによっては毎週のように大学で英語の特別授業を受けていたり、数学の面白さを味わうことができる特別授業があったりして、他の学校では体験できないことがたくさんあるんですよ。
谷中先生:中学校では、秀明大学学校教師学部の附属というメリットを活かして、大学と連携した授業を行っています。大学には、各教科のスペシャリストがいますので、アカデミックな環境と施設を利用して授業を受けることにより、生徒の知的好奇心を刺激したり、大学での学びについて考えるきっかけになっています。また、大学側からも週に1度はインターン生として大学生が来て授業の補佐をすることもあります。こういった活動は、わが校ならではの特長だと自負しています。
編集者が見たポイント
連載第1回から取り上げてきた「PGTプログラム」。校内での成果発表だけでなく、校外の社会・地域に向けて積極的に発信していることは、秀明八千代の今後を期待させる大きな試みと言えます。また、秀明大学との連携による発展的な学習などによって、生徒の学びに対するモチベーションが育てられるということが理解できました。進学結果はもちろんですが、PGTプログラムのような「生きる力の育成」がこれからの教育には必要なのではないでしょうか。