東京電機大学中学校・高等学校
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inter-edu’s eye
東京電機大学中学校・高等学校(以下、TDU)では、「VR×防災教育」をテーマに、有志の生徒たちによる学内プロジェクトが進行しています。震災をはじめとする災害の危険性をよりリアルに伝えていくために、VRという手段を選んだメンバーたちのプロジェクトを進行する上での苦労、やりがい、そして伝えたかった想いに迫ります。
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VR×防災教育プロジェクトが
スタートするまで
島崎由紀子先生は、実際に東北に出向き、震災遺構の見学やワークショップを通じて学びを得る「東北スタディツアー」を2017年から企画・開催しています。そんな島崎先生が声をかけた3名の生徒たちを中心に、TDUの「VR×防災教育」プロジェクトは進行しています。
今回はその3名のメンバーであるK.K.さん、I.S.さん、K.I.さんに詳しくお話をうかがいました。
島崎 由紀子 先生
東北スタディツアー、「VR×防災プロジェクト」の担当教諭
K.K.さん
選挙管理委員会に所属、文化祭執行部美化局長、体育祭執行部副委員長、ひまわりプロジェクトに参加
趣味:プログラミングやピアノ
I.S.さん
物理同好会、シネマ研究部に所属、アルバム委員
趣味:物を直すこと、絵を描く、写真
K.I.さん
物理同好会部長、シネマ研究部所属
趣味:プログラミング、写真
まずは、今回のプロジェクトのきっかけになった「東北スタディツアー」について教えてください。
K.K.さん
震災が発生した時、幼いながらとても怖いと思った記憶があります。でも、ただ怖いと思っているだけでは意味がない。実際に自分の目で見て学ぶことが大切だと思い、参加しました。実際に被災地を訪れることで、多くの気付きや学びがあったと思います。
「VR×防災教育をやりたい」と思ったきっかけを教えてください。
K.K.さん
自分たちの世代は東日本大震災の記憶が残っているギリギリの世代です。自分たちの後の世代にも、震災の恐ろしさや防災について伝えていきたいと思ったことがきっかけです。
K.I.さん
元々個人的にプログラミングやVR動画の制作を行っていたこともあり、その技術を防災教育に活かせるのではないか、と考えたのがきっかけです。
I.S.さん
先生からこの話を聞いた時、VR技術を使うという点が面白いと思ったのがきっかけです。ただ、防災教育をやる以上、防災について詳しくならないといけないと思い、たくさん調べました。
プロジェクトのメンバー構成について教えてください。
K.K.さん
昨年の文化祭で発表したVRを制作したのは、今いる3人のメンバーでした。今では、開発部・企画部と分かれていてそれぞれに役割があり、中学生も含めて10名程度のメンバーで運営しています。
今回のプロジェクトを進行するにあたり、電機大の高橋先生にご協力いただいたと伺っています。高橋先生にお声がけしようと思ったきっかけを教えてください。
島崎先生
実は高橋先生に最初にお声がけしたのは私なんです。このプロジェクトを進行する上でアドバイスしてくださる方を探していたところ、ちょうど高橋先生が荒川の氾濫水害シミュレーションのVR制作に関する講演をされていることを知って、アプローチしました。プロジェクトについて詳しくお話ししたところ、快くお引き受けいただけました。
実際にどんなVRを制作するのか、どのように企画が進行していったのでしょうか。
K.I.さん
制作期間がとても短く急ピッチで仕上げる必要がありました。そのため、最初は大学が制作していた動画をそのままトレースして制作し、そのあとに細かい部分を調整するという計画でした。
内容としては、他の生徒が身近に感じられるよう、学校を舞台にしようと決めました。
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さまざまな工夫を施した
VR制作
VRを制作する上で工夫した点はありますか。
K.I.さん
まず、第一に「ホラーゲームにはしたくない」という想いがありました。あくまでも、災害に対して恐怖を与えることが目的ではなく、災害について知ってもらうことが目的だったからです。あとは、映像内の細かい演出にもこだわりました。例えば、案内の文章には蛍光色を使ったり、太陽の光が入っているように見せたりするなど、細部まで気を配りました。
I.S.さん
写真に関しても後から編集で影をつけたり、CGで編集し直したりと、かなり細部の表現までこだわりましたね。
このプロジェクトを進める上で苦労した点について教えてください。
K.I.さん
なんといっても写真を撮影するのが大変でした。まずは学校を作らないといけないので、チームと協力しながら校舎中の写真を撮影しました。
I.S.さん
写真もただ撮影すればいいという訳ではなく、クオリティが均一化されていなければVRには使用できません。また、影を消したり足したりする編集もとても大変でしたね。
なるべく同じ条件下で影にならない時間に撮影を行うなど、工夫して撮影作業を進めるようにしました。
K.K.さん
システム的なエラーにも悩まされました…文化祭の準備日にシステムのアップデートがかかって上手く動作しなくなってしまった、ということもありました。
あとはPC間でファイルのやり取りをする際、WindowsとMacでは互換性が無く、ファイルに不具合が起きてしまうことも大変でした。
I.S.さん
他にもVRの具体度も慎重に考えました。というのも、アニメーションや演出によっては、実際の被災者の方の気持ちを傷つけてしまう可能性もあるからです。災害の危険性は伝えつつも見る人の気持ちに配慮する、というバランスをとるのも難しい点でした。
大学の先生からのアドバイスで印象に残っているものはありますか。
K.K.さん
本当にたくさんあります。特に電大の高橋先生には本当に多くのアドバイスを頂きました。
K.I.さん
制作を進めていくと、どうしても視点が自分たちだけのものになってしまいがちです。ですが、高橋先生はあくまでも外部の視点でアドバイスをくださるので、自分たちでは気付けない新しい考えがたくさんありました。
特に、アニメーションの具体度に関してはとても細かくアドバイスを頂けました。
I.S.さん
高橋先生は否定するのではなく、自分たちに自信をつけさせてくれるような言葉をくださりました。プロジェクトを進めていく上でいろいろな壁にぶつかっていたので、とても励みになりましたね。
武蔵野祭や学校説明会での観客の様子はいかがでしたか。
I.S.さん
実は文化祭当日にシステムエラーが発生してしまい、あまり多くの人には見てもらえませんでした。ただ、学校説明会では多くの小中学生に見てもらうことができました。
K.I.さん
特に小学生への使い方の説明はとても苦労しました。その反省点を活かして、小学生でも操作しやすいように新しく矢印を追加するなど、アップデートを行いました。
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より汎用性の高いVR制作へ!
今後の展望
制作を終えた感想を教えてください。
K.K.さん
高校生活の中で、なかなか共同で行うプロジェクトは経験ができないので、とても貴重な時間でした。他の2人には明確な役割が一貫してあったのに対して、自分の役割が分からなくなってしまうなど、プロジェクト中にもさまざまな悩みがありました。
それらを乗り越えて一つのことを達成できたのは自信になりました。
本プロジェクトはこの先も続いていくと思いますが、今後はどのようなものを制作していきたいですか。
I.S.さん
今回は見てもらう人がかなり限定的になってしまったので、次回以降は電機大に限らない汎用性の高いVRを制作していきたいと考えています。今回は、演出として破壊表現や人物は登場させなかったのですが、バランスはとりつつも演出をよりリアルに近づけて良いもの制作していきたいです。
K.I.さん
内容としても、今回取り上げた水害に限らず、漏電なども含めた網羅的な内容にしていきたいと思っています。
編集後記
実は今回のVRで「映像表現・芸術科学フォーラム2024」にて受賞しているこのメンバー。しかし、担当の島崎先生は「彼らは受賞のために頑張ったのではなく、それぞれの想いをしっかりと持って臨んだ結果、評価していただけたんです。それまでの過程の方に目を向けてほしいと思います。」とコメントされています。生徒を尊重し、信じて任せるというTDUならではの校風が感じられました。
イベント情報
TDU武蔵野祭
2024年9月21日(土)・22日(日)9:30~16:30
第2回中学校説明会
2024年10月6日(日)15:00~16:30
第2回高等学校説明会
2024年10月26日(土)14:00~15:30
第3回中学校説明会
2024年11月16日(土)14:00~15:30